戦後〜高度成長期の砂糖信仰

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📝 概要

砂糖は戦後の日本社会において、単なる甘味料ではなく「豊かさ」の象徴でした。配給制度下では貴重品であり、戦後しばらくの間も“贅沢品”として認識されていました。高度成長期に入ると、装飾性のある角砂糖や洋酒入り角砂糖が贈答品として人気を博し、「全糖表示」が品質や安心の証とされるなど、社会全体に砂糖への信仰とも言える文化が形成されました。

🕰️ 背景と歴史

時代
出来事・特徴
戦中〜戦後直後砂糖は配給品・統制品、贅沢品としての象徴的地位を持つ
1950年代進駐軍供給品としての砂糖や角砂糖が市中に登場(お茶・コーヒーとセット)
1960年代高度成長とともに砂糖の流通が安定、贈答用の装飾角砂糖や洋酒糖が流行
1970年代チクロ騒動後、「全糖」が安全・高品質の証とみなされる文化が定着
平成以降砂糖は「健康に悪い」印象を持たれ、贈答文化から姿を消す

🎁 贈答文化としての砂糖

  • バラ型や花型の装飾角砂糖
     ┗ ピンクと白のバラが詰まった大きな箱は、紅茶ギフトの定番
  • 洋酒入り角砂糖(ブランデー・ラムなど)
     ┗ 高級志向を反映した贈答品で、ティータイムの演出にも
  • 「お歳暮文化」における紅茶とセットの登場
     ┗ 砂糖・紅茶・ティーバッグの詰め合わせが一体として贈られた

📦 紅茶との関係

  • 「砂糖がある」こと自体が紅茶の格を引き上げる要素とされていた
  • ティーバッグ・紅茶缶・角砂糖が一緒になったギフトセットが流通
  • バラ型角砂糖の美しさが「紅茶の席」に彩りを与えていた
  • 紅茶を“贅沢な飲み物”とするための象徴が、砂糖であった

📉 砂糖信仰の終焉と現在

  • 健康志向の高まりにより「砂糖=悪者」とする風潮が強まる
  • お歳暮から砂糖製品が消え、代わって「無糖」志向が台頭
  • バラ型角砂糖や洋酒糖は現在ほとんど生産されていない
     ┗ 一部で復刻商品として細々と流通

✨ メモ:文化的記憶のかけら

  • 「母親が大事に使っていたバラの砂糖を、もったいなくて一粒ずつかじっていた」
  • 「絵描きだった父親が、TWININGS缶を筆立てに使っていた」
  • こうした個人の記憶は、戦後文化における「砂糖の重み」を象徴している。

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