香りを飲むという衝撃

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📝 概要

1970年代後半、日本の一般家庭に「アールグレイ」が登場したとき、多くの人々はそれを“紅茶”と認識するのに戸惑いました。従来のセイロン系紅茶に慣れた口にとって、香りが前面に出るという体験は、驚きであり、ある種のカルチャーショックでもあったのです。この現象を、ここでは「アールグレイ・ショック」と呼びます。

🕰️ 時代背景と香りのカルチャーショック

  • 紅茶は「香るもの」ではなく「温かく、飲むもの」という認識が強かった。
  • 日本でフレーバーティーが一般に知られるようになったのは1970年代後半。
  • アールグレイはベルガモット精油の強烈な香気があり、初めて体験した多くの人が 「これはお茶ではなく香水では?」と驚きを隠せなかった。
  • 「アールグレイ」は、紅茶に香りをつけるという概念そのものの突破口となった。
  • 当時の紅茶文化は「紅茶は渋みと香ばしさを楽しむもの」というイメージが強く、柑橘系の香りが前面に出ること自体が衝撃的だった。

☑️ なぜアールグレイが導入されたのか?

  • 欧米での流行(特にイギリスではすでに紅茶のスタンダードの一角)
  • 「紅茶の多様性」への一歩として、輸入紅茶業者や百貨店が導入を進めた
  • 輸入品の中では、Twiningsのアールグレイ缶が早期に出回ったことで認知が拡大
  • フレーバーティー=「都会的・洋風・ハイカラな趣味」として特に女性層に浸透

🌿 アールグレイの特性

特性内容
香料ベルガモットオイル(柑橘系)
ベースティーダージリン、セイロン、アッサムなどが主流
飲用スタイルストレートまたはミルク(ストレート推奨派が多かった)
初期反応「これは紅茶なのか?」という戸惑いが広がった

⚡ 初めての衝撃──「香りを飲むという体験」

  • 当時の証言:「これも紅茶?と驚いた」「香りを飲むという感覚は、まさに異文化体験だった」
  • 紅茶が嗅覚と味覚の境界を越える存在として受け入れられた最初の事例ともいえる
  • 後に「プリンス・オブ・ウェールズ」など高級感のある紅茶の香り付けにも広がっていった

🎁 ギフト文化との接点

  • アールグレイは当初、お歳暮や贈答用の詰め合わせの中で出会うことが多かった
  • 色とりどりのティーバッグに混じって、黒や銀色のパッケージの「アールグレイ」が中央に配置され、高級感を演出していた
  • ギフトとしてのインパクトが、日常の紅茶のあり方を塗り替えた

🌐 社会的・文化的影響

  • 「香料表示」や「フレーバリングの是非」についての制度的・倫理的議論も生まれる(→ 紅茶と香料
  • フレーバーティー市場の拡大への布石となる
  • 後に「ローズティー」「アップルティー」「ジャスミンティー」など、香りを楽しむ紅茶が多様化

🔗 関連項目