有機JAS認証

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目的

有機農産物および有機加工食品の定義・生産方法・表示基準を定めることで、消費者に対して信頼性のある「有機」表示を提供し、適正な流通と農業の持続性を確保することを目的としています。

起源・背景

1999年の有機表示偽装問題が直接の契機になっています。1999年、日本国内で「有機」を名乗る農産物の偽装表示が社会問題化しました。消費者の信頼を裏切る事件が相次いだことを受け、農林水産省がJAS法(日本農林規格)を改正しました。それを受けて2000年に「有機JAS制度」が施行されました。

1999年には、慣行農法による農産物を「有機」と称して販売する例が相次ぎ、「無農薬」や「自然栽培」といった表現が制度的根拠なく乱用されていました。

特に報道番組(例:NHK『クローズアップ現代』)や新聞等がこの問題を取り上げ、社会的非難が高まりました。その番組の中で語られていた
「有機と信じて買っていたのに」
「見分けがつかない」
「検査もしていない」
「表示が自由なら信頼はどうやって守るのか?」
という、消費者の悲痛な声が、怒りで震えた声が、現場で頭を抱えた人たちの思いが、制度を待ち望んでいた誰かの思いが、一気に爆発する形となり、それが農林水産省を動かし、JAS法改正を急ぐ直接的なきっかけとなりました。なので、改正もそれを受けての施行もスピーディーだったのです。そのスピード感は、1969年のチクロ(サイクラミン酸ナトリウム)使用禁止のときの迅速な行政対応をも凌ぐものでした。

この制度はEUの有機認証制度(EC 834/2007)や米国のUSDA Organic制度と同様に、「農薬・化学肥料を使用しない持続可能な農法」「遺伝子組換え技術の不使用」「記録と検証可能な履歴管理」などを基準にしています。

主な内容構成

  • 対象:有機農産物、有機加工食品、有機飼料、有機畜産物
  • 栽培条件:農薬・化学肥料を3年以上使用していない圃場/遺伝子組換え技術の不使用
  • 加工条件:有機原料の95%以上使用/同一工場での分別管理
  • 認証機関:農水省に登録された第三者認証機関による定期審査
  • 表示要件:「有機JASマーク」の付与義務/誤認防止措置

運用上の意義

  • 消費者にとって「本物のオーガニック」を識別する唯一の制度的根拠
  • 生産者にとっては輸出や高付加価値化のための信頼基盤
  • 海外制度との整合(EU・米国との相互承認協定)により、国際取引にも対応

備考

さらに、有機JASはEUの有機認証(EC Regulation 834/2007)および米国USDA Organicとの間で相互承認協定が結ばれており、一定の条件を満たせば、相互に認証の互換性が認められています。これにより、日本の生産者が海外市場に「有機」として参入する道が開かれていると同時に、輸入品に対しても信頼性のある審査が求められるようになっています。

また、「有機(Organic)」と「自然栽培(Natural)」はしばしば混同されますが、有機は明確な基準と認証制度に基づいた農法・加工・表示管理を必要とするのに対し、「自然」は制度上の定義が存在せず、消費者にとっては判断の難しい表示です。信頼できる「自然栽培」の場合でも、有機JASと同等の審査・認証が行われていなければ、表示の法的根拠や国際的信用に違いが生じます。これらの違いは、食品表示の正確性と消費者保護の観点からも重要な論点です。

紅茶やハーブティーにおいても「有機JAS認証」取得製品は増加しており、国内外のオーガニック市場での信頼形成に寄与しています。近年では加工茶葉の認証や輸出時のラベル要件が注目されています。

認証ロゴは下のマークです。

有機JAS認証
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