Tea Strainer

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Tea Strainer(ティーストレーナー)は紅茶の抽出時に茶葉を濾(こ)すための小型の濾過器具で、free extraction(自由抽出)の器具です。ポットからカップへ紅茶を注ぐ際、カップに茶葉が入るのを防ぐために使用されます。

シルバープレート製tea strainer(ドリップスタンド付き)
シルバープレート製tea strainer(ドリップスタンド付き)
19世紀ソリッドシルバー製 tea strainer
19世紀ソリッドシルバー製 tea strainer
tea strainer シンプルなフィルターとスタンドのセット(1916年製)
tea strainer シンプルなフィルターとスタンドのセット(1916年製)
フラワーレース装飾のtea strainer
フラワーレース装飾のtea strainer

使用目的と機能

リーフティーを淹れる際の基本器具として、カップサーブ時の茶葉除去に用います。主にオーソドックス製法の茶葉(大ぶりで抽出後も形が残る)を前提とした道具です。

構造・材質

一般的に金属(ステンレス、銀、真鍮)または陶器・樹脂で作られています。日本では金属製がほとんどです。一体型(カップに乗せるタイプ)と受け皿付き(滴受け)タイプがあります。

現代ではティーポットに内蔵される“インフューザー型”や、ティーバッグの普及によって、外付けtea strainerの使用頻度は減少傾向にありますが、編み目の細かい、出来が良いtea strainerで漉した紅茶は本当に美しい水色になります。

歴史的背景

19世紀英国のTea Service(ティーサービス)において一般化しました。当時は茶葉をポットから直接注いでいたため、サーブ時にtea strainerを添えるのが作法となったのです。

銀製のtea strainerは贈答品や格式の象徴ともされ、富裕層のティーセットに欠かせない存在だった。

類似器具・区別語

・Infuser(インフューザー)
茶葉を内部に閉じ込めて浸出する器具です。ポットの内部または直接カップ内で使用します。

・filter(フィルター)
より広義で、「濾す機能全般」を指します(ペーパーフィルター等含む)。

・tea bag(ティーバッグ)
tea strainer不要の使い捨て浸出方式。戦後以降の大量消費型製品です。
※tea bagの安全性については『ティーバッグの安全性 (1)』をぜひ参照してください。

tea strainerと所作

民俗・儀礼的側面

アフタヌーンティー文化における“作法の一部”として、tea strainerを使用する所作は「丁寧なもてなし」の象徴でもあります。

英国の高級ホテルやサロンでは、今も銀製tea strainerが提供されることが多いです。

所作の流れ(正統的なティーサービス)

  1. 左手でティーカップの上にtea strainerを静かに構える。
  2. 右手でティーポットを傾け、紅茶を静かに注ぐ。
  3. tea strainerが受け止めた茶葉を確認し、注ぎ終えたらtea strainerを外す。
  4. (銀器の場合は)専用の受け皿にtea strainerを移す。

この所作に込められた文化的意味

  1. 所作の洗練=もてなしの精神
    片手では済まない丁寧な動作は、ゲストへの敬意を示す演出となっています。
  2. 女性の教養と所作教育
    ヴィクトリア時代以降、家庭教育で「正しいティーサービス」は婦人教養の基礎とされていました。
  3. tea strainerの位置づけ
    ただの道具ではなく、“間を整える小道具”として美意識に組み込まれていました。

備考

「ティーストレーナー」は和製外来語的に定着しており、英語圏でも “tea strainer” と表記するが、近年では “infuser” のほうが日常使用では多く見られるようです。

日本語では「茶こし」「茶漉し」と訳されますが、急須内の網との混同に注意して下さい。

関連項目

Tea Infuser(ティーインフューザー)
Tea Service(ティーサービス)
Afternoon Tea(アフタヌーンティー)
Teaware(茶器)
free extraction(自由抽出)
controlled extraction(制御抽出)