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How to make a Perfect Cup of Tea 続き
水の硬度
• Avoid “hard” water as the minerals it contains gives rise to unpleasant tea scum. If you live in hard water area use softened (filtered) water. For the same reason do not use bottled mineral water.
「硬水はミネラル分が多く含まれているため、不快なティースカムができてしまうので避けてください。水道水が硬水の地域にお住まいの場合は、軟水(ろ過水)を使用してください。同じ理由で、ボトル入りのミネラルウォーターも使用しないでください。」
🧸硬水で紅茶を淹れると油膜のような「スカム」と呼ばれるものが浮いてきます。これは硬水の水道水に含まれているカルシウムが紅茶の成分と反応してできるものです。日本の水道水は一部を除けば軟水なので、安心して紅茶を淹れることができます。”tea scum”を「茶渋」と訳しているものも多く見受けられますが、いわゆる日本人がイメージする茶渋とはまったく別物です。

🧸自分の家の水道水が硬水か軟水かを知らない人はぜひ『 紅茶と水』を読んでください。ここに自分の家の水が軟水かどうかを調べる方法なども載せてあります。ちなみにくまの住んでいる秋田市は超軟水で紅茶やコーヒーに最適なので嬉しいです❣️
• To achieve perfection, we advocate using a tea-pot with loose tea. The pot should be made of ceramic as metal pots can sometimes taint the flavour of the tea. Tea bags are a handy convenience, but they do slow down infusion, and favour infusion of the slower infusing but less desirable higher molecular weight tannins (see below).
「完璧な味にするためには、リーフティーをティーポットで淹れることをお勧めします。金属製のポットはお茶の風味を損なうことがあるため、陶器製をお勧めします。ティーバッグは便利ですが、抽出速度が遅くなり、あまり好ましくない高分子タンニン(下記参照)の抽出を促進してしまいます。」
🧸やはり手間はかかりますが、ティーバッグよりリーフティーで淹れた方がよりおいしくはなります。ただ、最近のティーバッグは以前と比べて良くできているので、淹れ方さえ間違えなければかなりおいしく抽出することができます。ただし、よく蒸らさないと味が出ないのと、蒸らしすぎると高分子タンニンが出てきてしまい、嫌な渋みが出てしまうのでティーバッグを取るタイミングに注意が必要です。
もっとも、ティーバッグにはマイクロプラスチックやナノプラスチックの問題があるので、くまはお勧めしません。マイクロプラスチックやナノプラスチックについてはこの記事などを読んでみてください。
金属製のポット、特に鉄やステンレスのものは紅茶の成分であるタンニンが反応してしまい味と香りを落してしまいます。18世紀、19世紀のヨーロッパの王族や貴族が愛用していた銀のポットは味や香りを落しません。くまもとても欲しいと思っていますが、とても高いので手が出ません。

• It is not necessary to use a lot of tea. 2 grammes (a teaspoon) per cup is normally sufficient.
「たくさんの茶葉を使う必要はありません。通常はカップ1杯あたり2グラム(小さじ1杯)で十分です。」
🧸2グラムで充分かというと、くまはかなり悩みます。くまは大体3グラムくらい使っているからです。この辺は色々試して、自分の好みの量を探していくしかないような気がします。ミルクティー、特にミルクをたっぷり入れたい場合などは3グラムよりも多く使って、ストレートで飲む場合の倍の濃さで作るとおいしいと思います。この辺はぜひご自分で試してみてください。
また、こうした自分の好みに合わせるということがティーバッグではできないので、せっかくなら時間のあるときくらいはリーフティーでゆったりと、手間ひまを楽しみながら、としていただきたいな、と思うのです。
紅茶の抽出
•Tea infusion needs to be performed at as high a temperature as is possible, and this needs a properly pre-warmed pot. Swilling a small amount of hot water in the pot for a couple of seconds is not enough. Fill at least a quarter of the pot with boiling water and keep it there for half a minute. Then, in quick succession, drain the water from the pot, add the tea and then fill with the other boiled water from the kettle. A better alternative is to pre-warm the pot using a microwave oven! Add 1/4 cup of water to the pot and microwave on full power for a minute. Then drain, and add tea and boiling water from the kettle. Aim to synchronise events such that the kettle water is added immediately after it has boiled, and just after you have drained the water. Taking “the pot to the kettle” will marginally help keep the temperature high.
