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English Golden Rule
紅茶にはEnglish Golden Rule (英国式ゴールデンルール)というものがあります。ようするに「イギリス式のこうすれば美味しい紅茶が淹れられます」というルールです。それは以下のようになります。
1.良質の茶葉を使いましょう
2.汲みたての水を使いましょう
3.ティーポットとカップを温めておきましょう
4.茶葉を正確に計りましょう
5.鉄分の含まれたポットは避けましょう
6.汲み立て、沸かしのたて湯を使いましょう
7.しっかり蒸らしましょう
8.内側は白が望ましい
人によって、どれかが省略されていたり、何かが付け加わって10になっていたりしますが、一応この8つが「8つの鉄則」と呼ばれているものです。では、これらを1つずつ解説していきましょう。
1.良質の茶葉を使いましょう
良い茶葉でなければ美味しい紅茶にはなりません。これは当然のことです。ただ、この良い茶葉というのが紅茶をきちんと飲もうとする最初のうちは難しいのです。どうしても
「有名なブランドのものなら」
「高いものならば」
「イギリスのものならば」
等々、見てわかる部分で選んでしまいがちです。もちろん、こうした基準もあながち間違いとは言えないのですが、ここでちょっと考えて頂きたいのです。
つまり「良い茶葉」とは?
ということを紅茶でピンと来なかったら日本茶で同じことを考えてみれば良いのです。そうすると日本人ならやはり
「国産のもの」
「有名な産地のもの」
ときて、もう少し詳しい人や、少し調べた人なら
「有名な茶園のもの」
「美味しい季節(つまり旬)のもの」
等と思いつくと思います。紅茶も緑茶も同じ木です。そして農作物です。そう考えれば同じ基準が当てはまると思いませんか?
つまり
「産地直送のもの」もしくは「良いバイヤーがいるTea Brandのもの」というのが最初の条件になります。
これは産地に詳しければスリランカ、インド、ケニアなどの農園のものを直接取り寄せれば良いことになりますが、最初はわからないので無理です。なので、2番目の「良いバイヤーがいるTea Brandのもの」という方になります。この意味でしたら「有名なブランドのもの」というのも間違いではありません。
次に「美味しい季節(つまり旬)のもの」というものです。これは紅茶も農作物なので「収穫の旬」というものがあります。これをQuality Season (クォリティシーズン)と呼びます。紅茶を選ぶとき、この言葉を見つけることができたら、買いです。
今はインターネットでかんたんに検索できるので例えば
「セイロンティー クォリティーシーズン」などの検索ワードで探すとそうした茶葉を売っているネットショップを見つけることも出来るでしょう。ただし、同じものでもネットショップに限らず値段に差があるので必ずいくつか見比べてからかうようにしましょう。
2.汲みたての水を使いましょう
紅茶に使うのに適した水は「軟水」です。ようするに水の中にミネラル分が少ない水のことです。イングランドやフランスなどはミネラル分の多い水が普通でこれを硬水と呼びます。
スコットランドや日本の水道は基本的に軟水です。なので日本の水道水は一般的に紅茶に適しているといえます。ただし、地域によって水の硬度 (ミネラルの含有量)が違うので、気になる方はこちらの「ソフトウォータークラブのサイト」で自分の住んでいる所の水道水の硬度を確認することが大体できます。
また、汲んで時間を置いた水もダメです。必ず勢いよく水を出して汲み立ての水を使いましょう。そうすることで「空気が多く含まれた水」になります。
3.ティーポットとカップを温めておきましょう
これはそのままです。ティーポットとカップに予めお湯を注いで温めておきます。アメリカなどでは「ティーポットに水を入れて電子レンジにかける」というかなり荒っぽい温め方をする人が少なくないらしいですが、やはりお湯を入れて温める方が無難な気がします。

4.茶葉を正確に計りましょう
茶葉の量はティーメジャーというスプーンで正確に計りましょう。実際は小さめの容器を0.1gまで計れるキッチンスケールを置いて、その中に茶葉を入れて計ります。なので、正直に言えば、どんなスプーンでも問題ありません。
ただ、一つコツをお話しすると「いつも同じスプーンを使う」とすることです。そうすれば正確に重量を計っている余裕がない時でも「スプーンにこのくらいで何グラム」と正確な目分量ができるようになるからです。その意味ではティーメジャーは雰囲気を出すだけでなく、実用的にも意味があるものになります。

