マラッカ海峡
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概略
アジア海上交通の「喉」。インド洋と南シナ海を結ぶ主要海峡で、海上シルクロードの要衝として機能しました。マレー半島とスマトラ島に挟まれた、全長約800kmの戦略海峡です。幅は最狭部で約40kmと細く、通過制御が流通全体に影響しました。帆船航海期には、モンスーンを利用した「回転航路」の中継地点として機能し、茶の輸送にも関わりました。茶・香辛料・織物・陶磁器がここを経由して流通し、港市国家・イスラム商人・欧州勢力が覇権を競いました。
詳解
マラッカ海峡は、「通れば世界へ出られる」が、「止められれば世界と断たれる」という、海上交易の宿命を象徴する場所です。この海峡は、アジアとインド洋世界を結ぶ最短ルートであり、帆船・蒸気船ともに通過を避けられない要衝でした。
インド洋を西へ抜ける船は、マラッカを過ぎて初めて南シナ海に入り、広州・福建・江南圏の茶市場へ接続します。逆に中国沿岸から輸出された茶も、「武夷山 → 広州 → マラッカ海峡 → インド洋 → 喜望峰 → ロンドン」 というルートで運ばれました。
この海峡は「地理的な狭さ」と「政治的な争奪」の両方が重なった空間です。
イスラム商人による港市ネットワーク(マラッカ、アチェなど)
→ ポルトガル支配(1511〜)
→ オランダ東インド会社(VOC)支配(1641〜)
→ イギリス支配(19世紀〜)
と覇権が連続し、茶・香辛料・銀・陶磁器など高価値品を扱う海商たちは、それぞれの勢力下で課税と保護の両方を受けました。
特に茶の輸送史においては、モンスーン航海と結びついた「回転航路の分岐点」として重要です。 この海峡を通るか、荒天を避けてジャワ海へ迂回するかによって、輸送コスト・風待ち期間・貿易額が変動しました。 つまりマラッカ海峡は、茶の味ではなく茶の「市場価格」を左右する地理条件でもあったのです。
歴史的役割・茶との接点
- 海上シルクロードの「東西接続点」として機能
 - モンスーン航海の中継地であり、往路/復路の切替地点
 - 茶・香辛料・陶磁器・絹布など“軽量高価値財”の多国間流通を成立させた
 - 港市国家・イスラム海商・欧州東インド会社勢力が争奪
 
🫖 紅茶文脈での使い方(英和例文)
英文: The Strait of Malacca was the chokepoint funnelling Asia’s tea and spices toward the Indian Ocean.
和訳: マラッカ海峡は、アジアの茶と香辛料をインド洋へ束ねる「要衝」でした。
英文: Control of the Malacca passage meant control of the maritime tea route between China and Europe.
和訳: マラッカ海峡を支配することは、中国と欧州を結ぶ海上茶ルートを支配することを意味しました。