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Tea Strainer(ティーストレーナー)は紅茶の抽出時に茶葉を濾(こ)すための小型の濾過器具で、free extraction(自由抽出)の器具です。ポットからカップへ紅茶を注ぐ際、カップに茶葉が入るのを防ぐために使用されます。




使用目的と機能
リーフティーを淹れる際の基本器具として、カップサーブ時の茶葉除去に用います。主にオーソドックス製法の茶葉(大ぶりで抽出後も形が残る)を前提とした道具です。
構造・材質
一般的に金属(ステンレス、銀、真鍮)または陶器・樹脂で作られています。日本では金属製がほとんどです。一体型(カップに乗せるタイプ)と受け皿付き(滴受け)タイプがあります。
現代ではティーポットに内蔵される“インフューザー型”や、ティーバッグの普及によって、外付けtea strainerの使用頻度は減少傾向にありますが、編み目の細かい、出来が良いtea strainerで漉した紅茶は本当に美しい水色になります。
歴史的背景
19世紀英国のTea Service(ティーサービス)において一般化しました。当時は茶葉をポットから直接注いでいたため、サーブ時にtea strainerを添えるのが作法となったのです。
銀製のtea strainerは贈答品や格式の象徴ともされ、富裕層のティーセットに欠かせない存在だった。
類似器具・区別語
・Infuser(インフューザー)
茶葉を内部に閉じ込めて浸出する器具です。ポットの内部または直接カップ内で使用します。
・filter(フィルター)
より広義で、「濾す機能全般」を指します(ペーパーフィルター等含む)。
・tea bag(ティーバッグ)
tea strainer不要の使い捨て浸出方式。戦後以降の大量消費型製品です。
※tea bagの安全性については『ティーバッグの安全性 (1)』をぜひ参照してください。
tea strainerと所作
民俗・儀礼的側面
アフタヌーンティー文化における“作法の一部”として、tea strainerを使用する所作は「丁寧なもてなし」の象徴でもあります。
英国の高級ホテルやサロンでは、今も銀製tea strainerが提供されることが多いです。
所作の流れ(正統的なティーサービス)
- 左手でティーカップの上にtea strainerを静かに構える。
- 右手でティーポットを傾け、紅茶を静かに注ぐ。
- tea strainerが受け止めた茶葉を確認し、注ぎ終えたらtea strainerを外す。
- (銀器の場合は)専用の受け皿にtea strainerを移す。
この所作に込められた文化的意味
- 所作の洗練=もてなしの精神
片手では済まない丁寧な動作は、ゲストへの敬意を示す演出となっています。 - 女性の教養と所作教育
ヴィクトリア時代以降、家庭教育で「正しいティーサービス」は婦人教養の基礎とされていました。 - tea strainerの位置づけ
ただの道具ではなく、“間を整える小道具”として美意識に組み込まれていました。
備考
「ティーストレーナー」は和製外来語的に定着しており、英語圏でも “tea strainer” と表記するが、近年では “infuser” のほうが日常使用では多く見られるようです。
日本語では「茶こし」「茶漉し」と訳されますが、急須内の網との混同に注意して下さい。
関連項目
Tea Infuser(ティーインフューザー)
Tea Service(ティーサービス)
Afternoon Tea(アフタヌーンティー)
Teaware(茶器)
free extraction(自由抽出)
controlled extraction(制御抽出)