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Speciality Tea (スペシャリティティー)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。この名称には国際的に共通した定義はありません。今回はこのSpeciality Teaという言葉を追いかけてみようと思います。
Speciality Coffee
Speciality Tea(スペシャリティーティー)という言葉を最初に使った人は誰だかわかりませんが、Speciality Coffee(スペシャリティコーヒー)という言葉を使った人はわかります。1974年に サンフランシスコにあるコーヒー商社Knutsen Coffee, LTD.のオーナーだったErna Knutsen(エルナ・クヌートソン/1921-2018)がアメリカの業界誌『Tea & Coffee Trade Journal』に寄稿した記事で初めて使われました。

彼女は1978年にフランス、モントリオールで開催された国際コーヒー会議(ASIC) で講演を行い、そこで「Speciality Coffee」の概念を広く紹介しました。その概念はとてもシンプルで
『special geographic microclimates produce beans with unique flavor profiles』
(特別の気候・地理的条件が独特の香気を持つコーヒー豆を育てる)
というものでした。
彼女はSpeciality Coffeeを特別に価値のあるものにするにはどうあるべきか、その定義を業界を捲き込む形で追求しました。その後、20年をかけてアメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)が出した定義は「産地、気象条件、栽培・生産処理技術、選別が適正であること」としました。ちなみにSCAAはヨーロッパスペシャルティコーヒー協会(SCAE)と2017年1月に統合してスペシャルティコーヒー協会(SCA)となり世界最大のコーヒー業界団体となりました。
ちなみにErna Knutsenさんの写真を検索すると笑っている写真がたくさん出てきます。そして、あったことがある方は口をそろえて彼女がよく笑っていたこと、一度会ったことがある人のことを本当によく憶えているし、あっていない間どうしていたかまで知っている、本当に明るくあたたかい人だったとコメントしています。さて、コーヒーの話もおもしろいのですが、とりあえずコーヒーはここまでです。
Speciality Tea
Speciality TeaはこのSpeciality Coffeeに影響されてできたのはほぼ間違いないと思います。実際にこの言葉を日本語、英語で各々検索すると色々なサイトが色々な定義を主張しています。
共通するのは
・特定の茶園:シングルオリジンであること
・品種:品種は当然としてものによっては茶園内の一定区画内の茶の木まで完全に追跡可能であること。それが無理でも原産地が完全に追跡できること。
・製法:手摘み、手揉みなど職人技による製造であること(これには異論もあります)
・茶葉の栽培から製造工程まで適正な品質管理がされていること
・気候やテロワール(土壌の特性)が風味に表れていること
・風味に個性があること
・最近では持続可能な農業で行われていること
・旬であること
などがあげられます。また、これとは別で
・買い手(バイヤー)の希望に則して、茶園内の一定区画内の茶の木から生産された希少な茶葉
という条件をあげている場合もあります。ともかく、手間と時間がしっかりかかっている上に、茶葉も農作物ですから摘む時期が旬の一時期だけだったり、テロワールも風味に求められたりと作り手に情熱がなければとてもできない紅茶、ということになります。また、最近では「無農薬、有機農法」であることが前提で語られることも多いようです。
Speciality Teaはどこで手に入るか?
これはとても難しい問題です。紅茶販売業者が自分の扱っている特別な紅茶を「Speciality Tea」だと言って販売しているのはよく見かけます。そしてそれらの多くはたぶんおいしいのだと思います。それに価値を認められるならばそれが自分にとってのSpeciality Teaになるのだと思います。
もう少し客観的に考えると「生産者が見える紅茶」であることがひとつの基準になるように考えます。定義の所であげたように本来のSpeciality Teaは生産者の手間と時間がかかっているものです。なので、生産者がどのように紅茶を作っているかが追えることが大切なのだと思います。ですから、販売者に製造者について、茶園について、聞いてみるのもひとつの方法でしょう。販売者が生産者のことをしっかり語れるならばそれは客観的にもSpeciality Teaの可能性は高いです。
そう考えると日本の茶業界というのは比較的生産者が見える傾向があります。そう考えると国産の紅茶には、もちろん品質がよいのは大前提ですが、Speciality Teaの可能性が高いことになります。またCeylon Teaのように国を挙げて紅茶製造と販売の一切を管理している場合にはSpeciality Teaになる可能性が高いと言えると思います。逆に有名ティーブランドのものでも、自国用と輸出用の品質を変えているような所のものや、やたらブレンドをしている所にはSpeciality Teaは存在しないのではないでしょうか。
結論として、Speciality Teaを求めるということは、すなわち、消費者である私たちが商品知識を持って、生産者と消費者がwin-winになるようにすること、つまりは「本当の意味で賢い消費者」になることなのだと思います。
みんなでSpeciality Teaを飲みましょう。