イエローラベルという記憶

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📝 概要

イエローラベル(Yellow Label)は、かつて日本の家庭で最もよく見られた紅茶の一つでした。輸入自由化以前の戦後期において、紅茶=イエローラベルという認識が定着するほど、圧倒的な存在感を放っていました。

イエローラベル

📦 1. 黄色い缶とレストランブレンドの謎

イエローラベルの缶には、なぜか「Restaurant Blend」と印字されていました。家庭用であるにもかかわらず、“どこのレストランかは謎”という不思議な文句。これは、家庭に“外食文化”のような高級感を持ち込むハッタリ戦略とも解釈されます。また、当時の広告やパッケージには、レストランやホテルにふさわしい「本格紅茶」というイメージが意図的に与えられていました。

🎯 2. 当たり付きティーバッグと遊び心

昭和中期、イエローラベルの一部商品には「当たり付き」のティーバッグが封入されていました。当たりが出ると景品がもらえる仕組みで、紅茶に“くじ引き”的な楽しみ”を付加し、子どもから大人まで注目を集めました。このような遊び心は、まだ贅沢品だった紅茶を家庭文化に根付かせる工夫でもありました。

3. セイロン茶葉と安定供給

輸入自由化以前、日本で流通していた紅茶は政府の指定銘柄に限られており、イエローラベルの茶葉はほぼセイロン産(現スリランカ)でした。このセイロンティーは、味と香りの安定性で支持され、贈答用・家庭用ともに重宝されました。

🛍️ 4. 贈答文化と黄色い缶

1970年代後半には、イエローラベルのティーバッグセットがお歳暮やお中元として流通し、“黄色い缶”は贈答文化の象徴となりました。当時、贈答用紅茶の圧倒的シェアを誇っていたのがTWININGSであり、イエローラベルはそれに次ぐ「もらって嬉しい紅茶」として存在感を放ちました。

🗃️ 5. 廉価イメージと現在

やがて、輸入自由化の波により紅茶の選択肢が増加し、イエローラベルは「日常用の紅茶」「廉価版の紅茶」として位置づけられるようになりました。しかし、それでもなお懐かしさと安定感を持ち続けている点に、戦後紅茶文化の根深さを見ることができます。

📚 まとめ

イエローラベルは単なるブランドではなく、日本の戦後紅茶文化に深く根付いた生活記憶の象徴でした。黄色い缶、レストランブレンドの文句、当たり付きティーバッグ──それらは「紅茶とは何か」という問いへの、日本ならではの答えの一つだったのかもしれません。

🔗 関連項目

🌟 イエローラベルとは、“紅茶のある暮らし”の記憶装置であった。