Arts and Crafts Movement

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定義

Arts and Crafts Movement(芸術工芸運動)は、19世紀後半のイギリスにおいて始まった、美術・工芸・建築にわたる社会改革的な芸術運動です。産業革命による機械的・大量生産的な物づくりへの反発として、手工芸の尊重、美と実用の調和、生活芸術の回復を主張しました。

背景と展開

William Morris(ウィリアム・モリス)を中心とする思想家や芸術家たちは、装飾芸術の衰退や職人技術の軽視に警鐘を鳴らし、中世ギルドの精神を理想に掲げながら、美術と生活を結びつける新しい社会理想を構想しました。運動はイギリスからヨーロッパ諸国、アメリカ、日本へと波及し、後のアール・ヌーヴォー、モダンデザイン、民藝運動に影響を与えました。

特徴

  • 手仕事による製作と職人の創造性の重視
  • 素材の美しさや機能性を引き立てるデザイン
  • 中世や自然からの着想に基づいた装飾
  • 芸術と日常生活の統一
  • 社会主義的理想を背景にした労働の尊厳の回復

茶文化との関係

ティーウェアやティーサービスにおいても、芸術工芸運動の理念は反映されています。特にWilliam Morrisによるテキスタイルや壁紙のデザイン、アーツ・アンド・クラフツ様式のティーセット、リバティ商会による工芸品などが、日常の茶の時間に美をもたらす文化的背景として機能しました。

代表的人物・団体

  • William Morris
  • John Ruskin(ジョン・ラスキン)
  • The Arts and Crafts Exhibition Society(アーツ・アンド・クラフツ・エキシビション・ソサエティ)
  • Richard Norman Shaw(リチャード・ノーマン・ショー:建築)
  • Charles Robert Ashbee(チャールズ・ロバート・アシュビー:工芸)

関連項目

William Morris
Teaware
英国茶文化
アール・ヌーヴォー
モダンデザイン
民藝運動

日本での展開

芸術工芸運動は20世紀初頭、日本の民藝運動や白樺派の思想に大きな影響を与えました。特に柳宗悦は、William Morrisの思想に共鳴し、『美は日常に宿る』という理念を日本的文脈で展開しました。

バーナード・リーチを通じて西洋工芸と日本の陶芸が融合し、民藝運動として結実します。また、白樺派の志賀直哉や武者小路実篤らは、日常生活と芸術の統合、倫理と美の一致を求めたという点で通底する理想を持っていました。