JAS法全体(農林物資の規格化等に関する法律)

contents

📘 概要

JAS法は正式には「農林物資の規格化等に関する法律」といい、農産物・加工食品などに対する品質の規格化と認証制度の整備を目的とした法律です。

日本の食品・農産物における「信頼できる品質表示」の基盤となる制度のひとつであり、農林水産省が主管しています。

現在のJAS制度は、品質表示だけでなく、製造工程・適正表示・第三者認証制度を含む、包括的な認証制度として運用されています。

🧾 主な内容と構成

区分内容紅茶との関係
品位等の規格設定素材や加工品の品質に関する基準を策定茶葉の「等級」や加工状態の明示につながる
JASマークの付与第三者認証機関による検査合格品に対して付与有機JASや工程管理JASなど、信頼性の指標として重要
自主的認証制度品質に加え、生産工程やサービス工程に関する認証も制度化「有機紅茶」や「環境配慮型製造」などの裏付けに使われる
技術的基準科学的・物理的測定を含む技術要件を定める品質の客観性を保証する指標の基準点となる

🍃 紅茶・茶業における位置づけ

紅茶に関連するJAS制度には、以下のようなものがあります。

  • 有機JAS(→ 有機JAS認証参照)
    化学農薬・化学肥料を使用せず、一定の有機管理基準を満たした茶に付与。
  • 工程管理JAS
    製造工程やサービス提供工程が一定基準に則っていることを保証(茶葉の選別・加工などが対象になることも)。
  • 一般JAS規格(等級分類など)
    実質的に茶業ではあまり使われないが、農産物や加工食品で用例あり。

🏷️ JASマークの種類(代表例)

ロゴマーク内容適用可能性
有機JAS有機JASマーク有機農産物/加工食品✅ 紅茶で最も重要
特色JASマーク特色JASマーク(旧・工程管理JAS/機能性JASなどを含む)製造工程や生産者のこだわりなど、特定の特色を認証△ 特定農園仕立てや製法主張型の商品で活用余地あり。工程、こだわり、生産背景などの特徴を第三者認証する制度。
jas_logo品位等JASマーク(旧・一般JAS)規格化された品質(例:米・木材など)❌ 米や木材など一部で使用。紅茶にはほぼ未適用。

✅ 工程管理JASマークは「特色JASマーク」に統合されました

「工程管理JASマーク」は現在、「特色JASマーク」に一本化されています。

📘 背景説明

以前は以下のような複数のJASマークがありました。

  • 有機JASマーク
  • 工程管理JASマーク
  • 品位等JASマーク(等級など)

しかし、2018年のJAS制度改正以降、「JAS制度の目的をより明確化・柔軟化するため」に、用途別マークを整理し、一部が「特色JASマーク」に統合されました。

🫖 紅茶との関係で言うと

  • 「こだわりの製法」や「特定農園仕立て」のような主張を認証したい場合、
    → 「特色JAS」が使える可能性があります。
  • 一方で、等級や味のばらつきに基づくJASはほぼ存在しません。

📎 くま補足

昔の「工程管理JASマーク」は、たとえるなら「お茶がどうやって旅してきたかの履歴書」みたいな存在でした。

今の「特色JASマーク」は、それに“その人(製品)のこだわり”というプロフィール欄がついた感じです。

つまり、工程+思想=特色なのです。

✅ 品位等JAS=平準化規格(standardization)

📘 概要

「品位等JAS」とは、農林物資における

  • 等級(グレード)
  • サイズ・形状
  • 色調や欠点率
  • 成分含有量

などに基づいて、ある一群の製品に「一定の品質水準」を求めるための規格です。

これはまさに国際的に言うところの

📏 standardization(標準化)
=同じカテゴリーの製品について、同一の品質条件で分類・管理・流通できるようにするための規格

の性質そのものです。

🏷️ 「平準化」とは?

ここで言う「平準化」とは

製品の品質や仕様に許容できるばらつきの範囲を設定し、消費者や取引業者が安心して判断・流通できるようにすることです。

たとえば

  • お米の等級(1等、2等など)
  • 木材の乾燥率や節の有無
  • 卵のサイズや殻の強度

これらすべて、「品位等JAS」による規格の平準化の成果です。

🍃 紅茶にはほぼ適用されない理由

紅茶の場合は、次のような事情により「品位等JAS」はほとんど使われていません。

理由内容
品質が主観的「香り」「味」「渋み」など、感覚的評価が主体で数値化しづらい
等級の国際基準が主導インドやスリランカのグレード(OP, BOP, FTGFOPなど)が支配的
国内生産量が限られる国内で大量に流通する統一グレードの茶葉が少ない