チクロと「全糖」信仰

目次

📝 概要

チクロ(サイクラミン酸ナトリウム)は、かつて日本で広く使われていた人工甘味料の一種です。低カロリーで砂糖の代替として重宝されていましたが、1969年に厚生省(当時)が発がん性の疑いを理由に使用を禁止しました。これがいわゆる「チクロ騒動」です。

この騒動の影響で、日本社会では「人工甘味料=危険」「砂糖こそが安心」という意識が急速に広まり、特に1970年代にかけて「全糖(ぜんとう)」表示が“安心”や“品質”の象徴として受け止められる風潮が強まりました。

🎯 規制の経緯

出来事
1930年代アメリカで人工甘味料として開発される
1950年代日本でも飲料・菓子などに広く使用される
1969年厚生省がチクロの使用を全面禁止(食品衛生法に基づく措置)
以後「無添加志向」や「全糖表示」への信頼が強まり、自然由来への回帰が進む
1972年スイス連邦政府がテスト結果としてチクロの無害を発表。この事実は日本ではほとんど触れられていない

🧃 影響

  • 清涼飲料水業界では、砂糖に完全に戻した製品が「全糖」として再ブランディングされた
  • 紅茶関連飲料も「無香料・全糖」表示が安心材料として使われた
  • 「合成=悪」「自然=安心」という単純化した消費者意識のきっかけに

🔍 紅茶との関係

  • 1970年代〜1980年代の紅茶飲料では、「無香料・全糖」の記載が強く意識されていた
  • 「甘い紅茶=高級感」の時代が一時的に形成された
  • お歳暮用ギフトセットでも「砂糖入り紅茶」「角砂糖付きティーセット」が好まれた

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