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🔸 概要
嗜好品統制とは、戦時・戦後の国家体制において、贅沢品や必需性の低い物資(=嗜好品)を対象に、その製造・販売・流通を制限・抑制した政策の総称です。
この統制は、資源・輸送・人力を「生活必需物資」に集中させるためのものであり、紅茶もその影響を大きく受けました。
🔸 制度・背景
第二次世界大戦下の日本では、1939年以降の国家総動員法に基づいて、食糧管理法、物資統制令、贅沢品指定制度などが相次いで整備されました。
この中で「嗜好品」というカテゴリが設けられ、生活維持に不可欠でない飲食物・化粧品・娯楽用品などが厳しく制限される対象となりました。
紅茶はこの分類の中で「代表的な輸入嗜好品」として記録され、強く抑制される側に入りました。
🔸 紅茶への影響
- 紅茶は贅沢品指定の対象に入り、事実上の禁制品となる時期もありました。
- 配給制度の対象外となり、庶民の手にはほぼ届かなくなりました。
- 高価な代替物とされ、“紅茶のふりをした麦茶”のようなものが市場に現れるようになります。
- 紅茶文化は一時的に衰退し、「闇市でしか手に入らない幻の飲み物」と化しました。
また、「嗜好品を控えること」は国民道徳や愛国精神と結びつけられたため、紅茶を公然と求めることすらはばかられる社会的雰囲気が存在しました。
🔸 戦後の余波
戦後になってもすぐにこの統制が解除されたわけではなく、1950年代中盤まで、紅茶を含む多くの嗜好品は自由には流通できませんでした。
「紅茶は高級品」という文化的記憶はこの制度の延長線上にあります。