5.鉄分の含まれたポットは避けましょう
陶磁器か銀製のティーポット、あるいはガラス製のティーサーバーを使いましょう。そうしないと鉄分が紅茶の成分と化学反応してしまい、味を落します。出来ればお湯を沸かすヤカンもホーロー引きのものにするなど、鉄を避けるのが無難です。

6.沸かしのたて湯を使いましょう
ここで重要なのは、例え一人分だとしても最低1リットル以上は用意する、ということです。くまは大体2リットルとしています。そうしないと後で説明する空気があっと言う間に抜けてしまうからです。
問題はこの「沸かしたて」なのです。紅茶の成分であるカテキンやカフェインは90℃以上でなければあまり抽出されません。だからといって時々言われる
「沸騰してから数分間沸かし続けたお湯を使う」
というのは絶対ダメです。もちろん、一度沸かしたお湯を温め直すなど論外です。
実はお湯の中の空気は95℃から急激に減り始め、99℃でほぼ0になります。だから完全沸騰したお湯とか、さらに沸かし続けて「トドメを刺したお湯」では美味しい紅茶は作れないのです。理想は
95~98℃くらいのお湯
ということになります。これにはまず、強火で短時間で沸かすことが大切です。火が弱いとじわじわと空気が長い時間放出されて、お湯の中の空気が減ってしまうからです。
次に見極め方です。お湯が90℃になると、それまでの「シューシュー」という感じの音から「ゴー」という感じの音に変わります。音が変わったら火傷しないように注意しながらヤカンのふたを開けます。そして表面の泡が波うつようになって「ゴー」という音が強くなったら、そこが大体95℃です。後は練習してうまくなってください。
そしてここで大切なコツをもう一つ書いておきます。お湯が沸いたら必ず
「抽出用ポットのお湯を捨てて、ポットをヤカンの側に持ってきて湯を注ぐ」
のです。ポットの方にヤカンを持っていくのではないのです。そうすることでお湯がより最適な状態で注ぐことが出来るのです。時々「空気が多い方が良いなら高い位置からお湯を注げば良いのでは?」という人がいますが、これは冷めてしまうのでダメです。
7.しっかり蒸らしましょう
ポットにお湯を入れたらしっかり蒸らします。紅茶の蒸らし時間は、茶葉の種類や量等によって異なりますが、一般的には2~5分程度が目安です。
紅茶によっては容器や袋に蒸らし時間が書いてあるものがあります。そうした場合はそれに従いましょう。なかった場合は、以下のような目安で試してみるしかありません。ちなみにこの目安はくまの経験から来るものなので、異論、反論は認めます。
・小さい茶葉(1~3mm程度):2分
・細かい茶葉:2分半~3分
・大きい茶葉:3~4分
・ミルクティーの場合:3分程度
・ティーバッグ:1~1分半
蒸らしている間はポットにティーコジーやティーマットを使用して保温に注意しましょう。

蒸らし終わったらすぐに事前に温めておいたティーポットに抽出用ポットから全部移します。その時にはポットにティーストレーナー(茶漉)を当てることをお忘れなく。

8.内側は白が望ましい
ポットやカップ、とくにカップは内側が白いものが良いです。紅茶の生命は色と香りです。その色を楽しむために内側は白い方がよいのです。上手に淹れられた時にできるGolden Ring (スリランカではイエローリングと呼ぶそうです)を楽しむには濃い色では難しいです。
また、香りが広がりやすい浅い形のものを選ぶのも大切です。しかし、実際に紅茶の消費量が多いイギリス人も最近はマグカップで飲んでいる人が圧倒的多数のようなので、普段使いにはマグカップもありなかもしれません。でもくまはやはり、浅いカップの方が好きです。
以上、英国式のGolden Ruleについて解説をしてみました。ぜひ参考にして美味しい紅茶を淹れて下さい。尚、フランス式はまた違います。それについてはまた別の機会で。