散茶

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概要

団茶に対して、圧縮加工を施さず、茶葉を「ばら」の状態で流通させる形態です。輸送・等級選別・ブレンド・再梱包に適しており、広州を拠点とした輸出茶の基本フォーマットとして機能しました。明清期以降、広州での等級選別・合組・再焙煎が行われ、輸出茶の基本形として定着しました。茶を「再加工前提で流通させる」形態で、国際商業の視点から重要な概念です。団茶と対になる歴史的用語であり、加工形態を示す分類語です。


詳解

散茶は「最終形」ではなく「流通の途中形」です。茶葉を圧縮・固形化せず、乾燥させたまま袋や籠に収めた形態で、茶は港と市場をめぐり、再び形を変えて海に出ていきました。

歴史的に見れば、茶はかつて「団茶(固形茶)」として丸薬状に固められ、保管・輸送されるのが主流でした。しかし明代以降、等級選別・ブレンド・再焙煎 の必要性が高まり、葉を自由に扱える「散茶」が流通上の利点を持つようになります。

特に輸出工程では、散茶のまま広州に集荷 → 選別 → 合組(ブレンド) → 再焙煎 → 包装 → 船積み という一連の作業が行われました。この工程こそ、「茶の商品化と工業化の起点」 と言えます。

散茶はそのまま飲用される完成形ではなく、「市場で仕上げるための素材茶」という位置づけなのです。

また散茶は水分率調整や香味調整がしやすく、後の紅茶輸出にも直接つながります。ラプサン・スーチョン(正山小種)も武夷山で作られた後、広州で再加工され、散茶の輸出茶として出荷されました。

つまり散茶は、「茶を工芸品から商品へ変えた形態」であり、茶葉が「海に出る」ための前提条件でもあったのです。


歴史的役割・茶との接点

  • 圧縮茶(団茶)に対する“流通向け形式”として成立
  • 広州一港体制と結びつき、輸出茶加工の標準形に
  • 等級選別・合組・再焙煎を可能にし、商業茶へ進化
  • 紅茶輸出方式の前史として重要

🫖 紅茶文脈での使い方(英和例文)

英文: Sancha refers to loose, uncompressed tea suitable for grading and blending before export.

和訳: 散茶は、輸出前の等級選別やブレンドに適した“ばらの茶”を指します。