くまが日本風にこだわるわけ

目次

紅茶の飲み方あるいは淹れ方

紅茶と一言で言っても、色々な淹れ方があります。簡単にその辺を眺めていくことから始めたいと思います。

紅茶はそもそも淹れ方にこだわるべきか?

これはそもそも論になりますが、結論から言えば紅茶という飲み物はいくつかの点を抑えてあれば、かなり適当に淹れてもおいしいものである、といことです。日本人が日本で紅茶を淹れる場合
1.沸かしたてのお湯を使うこと
2.ポットなどを温めておくこと
の2点を守っていれば、あとはかなり適当に淹れても美味しく出来上がるのがありがたい所です。このルールは世界中の紅茶関係者が経験的に認めることであって、まず間違いはないと思います。

所違えばルールも変わる

しかし、前述の2つのルールが世界中に認められていると書いてすぐに否定するのは恐縮なのですが、これだって絶対ではないのです。例えば、イギリスより早くから紅茶文化を発達させていたロシアでは、サモワールという紅茶のためのお湯を沸かす装置が発明されています。サモワールという名前はロシア語の「サミ(自分で)」と「ワリーチ(沸かす)」にちなむとされています。簡単に言えば紅茶用のロシア独自の、炭を用いる卓上湯わかし器です。卓上といっても大きなものだと据えつけ式といえるほどの大きなものまであります。 銅・黄銅・銀製などで七宝を施したものもあります。中央に木炭などをたくパイプが通り、その周囲が水槽となっていて、外側に湯を出す蛇口があり、そこからお湯が出る仕組みのものです。今は当たり前ですが電熱式が普通のようです。詳しくはWikipediaで確認してみてください。

つまりロシアでは「沸かしたてのお湯を使っていない」ということがここからはっきりします。サモワールで沸かしっぱなしにしたお湯で濃い紅茶を淹れ、それをお湯で好みの濃さに薄めて飲む、というのがロシア式なのです。ロシアンティーというとジャムと一緒に出てくるイメージがありますが、これは一部の地域のものが現代のイメージとして広がっただけで(この辺の歴史も面白いのでいずれ取り上げたいと思います)本質的には「ロシアンティーとはサモワールによるもの」という方が正しい認識だと思います。

ちなみに沸騰させすぎたお湯の場合、沸かしたてのお湯で淹れる場合よりも長い時間かけて抽出すればそれなりの紅茶が淹れられます。このように現在の紅茶関係者のほぼ全員が認める「沸かしたてのお湯を使う」というルールも所変わればルールでも何でもなくなるのです。

サモワール / by Islander wikicommonsより
サモワール / by Islander wikicommonsより

紅茶を薄めることはできるけれど

「濃い紅茶を薄めることはできるけれど、薄い紅茶を濃くはできない」という有名な(?)言葉があります。これは当たり前のことなのですが、ロシア式のように濃い紅茶にお湯を入れて薄めて自分の好みの濃さにすることはできますが、薄い紅茶を濃くすることはどうやってもできません。

イギリスのティーハウスにはお湯を出す給湯器があります。日本人は「これは2杯目を淹れるためだ」などと誤解する人もいるようですが、もちろん違います。これは濃い紅茶を薄めるためのお湯なのです。

このように紅茶というのは濃いめに出すというのが淹れ方としては多いのです。特にイギリスでは紅茶といえば95%がミルクティーなので濃く出す必要があるので、ストレートで飲みたい人には濃すぎる場合が多いのです。

ティーカップとミルクティー
ティーカップとミルクティー

日本風の紅茶

正しい紅茶の淹れ方

これはもう当たり前のことが言えると思います。

「紅茶の正しい淹れ方は、あなたの好きな淹れ方です。誰がなんといおうとそれがベストです」(by Gervas Huxley)

これにつきます。これはGervas Huxley (ガーバス・ハックスレィ)というイギリスの植民地時代のセイロンの宣伝局に長く努めた人で、国際紅茶市場拡大局の副会長も務めていた人がその著書『Talking of Tea』(1956年)の中で明言していますが、くまもこれには大賛成です。

日本式の勧め

イギリスで紅茶といえば95%がミルクティーと言う話はすでに書きました。ロシアではジャムが一緒とか、国によって飲み方が色々あります。これについても何時かしっかり書いてみたいと思います。

では「日本式はあるの?」という素朴な疑問がわいてきませんか?だって茶道を生み出した国であり民族ですよ。紅茶だって独自性があるはずです。そう思って調べてみました。

そうしたらありました。日本式の紅茶、それは

「ストレートティーで味わう」

でした。大抵の国では紅茶に何かを入れます。ストレートティーで紅茶本来の味や風味を楽しむというのはかなり日本独自のようでした。なぜなら、イギリスやフランスなどでは水が硬水なので、ストレートでのんでもあまりおいしくないのです。(水の硬度と紅茶については紅茶と科学『紅茶と水』をぜひ読んでみてください。)

くまなんかは典型的なJapanese styleです。やはり、水がお茶に向いている国に生まれ育った日本人は、茶道で抹茶をそのままで味わい尽くすように民族的にお茶そのものを楽しむ傾向があるみたいですね。どうでもいい話ですがくまはお茶も点てます。もちろん、ミルクティーやレモンティー、ロシアンティーも美味しいです。でも、紅茶の飲み方に「日本式」がちゃんとあったことは何か嬉しいと思いませんか?くまは嬉しいです。

茶道道具とお茶
茶道道具とお茶