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英国式おいしいミルクティーの淹れ方

分類:
  • 🔬紅茶と科学

ミルクティーとは

Tea with milk

Tea with milk (ティーウィズミルク)は1870年ころからイギリスではやった紅茶と牛乳を混ぜたミルクティーのことです。つまり、ミルクティーとは「紅茶と牛乳の混ぜ物」です。こう書くとおいしくなさそうですが、一番正確な書き方としてはこうなります。では何故冒頭からこういう書き出しになるのか、続きを読んでください。


MIFとMIA

イギリスではこの紅茶とミルクを混ぜる方法で長年議論されてきました。つまりカップに先にミルクを入れて、そこに紅茶を注いでいくというmilk in first (MIF)とその逆で、先に紅茶をカップに注いで、後からミルクを注ぐというmilk in after (MIA)のどちらが正しいミルクティーの作り方か、という論争が長年続いていたのです。

実はこの議論があるので「ミルクティーとは紅茶と牛乳の混ぜ物」という言い方をしたのです。どちらにどちらを混ぜるか、という問題が解決しなければ「紅茶にミルクを入れたもの」とも「ミルクに紅茶を注いだもの」とも言えないからです。各々の主張をまとめると次のようになります。


MIF(ミルクを先に入れる)派の主張

1.紅茶を先に入れるとカップが割れる可能性がある

19世紀の頃のカップは温度変化に弱いものが今より多く、いきなり熱い紅茶を入れるとカップが割れてしまうということが時々あったそうです。そこで、先に冷たい(室温の)ミルクを入れておいて、そこに紅茶を注ぐようにすればカップがいきなり熱くなる心配がないのでカップが割れないですむ、ということの主張です。もちろん、今でもカップの心配をしている人はいるでしょう。

2.カップに茶渋がつきにくい

茶渋はお茶に含まれるポリフェノールが酸化したものだと説明している本などを良く見かけます。そうした本などによるとポリフェノールの一つであるカテキン類が酸化してタンニンができて、このタンニンが茶渋の正体だという話です。しかし、これは間違っていて、茶渋の主成分は紅茶に含まれるシュウ酸カルシウムであることが今はわかっています。1

ミルクが先に入っているとこの茶渋の主成分であるシュウ酸カルシウムがミルクの分子とくっつくので、その結果茶渋がカップにつきにくくなります。もちろん、この主張をする人たちがこのような理屈を理解して主張しているわけではなくて「経験上茶渋がつきにくい」ということからこうした主張をしていると考えるのが普通でしょう。

3.ミルクを先に入れることにより紅茶とミルクがよく混ざる

これは実際にやってみるとわかることですが、ミルクを先に入れてから紅茶を注ぐとスプーンで混ぜなくてもミルクと紅茶が良く混ざります。


MIA (ミルクを後から入れる)派の主張

1.紅茶を先にカップに入れて、後からミルクを入れることで好みの味に調整ができる

2.ストレートティとミルクティと両方楽しむことができる

3.安いティーカップを使わなければ良い

熱い紅茶を入れて割れるのは造りの良くない安いカップを使っているからで、カップの問題に過ぎない、という主張です。

どちらも「それらしく」聞こえます。そしてなんと150年もこの論争は続いているのです。


George Orwell

イギリスの有名な作家であるGeorge Orwell (ジョージ・オーウェル /1903 – 1950 )は有名なMIA派です。

George Orwell (1903 – 1950)

彼はエッセイ集『A Nice Cup of Tea (一杯のおいしい紅茶)』(1946年)の中で、「紅茶の正しい淹れ方」を11項目に分けて解説しています。その中で

「紅茶をカップに入れた後でミルクを注げば、好みの分量や味を調整できる」

と主張しています。このエッセイ集は中公文庫で読むことができます。ちなみにくまは文庫になる前の単行本 (朔北社刊)で持っています。

『一杯のおいしい紅茶』

How to make a Perfect Cup of Tea

表題を訳すと『一杯の完璧な紅茶の淹れ方』となります。これはイギリスのThe Royal Society of Chemistry (王立化学会、略称:RSC)によって2003年6月24日が正式なプレスリリースとして発表した文書のタイトルです。

そうです。ついにこの問題に決着をつけるべく、RSCが化学的根拠を持ってどちらであるべきかの決定的な文書を発表したのです。日本でも「イギリスにおいて長年議論されてきた紅茶が先か、ミルクが先かという問題に決着がついた」というようなニュースが流れていました。

それによると、

「カップに紅茶を先に入れて、後からミルクを注ぐと、熱でタンパク質が変質してしまい美味しくないミルクティができてしまう。なので、ミルクをカップに先に注いでおき、後から紅茶を注ぐのが正しい」