「紅茶の抽出はできる限り高温で行う必要があり、そのためには適切に予熱したポットが必要です。少量の熱湯をポットに入れて数秒間揺するだけでは十分ではありません。少なくともポットの1/4まで熱湯を入れて、30秒そのままにしておきます。次に、素早くポットのお湯を捨て、茶葉を入れ、最後にやかんの残りの熱湯を注ぎます。
より良い方法は、電子レンジを使用してポットを予熱することです。ポットに 1/4 カップの水を入れ、電子レンジで 1分間最大出力で加熱します。次に水を捨て、やかんのお湯と茶葉を入れます。やかんのお湯は沸騰直後、ポットのお湯を捨てた直後に加えるように同期させることを目指します。”ポットをやかんの方に移動させる”ことは、お湯の温度を高く保つのにわずかながら役立ちます。」
🧸紅茶をおいしく淹れるコツが沸かしたての熱湯を茶葉に注ぐこと、であることは言うまでもありません。そして、お湯が冷えてしまわないようにポットも予め温めておくことが大切です。
電子レンジでポットを温めるという方法をくまはまだ試したことがないのですが、理屈としてはありだと思います。
尚、アンドリュー博士も「ポットをヤカンに近づけるべき」だということを指摘しています。

抽出時間
•Brew for typically 3 to 4 minutes (depending on the tea). It is a myth that brewing for longer times causes more caffeine to infuse into the tea. Caffeine is a relatively quick infuser and caffeine infusion is largely complete within the first minute. More time is, however, needed for the polyphenolic compounds (tannins) to come out which give the tea is colour and some of its flavour. Infusing for longer times than this, however, introduces high molecular weight tannins which leave a bad aftertaste.
「通常、3~4分(お茶の種類によって異なります)抽出してください。長く抽出するとカフェイン量が増えるというのは誤解です。カフェインは比較的早く抽出されるため、最初の1分でほぼ出尽くします。しかし、お茶の色と風味の一部となるポリフェノール化合物(タンニン)が抽出されるには、さらに時間がかかります。だからといって、必要以上に長く抽出すると、嫌な渋みを作る高分子量のタンニンが抽出されてしまい、後味が悪くなります。」
🧸基本的には3分以上5分未満、とくまはしています。もちろん、CTCのような細かい茶葉の場合はもう少し短い時間にします。それでも3分は味と香りを出すのに必要だと思っています。アンドリュー博士が指摘する高分子量のタンニンは5分以上かけなければ、大体でないのではないかと思います。
•Use your favourite cup. Never use polystyrene cups, which result in the tea being too hot to drink straightaway (and will also degrade the milk, see below). Large mugs retain their heat much longer than small cups in addition to providing more tea!
「お気に入りのカップを使いましょう。ポリスチレンのカップは決して、絶対に使用しないでください。ポリスチレン製のカップは、紅茶の温度を高く保ちすぎてしまい、すぐに飲めません(また、牛乳を熱変性させてしまいます。牛乳の変性については後述します)。大きなマグカップは小さなカップよりも保温性が高く、紅茶の量もたっぷり楽しめます!」
🧸アンドリュー博士はポリスチレンのカップによほど酷い目にあったことがあるのではないかと思うほど、ポリスチレンのカップを強く否定しています。ポリスチレンのカップといえばカップヌードルなどの容器が代表的なものです。一度しか使わずに廃棄するのを前提にしているものが多いです。
ポリスチレンの容器は保温性が高く、冷めにくいものになります。なので牛乳の熱変成が起こりやすいという意味でも否定的なのでしょう。
ちなみに日本で普通に売っている牛乳は最初から熱変成でダメになっている牛乳なのでポリスチレンのカップで飲んだところで何も変わりません。イギリスでは牛乳は日本と違い低温殺菌が普通なのでアンドリュー博士は「牛乳がまずくなる」と主張しているわけです。日本ではどうせまずい牛乳しかほぼ手に入らないので、アンドリュー博士のこの忠告は無視してもかまわないかと思います。
牛乳の質の問題
•Add fresh chilled milk, not UHT milk which contains denatured proteins and tastes bad. Milk should be added before the tea, because denaturation (degradation) of milk proteins is liable to occur if milk encounters temperatures above 75°C. If milk is poured into hot tea, individual drops separate from the bulk of the milk and come into contact with the high temperatures of the tea for enough time for significant denaturation to occur. This is much less likely to happen if hot water is added to the milk. Once full mixing has occurred the temperature should be below 75°C, unless polystyrene cups were used.
