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概要
プラウマンズ・ランチは、チーズ・ピクルス(代表的なのは Branston Pickle)・パン・リンゴを中心に、時にはハムや茹で卵を添えた冷たい軽食です。パブの定番メニューとして広く知られています。
歴史的背景
農夫の食事
名前が示す通り、起源は農業労働者の昼食。保存が利くパン、チーズ、ピクルス、果物を簡単に組み合わせただけの素朴な食事でした。
労働者階級の象徴
もともとは「安くて実用的」なランチであり、特に農村や小さな町で親しまれてきました。
マーケティングによる再定義
1960〜70年代の再ブーム
イギリスのチーズ委員会(English Country Cheese Council)などのマーケティング戦略によって「Ploughman’s Lunch」が「伝統的イギリス料理」として観光客や都市部のパブに広められました。
ガストロパブでの浸透
その結果、農夫の素朴な食事が、観光地や中〜上流階級向けのパブでも「英国らしさの象徴」として提供されるようになりました。
飲み物との関係
定番はエール
本来は昼食にエール(ビール)とともに供されるのが一般的です。
紅茶との組み合わせ
紅茶と合わせることは少ないものの、寒い季節やカフェでは温かいミルクティーと供される例もあり、チーズやピクルスとの相性は意外に良いです。
🧸くまの一言
観光客向けに「パブのランチセット」として定着したため、現代ではイギリス料理を紹介するガイドブックに必ず登場する料理の一つになっています。
1983年には『Ploughman’s Lunch』という政治風刺映画も公開され、この料理名は「庶民性・伝統・再定義」という複数の意味を持つ言葉としても使われています。
この映画はフォークランド紛争当時のイギリスを舞台に、BBCのラジオ記者が、スエズ危機について書いた自著のリサーチと、思いを寄せる上流階級の女性を手に入れるために、手段を選ばず突き進んで行く物語です。イギリス文化・社会・現代史をある程度知っていないと理解しづらい部分が多く、「いかにもイギリス映画らしい映画」といえるでしょう。くまも一度観ましたがわからないところが多かったです(今ならもう少しわかると思いますが)。
この映画は日本では公開されませんでした。現在はアメリカで Amazon Prime などを通じて視聴可能ですが、英国社会や歴史の知識がないと理解が難しいです。なので日本で上映するなら「親切な字幕(意訳+背景説明的なものを含む)」が不可欠だと思います。たとえば、「スエズ危機」を「イギリス衰退の象徴的事件」と補足しなければ大前提がわかりませんし、「上流階級の女性」といっても、具体的にどういう文脈の上流かが大切なポイントになっています。また「BBC記者の立場」が当時どういう意味を持ったかも大切な点です。こういう説明が全部字幕に入らないと、日本人には「会話劇が長い、やたら難しい映画」としか映らなかった可能性が高いと思うので、日本で公開されなかったり、今も視聴機会がないのもある意味納得です。