オール・アバウト・ティー(ALL ABOUT TEA)

contents

概要

20世紀初頭に William H. Ukers によって編まれた、紅茶に関する大規模総合書。初版は2分冊ですが、今は合本版が主に流通しています。
栽培・製法・流通・歴史・消費・用語に至るまでを網羅し、長らく「紅茶を体系として語るための基準点」とされてきた一冊でです。

百科事典的体裁を取り、読み物というよりは参照用の大冊に近い本です。その分量と網羅性から、しばしば「電話帳」に喩えられます。

『ALL ABOUT TEA』
『ALL ABOUT TEA』合本版

説明・背景

ユーカースは、本書を執筆するにあたり、ブラジル、スマトラ、コロンビア、インド、中国、日本、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカを訪問、取材しました。お茶の歴史、栽培方法、効能、成分、語源などから各生産地・市場を調査し、貿易・標準規格まで広く整理しています。まさにAll About Tea (お茶の全て)を網羅しています。『All About Tea. Vol. 1』『All About Tea, Vol. 2』で読むことができます。

現在も歴史・産業の基礎参考書として引用されます。ユーカースは姉妹書として『All About Coffee』というコーヒーの本も書いています。こちらは今は『All About Coffee』というサイトで全部を読むことができます。


評価と位置づけ(辞典的)

この本の特徴をあげると以下の4点が言えます。

  • 読み物としての面白さ:高くはない
  • 情報の新しさ:現代的ではない部分も多い
  • 体系性・網羅性:きわめて高い
  • 基準資料としての価値:現在でも有効

ですから、本書は、知識を得るための本というより、「紅茶という分野が、どのような秩序で一度まとめられたか」を確認するための書だといえます。


🧸くまの一言(これがメインともいう)

この本は、最初に読めばきっと面白い本になると思います。しかし、ある程度紅茶文献を読み進めた後に読むと、「興味深いところは多いが、大して面白くはない」と感じるでしょう。

それは本書の価値が下がったのではなく、読み手がすでに学ぶ側から語る側へ移動しているからなのです。

たとえて言えば、教師になってから高校の教科書を精読するような感覚がしました。表現や説明、体系の立て方に思わず唸る場面はありますが、物語としての高揚はありません。

だからこそ、本書は「よくできた古い教科書」のようなものだと思います。

紅茶を語る立場に立つなら、この本を神格化する必要はありません。しかし、手元に置かずに語るのも、どこか違うのです。

話題に出た時「ああ、それなら家にある」と言える距離に置いておくこと。これがちょうどよい距離感だと思います。それは、教科書なしで授業をしないのと同じ、紅茶を語る者としての最低限の誠実さだと思うのです。

最後に……
これ全部通読するの辛かったです(笑い


🫖紅茶文脈での使い方(英語短文)

英文: Ukers’s All About Tea remains a standard reference on tea history and trade.

和訳: ユーカースの『All About Tea』はいまも茶の歴史と貿易の基本文献と見なされています。

英文: A modern one-volume edition is easier to obtain than the original two-volume set.

和訳: 原著の上下本より、近年は合本版のほうが入手しやすいです。


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