となっています。MIF派の勝ち、というわけですね。実際これを根拠に「一般的な英国式ミルクティーの入れ方の手順」としてミルクを先に入れるのが「英国式おいしい紅茶」だと説明しているサイトもたくさんあります。


2003年6月24日

さて、実はここで一番大切なことを説明しましょう。このニュースリリースでもっとも大事な点は「2003年6月24日」に発表されたこと、なのです。

そしてGeorge Orwellの生年月日は「1903年6月25日」なのです。お気づきでしょうか?この『How to make a Perfect Cup of Tea』はGeorge Orwell生誕100周年を記念して発表されたのです。しかもRSCはご丁寧に2003年1月2日に

「George Orwell生誕100周年において、その功績を讃えるために王立化学会は、完璧な紅茶を淹れる方法の決定版を制定する。」

というニュースリリースを出しています。

イギリス人やイギリス文化をある程度知っている方ならおそらく、これで気がつくと思います。そうです。これはRSCのジョークなのです。原文を読めば気がつきますが、化学会が出している文書なのに「科学的根拠が一切書かれていない」のです。

つまり「MIFか?MIAか?」という議論にはまったく決着がついていないのです。


くまも悪のり

ここで気がついた方もいらっしゃるかもしれません。今回の『 紅茶と科学 』は実は科学でも何でもなく、イギリス人のジョークに付き合ったものだったのです。

だから本当は、もし表題を付け直すとすれば
『 紅茶と文化 ブリティッシュ・ジョーク』
となるわけです。

ですからこれを読んでくださった方は今後「ミルクを先に入れるのがイギリス式」などというサイトや本に出会ったら「ここにもだまされてる人がいる!」と笑うことができます。結構多いですよ。

一度「英国式 正しいミルクティー」というワードでググってみてください。いっぱい出てきますから(笑い)

ちなみに原文のPDFはこちら(新しいタブで開きます)やこちら(新しいタブで開きます)でダウンロードできます。一応再配布禁止となっていたはずなので、いつまでダウンロードできるかわかりませんが、何年もずっと放置されているのでたぶん大丈夫ではないかと思います。

またくまの解説付き全文対訳は下の🔗リンクからどうぞ。


実際はどうなの?

2021年2月9日~12日にかけてイギリス人2000人を対象にしたアンケートでは82.9%が「ミルクを最後に入れている」と答えています。George Orwellと同じMIA派が圧倒的のようです。


日本のミルクティー事情

ちなみにくまは「ミルクティーが嫌い」です。もっと言えば牛乳そのものが大嫌いなのです。しかし、これはくまが悪いわけではないのです。もっと言えば「くまの舌が素晴らしいから」なのです。

日本の牛乳

スーパーなどで見かける牛乳の多くは120~150℃で1秒以上5秒以内で加熱殺菌したUHT法(Ultra high temperature heating method / 超高温瞬間殺菌法)の牛乳です。市販されている牛乳の約90%がこれです。この殺菌方法だと、加熱により牛乳タンパク質に含まれる含硫アミノ酸が分解されると、硫化水素やジメチルサルファイドといった硫黄化合物ができてしまい、これらの物質が加熱臭をもたらします。つまり、腐った卵のような臭いがするようになってしまうのです。

1.牛乳には本来ない腐った卵のような匂いが作られてそれが「臭い」のです。

2.加熱することで成分が焦げ付き、ネバつきが出てしまいます。

これがくまには「おいしくない」のです。

ちなみにイギリスなどで売られている牛乳の多くは低温殺菌なので、臭い匂いもないし、ネバつきもないのです。実際に日本で低温殺菌をしている酪農家から牛乳を分けてもらって味見をしたり、ミルクティーを作ってみたりしたことがありますが、一般的に売られているUHT法で殺菌した牛乳のものとはまったく違って、さっぱりとしておいしいものでした。

ただ、低温殺菌の牛乳は手に入れるのが難しいことと、価格が高いことが日本ではネックになると思います。


まとめ

おいしいミルクティーを淹れるには、結論として

「淹れ方よりもミルクにこだわる」

と、いうことになります。ミルクが先でも、ミルクが後でもミルクティーに代わりはないのでした。


🔗リンク

英国王立化学会による『完璧な一杯の紅茶の淹れ方』(1)
英国王立化学会による『完璧な一杯の紅茶の淹れ方』(2)

註

  1. 『紅茶による茶渋の化学組成と構造に関する研究』山田 郁, 阿部 徹弥, 谷沢 善明(2005年)

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