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🔹 概要
ISO 1839:1980 は、茶(紅茶・緑茶・インスタントティー等)を対象とした代表的なサンプリング方法(試料抽出法)を定めた国際規格です。
製造ロットや出荷単位から、分析・検査に適した偏りのない代表試料を得るための手順を規定しています。
🔹 技術的内容(概要)
- 母集団(ロット)からの抽出単位・抽出数の決定法
- 各抽出単位からの部分試料(increment)の採取方法
- すべての部分試料を混合し、最終試料(laboratory sample)を調整
- 包装形態・ロットサイズ・製品タイプ別に手法を選定
🔹 紅茶との関係
- 品質検査や官能評価、灰分・水分等の分析の前提条件となる重要工程
- 不適切なサンプリングは、分析結果の信頼性を大きく損なう
- ISO 3720(紅茶の品質規格)やISO 3103(標準抽出法)との連携で用いられる
- 各国の紅茶輸出規格でも、このISO基準に準拠した手順が参照されることが多い
🔹 関連規格
- ISO 1572: 粉砕やふるい分けなどの試料調整方法
- ISO 3103: サンプルを用いた官能試験・抽出法
- ISO 6078: 評価用語の定義
🔍 よくある疑問への実務的解説
Q1. 「母集団(ロット)から、いくつ試料を取ればいいの?」
▶ ISO 1839では、「ロットサイズ」に応じた推奨サンプル数が定められています。
ロットサイズ(包数 or 容器数) | 部分試料(increment)の数 |
1〜5 | 全数 |
6〜50 | 最低5個 |
51〜100 | 最低10個 |
101〜300 | 最低15個 |
301〜500 | 最低20個 |
501以上 | 最低30個 |
※ あくまで最低限の数であり、品質のバラつきが懸念される場合は追加抽出が推奨されます。
Q2. 「各サンプル(increment)は、どうやって取るの?」
▶ 各包装・容器から均等に、内容物を十分に混ぜたうえで代表部分を取ることが原則です。
- 袋入り製品: 内容物を軽く振って均一化 → スプーン等で中央部分から抜き取る
- バルク容器: 上下左右の異なる箇所から少量ずつ採取 → 合わせて代表とする
- 粉末・ティーバッグ等: 中身が均質であれば少量でも可。ただし異物混入の可能性がある場合は複数部位から
この「increment(部分試料)」をロット全体から集め、混合したものが “最終試料(laboratory sample)” です。
🛠️ 最終試料の保存・使用上の注意
- 清潔な容器に入れて密封し、湿度・光・異臭の影響を避ける保管が必要
- 測定目的(灰分、水分、カフェイン、官能など)に応じて事前の粉砕処理(→ ISO 1572)が求められることもある
✅ 補足:この規格の読みどころは…
- サンプリングこそが「分析の精度を決める前哨戦」
- 通常の品質検査書に「ISO 1839に準拠したサンプリングにより」と書かれていれば、その分析値の信頼性が一段と高いということ
🧸くまのひとこと
どんなに精密な分析も、中身がバラバラの試料では意味がありません。
だからまずは「正しい一杯」を選び出すこと──それがサンプリングの本質です。紅茶の世界でも、品質の信頼はこの目に見えない一手間から生まれています。