「変性タンパク質を含み、味が悪くなるUHT牛乳ではなく、冷えた新鮮な牛乳を加えてください。
牛乳は紅茶に入れる前に加える必要があります。75℃以上の温度に牛乳を注ぐと、牛乳の粒が分離し、紅茶の高温と長時間接触することで、著しく変性してしまうからです。
しかし、熱い紅茶を後から牛乳に注げば、このような現象は起こりにくくなります。完全に混ざったら、ポリスチレンカップを使用しない限り、温度は75℃以下にしてください。」
🧸UHT牛乳というのはUltra-Heat-Treated牛乳(ウルトラ高温殺菌牛乳)のことで、120~150℃で1~3秒間加熱して殺菌した牛乳のことです。この殺菌法の場合、牛乳はすべて熱で変質しているので、硫化イオウができてしまい、卵の腐ったような匂いを作り出します。また牛乳には本来あり得ない粘り気が出てしまい風味と味と喉越しを悪くします。このUHT牛乳が日本国内で流通している牛乳の95%を占めています。なので、普通に手に入る牛乳はすべて「すでに熱変成してしまってまずくなっている」と思って大体間違いありません。
なので、今さら温度を気にしてもまったく無意味なわけです。また、この殺菌法ではタンパク質が熱変性を起し消化吸収が悪くなり、ビタミン、ミネラルも壊れてしまいます。特に日本人には乳糖不耐症が多いので、せっかく牛乳を摂っても栄養にならないケースが多くなります。学校給食で強制的に牛乳を飲ませている自治体が圧倒的多数を占めていますが、本当に良いものなのかくまは本質的な疑問を持っています。
くまがミルクティーを毛嫌いするのも、この熱変成した牛乳の臭みとネバネバ感が大嫌いなのと、乳糖不耐症があるからなのですが、まぁ、これは「科学的データを元にした個人的な意見」です。
ただ日本の牛乳の95%がアンドリュー博士が指摘するような「ミルクティーにしておいしい牛乳」ではないのは間違いありません。それでもおいしいという方もいらっしゃいますが、本当なら「もっとおいしいミルクティー」が飲めているはずなのです。
それにそもそも論なのですが
「冷蔵の必要がなく、品質保持期限が最大6か月の牛乳」
って不自然だと思いませんか?くまにはとても「人間の食べるもの」とは思えません。資本主義的には素晴らしい商品だと思いますけどね。

仕上げ
•Lastly add sugar to taste. Both milk and sugar are optional, but they both act to moderate the natural astringency of tea.
「最後に、お好みで砂糖を加えます。牛乳と砂糖はどちらもお好みで加えれば良いものですが、紅茶の自然な渋みを和らげる効果があります。」
🧸紅茶の渋みが苦手だという人は思ったよりいらっしゃいます。そうした人にはミルクティーにしたり、砂糖を加えることで渋みを和らげることができます。お客様の好みがわからないで紅茶をお出しするときは砂糖とミルクを用意しておいてあげると良いでしょう。そう考えるとミルクを先に入れるのもおかしいですよね。
•The perfect temperature to drink tea is between 60°C and 65°C, which should be obtained within a minute if the above guide is used. Higher temperatures than this require the drinker to engage in excessive air-cooling of the tea whilst drinking – or “slurping” in everyday parlance. Leaving a teaspoon in the tea for a few seconds is a very effective cooling alternative.
「紅茶を飲むのに最適な温度は60~65℃で、上記の手順に従えば1分以内にこの温度に達するはずです。これより高い温度では、飲む際に紅茶を空気で冷やす動作、つまり「ズルズル」と音を立ててすするという動作が必要になってしまいます。ティースプーンを数秒間お茶の中に入れておくのも、非常に効果的な冷却方法です。」
🧸この1分以内に最適な温度に近づくように作られているのが磁器のティーカップです。分厚い陶器のマグカップではなかなか冷めません。ただ、仕事をしながら飲んだり、勉強しながら飲んだり、というような飲み方ならば「冷めるまでにこれを終わらせよう」などという飲み方もできるので一概に否定するものではありません。
ただ、仕事や勉強が終わって、ゆったりとティータイムを楽しむなら、やはり磁器のティーカップを手に入れるべきだとくまは思っています。幸せが増えるからです。
Ends
「おしまい」
まとめ
以上で『完璧な一杯の紅茶の淹れ方』を全部訳して、解説を加えました。
この文書では『完璧な一杯のミルクティーの淹れ方』を解説しているわけですが、日本では牛乳が良くないので、せっかく水が良くてもあまり意味がなかったですね。
British joke (ブリティッシュ・ジョーク)
あと、これが大前提として「British joke」であることはわかっていただけたでしょうか。イギリス人のジョークというのは日本人の想像のはるか上を行くものです。そもそも王立化学会の発表なのに「化学的根拠が一切出ていない」というところで気がついてほしいところなのです。
イギリス人のジョークは「冗談でした」とか「どっきりでした」とか「エイプリルフールでした」などと種明かしをするような野暮なことはしません。なので、ジョークを受け止める側にも素養が必要なのです。でも、英語が出来るだけでイギリス人と一緒に笑うことはできません。事実、アメリカ人が聞いても笑えないBritish jokeは結構あるそうです。
解説を読んでいただいてわかると思いますが、まともなことを一杯書いているのです。その中にジョークが仕込まれているわけです。
イギリス人の議論好き
イギリス人というのはともかく議論が好きです。もっと言えば「議論のための議論」を楽しむ国民性があるのです。だから、紅茶が先か、ミルクが先かという議論も、たんに議論を楽しんでいるだけなのです。実際には80%以上のイギリス人が「ミルクを後から」入れています。