紅茶の道具(2) ティーカップ

Minton Tea Set

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ティーカップの違いが紅茶の味や香りに大きな影響を与えることをご存じでしょうか。今回はティーポットと並んで紅茶を楽しむのに絶対に必要なカップについて説明していきます。

1.ティーカップの形

コーヒーカップとの違い

ティーカップ

ティーカップは薄手で口径が広がっている熱を逃がす形状のものが基本です。理由は紅茶の抽出にもっとも適した温度が98℃と高温なので出来上がった紅茶の温度も非常に暑いものになります。熱い紅茶を飲みやすい温度まで冷めやすくするためにも広口形状 (9~10㎝くらいが多い)で浅めのカップが向いているとされています。

また広口形状だと紅茶の香りがたちやすく、水色も楽しみやすいという利点があります。内側が白いのも基本的です。ティーカップの内側にも装飾がされている場合がしばしばあります。これは澄んだ紅茶の表面にカップのデザインが映るのを楽しむためなのです。

また、製品にもよりますが、ティーカップは容量が大体180~200㏄ぐらいのものが多いです。紅茶がまだ貴重だった古い時代にはティーカップも今よりもっと小振りだったといわれています。ところが、紅茶が一般大衆でも手が届くようになり、たくさん消費するような時代になるとカップも少しずつ大きくなっていって、今のような容量になったといわれています。

ティーカップ
ティーカップ

コーヒーカップ

それに対して、一般的にコーヒーカップは一般的に厚手で飲み口が狭い (8㎝くらいが多い)熱を逃さない形状のものが多いです。コーヒーは冷めすぎると香りが弱くなるので、保温性を高める為に厚みを持たせたものが多いのです。飲み口が狭い状態で容量を増やすため、コーヒーカップはティーカップより背が高いことが多いです。またコーヒーカップは内側が白くないものの方が多いです。また容量も150㏄ぐらいのものが多く、それはコーヒーが一回でたくさん飲むより、小振りなカップで1日の内に何度も飲むことが多いからだといわれています。

コーヒーカップ
コーヒーカップ

見分け方

ティーカップのようなコーヒーカップや、コーヒーカップのようなティーカップもメーカーによってあります。なので、コーヒーカップかティーカップかはその口径と容量で判断してください。この基準で判断するのが一番間違いないのです。

その他

飲み口がそこそこ広がっていて、そこそこ厚手というコーヒーカップとティーカップの間をとったような形状のカップもあります。これは紅茶、コーヒー兼用のカップです。ティーカップ、コーヒーカップよりも、これを持っている人が多いのではないかと思います。

2.ティーカップの色々

さて、すごく乱暴に言ってしまえば、広口浅めがティーカップの特徴ではありますが、実際にはいくつかの代表的な形があります。その違いについて見てゆきましょう。ティーカップの形については共通した名称がないので、今回は一応、WEDGWOOD (ウェッジウッド)の呼び名を参考にして解説することにします。

Peony Shape (ピオニーシェイプ)

芍薬・朝顔型とも呼ばれる形です。紅茶の水色と繊細な香味を楽しめるように開発された、紅茶専用のカップです。開口部は約9〜10cmのものが多いです。飲み口が口に水平に当たるようなデザインになっているので、ティーカップの厚みが感じられにくく、味や香りを鮮明に感じることができます。あと、この形が他のどの形よりも冷めるのが早いです。

水色が一番鮮やかに見えるのがこのカップです。また、紅茶のまろやかさや複雑な風味や味をしっかり味わいたい時にはこの形のカップを選ぶべきです。

Peony Shape
Peony Shape

Leigh Shape (リーシェイプ)

紅茶・コーヒーの兼用カップとして発売され、どんな飲み物にも対応しやすい、汎用性の高いカップです。口径は8㎝くらいのものが多く狭めで、飲み口はストレートです。

水色はPeony Shapeより濃く見えます。香りは口元に運ぶとダイレクトに感じます。渋みまでしっかり味わいたい時にはこのカップが良いでしょう。

Leigh Shape
Leigh Shape

Victoria Shape (ヴィクトリアシェイプ)

