ティークリッパー(Tea clipper)
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概要
ティークリッパー(Tea clipper)は、紅茶輸送に特化した快速帆船の一群で、新茶を最速で欧州市場へ届けることを目的に設計・運用された船です。米国で発達したクリッパー船の系譜を受けつつ、19世紀中葉には主に英国の造船所でも高度化しました。
混同されやすいですが、クリッパー船(clipper ship)は上位概念です。つまり、クリッパー船というくくりの中にティークリッパーもある、という理解が正しいです。
関連規格/典拠
・代表船と年:Ariel(1865)、Taeping(1863)、Thermopylae(1868)、Cutty Sark(1869)
・航路・記録:福州(Foochow)— ロンドン間の「ティーレース(Tea races)」の到着記録
・造船・海運史資料:19世紀英国・米国の造船台帳、海事博物館・保存船の解説
目的/機能
輸送時間の短縮によって、初荷(first arrival)の価格プレミアムと鮮度価値を確保することです。細長い船体・大帆装・浅い喫水・鋭い船首といった速度最優先の設計が採用されました。
範囲/定義境界
クリッパー船の用途特化サブタイプで、主積荷は中国紅茶(のちにインド・セイロンも)。一般のクリッパーが羊毛・香辛料・金など多様貨物を担ったのに対し、ティークリッパーは季節・航路・運賃契約が紅茶輸送に最適化されていました。
類似/対比
蒸気船(steamer)は定時性と運河通航で優位。ティークリッパーは瞬発的な高速で対抗しましたが、やがて蒸気船が主流となります。
・歴史的背景:1840年代以降、米国発のクリッパー船が高速帆走で注目され、英国でも発展。1860年代にティーレースが盛行し、福州発ロンドン行きの競走では到着順にプレミアム(割増運賃)が支払われました。特に1866年の大競走(Taeping と Ariel の僅差決着)は著名です。1869年のスエズ運河開通と蒸気船の普及により、1870年代には競争力が急速に低下しました。現在はロンドンのカティーサーク(Cutty Sark)保存船が象徴的遺産となっています。
クリッパー競争(ティーレース)
非公式ながら契約上のプレミアムが制度化され、船主・荷主・乗組員の名誉と実利が結びつきました。1866年の Taeping/Ariel/Serica の接戦、1872年の Cutty Sark vs Thermopylae などが代表例です。
🫖紅茶文脈での使い方(英語短文)
英文: A tea clipper raced from Foochow to London with the season’s first teas.
和訳: ティークリッパーは、その年の初物の紅茶を積み、福州からロンドンまで競走しました。
英文: Merchants paid premiums when tea clippers won the early-arrival races.
和訳: 早着争いに勝ったティークリッパーには、商人がプレミアム(割増運賃)を支払いました。
英文: After the Suez Canal opened, tea clippers struggled against reliable steamers.
和訳: スエズ運河開通後、ティークリッパーは定時性の高い蒸気船に押されました。
🔗リンク
クリッパー船(Clipper Ship)
ティーレース(Tea race)
