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目的
消費者に対して正確で誤認のない情報を提供し、適切な食品選択を可能にすること。また、食品衛生法に基づく安全性確保と、公正取引の観点からの適正表示を実現すること。
制度の概要
日本の食品表示基準(平成27年4月1日施行)は、消費者庁および厚生労働省の管轄のもとで整備されており、香料の表示に関しても詳細なルールが設けられている。
- 香料は「一括名(例:香料)」での表示が原則とされており、個別成分名や「天然香料」「合成香料」といった属性の表示は原則不可。
- 「香料不使用」「無香料」などの表示は、消費者に誤認を与える恐れがある場合には制限される。
- 表示は、消費者が食品を購入する際の合理的な判断を助けるためのものであると同時に、過度な差別化や誤認誘導を防ぐために制限される。
Codex・ISOとの関係
- Codex CXS 12-1981 Annex(香料に関する附属規定)やISO 9235(天然香料の定義)とは、定義や分類体系が共通する部分があるものの、表示の可否や範囲については日本独自の制限がある。
- 特に「天然香料」表示に関しては、CodexやISOで技術的に定義されていても、日本ではその表現が表示上制限されているため、制度の整合性よりも国内の消費者保護原則が優先されている。
- 一方で、輸出を行う事業者や、多国籍企業にとっては、CodexやISOの定義に基づく設計・開発と、日本での表示要件との両立・切り替えが実務上求められる。
実務上の意義と課題:
- 「香料不使用」などの表示が厳しく制限されることで、ナチュラル志向の商品訴求が困難になる一方、誇大表示や印象操作の抑制には有効に働いている。
- 香料が主機能となる商品(例:フレーバーティー、清涼飲料水など)では、製品コンセプトと表示制度の整合を事前に設計段階で検討する必要がある。
- 消費者庁・厚労省・業界団体の間で「表示に対する期待値」と「科学的定義」とのズレが生じやすく、これが国際表示基準との微妙な齟齬を生むことがある。
備考
このように、日本の食品表示制度は消費者保護を最優先としつつ、CodexやISOと技術的に連携する部分も存在しています。そのため、制度の“橋渡し”としての設計判断や、製品開発・マーケティングの段階での表現戦略が、今後ますます重要になっていきます。