Victoria Shapeという呼び名はWEDGWOODの呼び名で、他では、Montrose Shape (モントローズシェイプ)とも呼ばれたりする、チューリップのような形のカップです。背が高く、真ん中がくびれたような形で、口径はやや広めです。縁は外側に広がっているのが特徴的です。これも紅茶・コーヒーの兼用カップです。

水色は更に濃い色になります。香りはカップ内に少しこもるような感じで広がります。Peony ShapeとLeigh Shapeの良いところを合わせたようなカップです。バランスの良い味と香りを求めるならこのカップが最適でしょう。

画像
Victoria Shape

mug (マグカップ)

みなさんおなじみのマグカップです。縦に長いので冷めにくく、保温性に優れています。コーヒーやミルクティー、その他さまざまな飲み物に使える万能型のカップです。しかし「万能」というのは何にでも使えるという意味の反面、何に対してもどこか使えない、という事でもあります。例えば、これで紅茶を飲むとなかなか冷めないので淹れたての紅茶は中々の見にくいですし、香りも少しこもったようになります。

水色はかなり濃くなります。下手をするとコーヒー特別がつかないレベルになることすらあります。味の濃い種類の紅茶やミルクをたっぷり入れたミルクティーなどに向いていると思います。

マグカップ
マグカップ

3.材質について

陶器

厚手のものが多く、保温性に優れています。ミルクティーやチャイなどに向いている材質です。

白磁器 (磁器の総称)

洋食器によく使われる白磁器は細かい政経が可能で、薄手に作ることができるので紅茶の味わいや風味を存分に引き出してくれるのでもっとも紅茶に向いている材質だといえます。薄くて、軽く、耐久性にも優れ、保温性も陶器ほどではないですがそれなりに優れている上に美しい白い発色があります。ですから、紅茶の水色を存分に引き立ててくれるのです。

特に牛の骨灰 (骨からにかわ・脂質を取り除いた後、高温で焼くことで作られる、白い粉末状の灰のことです。主成分はリン酸カルシウムです。なので、現代では化学的に合成されたリン酸カルシウムを使う方がポピュラーです)を混ぜこんだボーンチャイナはなめらかな乳白色で軽い高級品になります。2015年に無くなってしまいましたが、ヴィクトリア女王が「世界一美しいボーンチャイナ」と呼んだMINTONや現存するメーカーとしてはドイツのMEISSEN (マイセン)やイギリスのWEDGWOODなどが有名です。

耐熱ガラス

薄手で軽い耐熱ガラスのカップは、香りや味をダイレクトに感じやすく、透明なので紅茶の水色をもっとも楽しむことができます。ただ、熱伝導率が高いので、冷めるのも早いです。ただし、陶器や白磁器と比べて安いです。

結局どれが良いのか?

以上色々考察してきましたが、結論としては

・紅茶の味、香り、風味をしっかり楽しむには薄手のPeony Shapeが良い
・紅茶の水色を楽しむなら、白もしくは透明で浅めのものが良い

と、言うことになります。そうなると、白磁器か耐熱ガラスのPeony Shapeに絞られてきます。そして、更にこの2つを比較した時、白磁器の方が保温力があります。

以上から白磁器 (特に耐久性にも優れたボーンチャイナ)のPeony Shapeが理想的、ということになります。

もっともこれはあくまでも紅茶の味、風味などを存分に引き出して楽しむ、という為のものであって、例えばティーバッグで濃いめに出してミルクをたっぷり入れたミルクティーなどなら、こうしたティーカップでもマグカップでも大差ないと思います。ならば使い勝手の良いマグカップの方が、そうした使い方なら適している、ということになります。

ですから、今まで見てきた各々の特徴を頭に入れて、自分のその時の目的に合ったカップを選ぶというのが正解なのだと思いますし、何より楽しむことができると思います。