英国陸軍と紅茶

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🫖第二次世界大戦とTea Time

🫖Boiling Vessel

第二次世界大戦中、イギリス軍は紅茶を「士気維持の武器」として極めて重視していました。あまり知られていませんが、チャーチルは兵士に配給する必需品として「弾薬、水、紅茶」を挙げたと言われています。

そして特に有名なのが、イギリス軍戦車の紅茶装備です。イギリス軍の戦車には「Boiling Vessel(BV)」という湯沸かし器が標準装備されていたのです。これは単に便利というだけでなく、かつて戦車兵が湯を沸かそうとして車外で火を起こした際、敵の攻撃に遭ってしまった事件がきっかけになったと言われています。

Boiling vessel
Boiling vessel

その結果、戦車の中でも安全に紅茶が飲めるようにするために、湯沸かし器を装備するようになったというわけです。これによって紅茶は、命を守る飲み物となったのです。今でもイギリス軍の装備にはBVが存在しています。本来は食料を温めたりするお湯を作る機械として考えられていたのですが「紅茶を飲むためにお湯を沸かす装置」と言われたりもしています。

事実、無線手と機銃手は紅茶を淹れることが業務の一環となり「When in doubt brew-up」(困った時の湯沸かし)という言葉が生まれるほどでした。このようにイギリス軍では軍隊の伝統として紅茶文化が根付いているのです。

紅茶は、兵士の緊張をほぐし、仲間同士の会話を促す心理的ツールとしても機能しました。事実、フォークランド戦争や湾岸戦争でも、イギリス兵たちは休憩の合間に紅茶を淹れていたと記録されています。

🫖第二次大戦後のイギリス軍と紅茶

🫖フォークランド紛争(1982年)と紅茶

南大西洋での過酷な任務にあたっていたイギリス兵士たちは、限られた補給の中でも必ず紅茶を持参していました。各兵士のレーション(軍用食)にはティーバッグが含まれ、前線でも「ブリュー・アップ(brew-up)」と呼ばれる紅茶休憩は重要な時間とされていました。

特にこの戦争では、寒冷で湿った環境に対応するため、温かい紅茶は単なる嗜好品ではなく、士気と健康を保つ「液体の防寒着」のような役割を果たしていたのです。戦闘中にも携帯ストーブで湯を沸かし、金属カップで紅茶を飲んでいた記録があります。

🫖イラク・アフガン戦争でも健在な「ブリュー・アップ」

2000年代のイギリス軍でも紅茶文化は健在です。最前線に派遣された兵士たちは、戦闘の合間に即席の紅茶セットを広げては湯を沸かし、仲間と静かにカップを交わしていました。戦闘がどれほど過酷であっても「一杯のお茶」は英国兵にとって心の拠り所であり、イギリス軍の文化的アイデンティティの一部ともなっていたのです。

🫖Boiling Vessel(BV)の 現在

戦車や装甲車に標準装備された紅茶用のBVは、冷戦以降もアップデートされながら使用され続けています。イギリス兵はBVを「ティー・ボイラー」と親しみを込めて呼び、電源さえ確保できれば車内でも常に紅茶のための熱湯を得らることができるという安心感を持ちました。現在では、イギリス陸軍が使用するほぼすべての主要車両に搭載されています。

このように、イギリス軍の兵士たちは「紅茶とともに戦ってきた」と言えるほど、その存在は深く根付いているのです。軍事行動の記録をたどると、どの戦争にも「紅茶と兵士」の場面が必ず出てくるのが面白いところです。

すべてのBVは「Electrothermal Engineering Ltd」によって製造されているようです。最新型が軍事関係の広告サイトに出ていました。

Military Vehicle Mounted Water and Ration Heaters-l
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