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ISO 9235(天然香料の定義)
目的
香料のうち「天然香料」として分類される物質の定義、取得方法、分類体系を統一することで、国際的な取引・表示・安全管理における信頼性と透明性を確保することを目的としています。
起源・背景
1988年に初版が発行されたこの規格は、食品・化粧品・香粧品などに使用される香料のうち、「天然」を名乗る成分の技術的・化学的定義を統一する目的で策定されました。背景には、天然香料という表示の乱用、合成香料との境界の曖昧さ、消費者の安全性・信頼性確保の必要性があったからです。
主な内容構成
用語 | 定義内容 |
天然香料(Natural flavouring substances) | 植物または動物由来で、物理的手法(蒸留・圧搾・発酵など)のみによって得られた芳香成分 |
許容される加工方法 | 蒸留、抽出、発酵、乾燥、粉砕など → 化学合成は禁止 |
合成香料(Synthetic flavouring substances) | 化学合成により得られた物質(天然由来でも、化学反応を経れば「天然」扱いされない) |
- 化学変化を伴う合成や、人工的な化合物の添加は含まない
- 天然香料の分類例:精油、抽出物、蒸留物、圧搾物、発酵物など
- 香料の命名規則と出所表示(例:Lavandula angustifolia oil=真正ラベンダー油)
運用上の意義
- Codex CXS 12-1981 Annex(香料に関する規定)やIFRAガイドラインとの整合性の基盤
- 「天然香料」を名乗る商品において、その科学的裏付けと消費者への説明責任を果たす前提
- 香料使用が重要な産業(食品、飲料、化粧品など)において、誤表示・虚偽表示リスクの低減
📌 紅茶との関係
- フレーバードティー(例:アールグレイ、バニラティーなど)の香料使用表示において、「天然香料」と記載できるかの基準に使われる
- EU・日本・米国などの香料表示制度は、ISO 9235の定義を準拠または参考にしている場合が多い
- IFRA CodeやCodex Annex(香料使用指針)と相互参照される国際標準
📌 制度上の影響範囲
- EU Regulation(EC No 1334/2008):「天然香料」の定義はISO 9235に準拠
- 日本の食品表示基準でも「天然香料」という用語を用いるが、明確な定義はなく、実務的にはISO準拠が主流
- 清涼飲料や紅茶ベースのRTD製品でも、天然 vs 合成の香料表示が問題になる
備考
ISO 9235は、特に天然志向が高まる市場において、香料の信頼性と文化的受容性を高めるための重要な国際的規範です。
紅茶やハーブティーなどに用いられるフレーバーでも、「天然香料」の明確な定義が製品価値と信頼を左右する要素となります。
なお、日本の食品表示基準(消食表第139号)では、「天然香料」やそれに類する表現を表示に用いることは原則として認められておらず、香料は一括名「香料」として表示することが義務付けられています。
ただし、ISO 9235の定義は、製品開発、輸出、品質保証などの実務においては技術的基準として活用されており、表示には現れない“裏方”の信頼性基盤としての役割を果たしています。