黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

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定義・概要

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus は、人や動物の皮膚・鼻腔・咽頭に常在する細菌であり、食品製造現場における代表的な衛生管理対象です。健常人の手指や皮膚から容易に検出され、1 cm²あたり10³〜10⁵ CFU(コロニー形成単位)程度存在することがあります。ここでいう CFU とは「コロニーの数」を指し、コロニーとは培地上に目に見えるように増殖した菌の集まりのことです。


食品衛生上の特徴

毒素型食中毒

黄色ブドウ球菌は食品中で増殖するとエンテロトキシンという毒素を産生し、この毒素を食品と一緒に食べることにより、人に危害をおよぼします。黄色ブドウ球菌は熱に弱いですが、エンテロトキシンは加熱しても分解されません。

感染経路

主にヒト由来です。作業者の手指、傷口、マスク未着用などから食品に混入することが多いです。

発症症状

食後数時間で嘔吐・下痢を呈する急性の食中毒。


国際規格との関係

  • ISO 6888-1:黄色ブドウ球菌の試験法が定められています。
  • Codex / 各国基準:調理食品や乳製品で基準値が定められています。
  • ISO 22000 / FSSC 22000:PRP の一部として作業者衛生・環境衛生管理を要求しています。

実務・管理のポイント

  • 手洗い・手袋・マスクの徹底:最重要の制御手段です。
  • 傷口の覆い:絆創膏や指サックで対応と一般的に言われていますが、厳密には手などに傷がある人は食品工場での作業は禁止すべきです。
  • 環境管理:作業場の衛生状態を保ち、接触機会を減らすことは重要です。
  • 記録管理:微生物検査・教育訓練記録の保持も重要です。そしてそれを現場と共有することが大切です。

実例など

くまの知っている食品工場では手指由来の汚染により 1日の生産物全量が基準値を超過し、すべて廃棄対象となった事例もありました。こうした事態は企業にとって甚大な損失であるだけでなく、消費者安全やブランド信頼の面でも深刻な影響を及ぼします。そのため、手洗いやマスクの徹底、傷口の覆い、作業者教育など、日常的な予防策が極めて重要です。


紅茶との関わり

  • 紅茶そのものは低水分活性でリスクは低いですが、濡れた工程(ブレンド時の加湿・抽出液の調整など)での増殖リスクがあります。
  • RTDティー(アイスティー飲料など)の製造では黄色ブドウ球菌の管理が不可欠です。

🫖紅茶文脈での使い方

英文: Staphylococcus aureus is a common bacterium found on human skin and can contaminate food during processing.

和訳: 黄色ブドウ球菌は人の皮膚に広く存在し、加工中に食品を汚染する可能性があります。

英文: If Staphylococcus aureus grows in food, it can produce heat-stable toxins that cause food poisoning.

和訳: 黄色ブドウ球菌が食品中で増殖すると、加熱しても壊れない毒素を産生し、食中毒を引き起こします。


🐻くまの一言

黄色ブドウ球菌の毒素は非常に強力です。しかも文字通り「似ても焼いても食えない」という性質を持っています。
くまがよく知っている従業員50人規模の小規模食品工場でこれの大規模汚染が発生したことがありました。幸い食中毒事件にはなりませんでしたが、そこから経営が傾き、半年後に倒産してしまいました。そうした実例を目の当たりにしてきたのでくまは黄色ブドウ球菌は「ミクロのテロリスト」だと思っています。

ちなみに大腸菌や一般生菌は、最悪の場合でも冷凍保管や時間経過で数を減らすことができました。しかし黄色ブドウ球菌は一度毒素を作ってしまえばどうにもならず、現場では「別格のこわさ」を持つ菌でした。

また、ヒト由来のため髪の毛や手指からの混入リスクが高く、特に女性のパート従業員が多い工場では、髪の毛が長い人が多いので、髪の毛と帽子の管理や手洗い徹底をかなり厳しく言わないとチェック漏れが出やすいのが実情でした。


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タグ: FSSC 22000 ISO 22000 ISO 6888 微生物検査 黄色ブドウ球菌