大腸菌群

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定義・概要

大腸菌群(Coliforms) は、グラム陰性の通性嫌気性桿菌で、乳糖を分解してガスを産生する細菌群を指します。大腸菌 (Escherichia coli) を含みますが、それに限らず広いグループです。食品衛生では 衛生指標菌 として用いられ、食品や水の汚染状況を評価する際の基本的な検査対象となります。


食品衛生上の特徴

衛生指標菌

直接的に食中毒を起こすわけではなく、環境や人由来の糞便汚染の有無を判断する目安となる菌です。衛生指標菌というのは「その工場がどのくらい清潔か(汚染されているか)の指標として使われる菌」ということです。

検査頻度が高い

水産物・飲料水・乳製品・茶葉など、幅広い食品で定期的に検査されます。特に水産、精肉などの「生もの」を扱う現場では最低1日1回、現場によっては1日3回定期的に検査することになっているところもあります。

大腸菌(E. coli)との違い

大腸菌群は包括的概念です。大腸菌はその一部です。食品規格や検査法では両者を区別することがあるります。


国際規格との関係

  • ISO 4832:大腸菌群数 – コロニー数テクニック。大腸菌群の測定法が定められています。
  • Codex:食品分類ごとの微生物規格に大腸菌群が含まれます。
  • ISO 22000 / FSSC 22000:PRP における環境モニタリング指標としての位置づけです。

実務・管理のポイント

  • 水質検査:飲料水や製造用水での検出は不適合。
  • 原料検査:水産物、茶葉などで定期的に実施。
  • 製品検査:最終製品で陰性であることが求められる場合が多い。
  • 処理方法:大腸菌群は熱や冷凍で死滅しやすく、黄色ブドウ球菌ほどの持続性はない。

紅茶との関わり

  • 茶葉は乾燥製品のためリスクは低いですが、輸入時の検査対象になることがあります。
  • RTDティー(リキッド製品)では水由来の大腸菌群リスクが重要です。
  • 水産現場と同様に「基準を超えると即不合格」となるため、品質保証の基本検査項目です。

🫖紅茶文脈での使い方

英文: Coliforms are used as indicator organisms to evaluate the hygienic condition of food and water.

和訳: 大腸菌群は食品や水の衛生状態を評価する指標菌として用いられます。

英文: Imported tea leaves may be tested for coliform contamination as part of microbiological control.

和訳: 輸入茶葉は微生物管理の一環として大腸菌群の汚染検査を受けることがあります。


🐻くまの一言

シャーレの中の色

くまが品質管理と現場の衛生の総責任者をやっていた水産現場では、大腸菌群は毎日(場合によっては数回)行う最も基本的なチェック項目でした。

基準を超えるとその日の製品はすべて不合格となり、検査成績書に「大腸菌群陽性」と記されるだけで取引停止になることもあります。なので現場にとっては「合格・不合格のボーダーライン」を握る、まさに基本中の基本の菌でした。

当時使っていた大腸菌群の培地はオレンジ色で、ブドウ球菌や一般生菌の薄いレモンイエローとははっきり違っていました。数値よりも先に「色と形」で記憶していたので、検査報告書を見なくても、シャーレを開けた瞬間に「あ、これは陽性だ」と直感できたのをよく覚えています。

日本一のパートさん

もっとも、大腸菌、一般生菌が「0」ということは現実的にあり得ないので、その数値が問題になります。通常10⁵台でも検査自体は通るケースもあります。私は大した設備もない中でパートさんの従業員教育を徹底することで、10²台という数値を出したことがあります。大腸菌群で10²台を出したとき、あまりに数値が低すぎて保健所に「検査の失敗ではないか」と疑われました。職員が工場に来て、私の目の前で再検査をすることに。翌日、培養されたシャーレを測定するとやはり10²台。職員は呆然としていましたが、私は心の中で「勝ったな」と思いました。

後日保健所で「なんであんな数値が可能になったのか?」と聞かれました。そこで「うちのパートさんは日本一ですから」と言ってきました。そうしたら、世の中狭いもので、パートさんの一人の息子さんが保健所勤務でちょうどその場にいたそうです(熊は知らなかった)。そして「おばさんのところの衛生管理責任者すごいね。パートさんが日本一だから達成できたと断言していたよ」と言ったそうです。それ以降、パートさんたちからの待遇がよくなったというおまけがつきました。


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