Ceylon Tea (2)

目次

3. Ceylon tea の産地

標高による分類

High Grown Tea (ハイグロウンティー)

標高4,000フィート(約1,300m)以上の高地で栽培された紅茶。水色は明るく、バラのような香りがあり、爽やかで渋みが強いのが特徴です。

代表的な産地には、Nuwara Eliya (ヌワラエリヤ)、Uva (ウバ)、Dimbula (ディンブラ)、Uda Pussellawa (ウダプセラワ)、Kandyの一部などの高地地域があります。

Medium Grown Tea (ミディアムグロウンティー)

標高2,000~4,000フィート(約670~1,300メートル)の中間地帯で栽培される紅茶です。バランスの取れた風味が特徴で、芳しい香りとやや渋めの味が特徴です。渋みと甘みが絶妙に調和していて、どんなシーンでも楽しめる万能な紅茶です。

代表的な産地には、Kandy (キャンディ)、Dimbulaの一部などがあります。

Low Grown tea (ローグロウンティー)

標高2,000フィート(約670メートル)以下の低地で生産される紅茶です。スリランカの紅茶生産量の約半分がこれに当たります。一般に水色が濃く、濃厚な味で、香りが少なめです。

代表的な産地にはKandyの一部、Ruhuna (またはRuhunu /ルフナ)、Sabaragamuwa (サバラガムワ)があります。

以上が代表的なCeylon teaの産地になります。この産地の中のどの茶園かでまた味や香りが違ってくるのです。Sri Lankaの茶園の中には、緑茶等の紅茶以外のお茶も扱うようにして製品範囲を広げている所もありますが、Ceylon teaのほとんどは紅茶です。

全体をまとめると以下のようになります。

Ceylon teaの代表的な産地の地図
Ceylon teaの代表的な産地の地図
by 森のくま
Ceylon teaの標高による分類
Ceylon teaの標高による分類
by 森のくま

4.各産地の特徴

各産地についてです。
尚、主な茶園紹介の所なのですが、くまは行ったことがないので、もし「ここを外しちゃダメ」というような所や「ここはそんなに重要ではないよ」というような所があったらぜひ教えてください。よろしくお願いします。

High Grown Tea

Uva

同じく標高が高いインドのダージリン地方と似た環境で、Uva (ウバ)も日中と夜間の激しい気温差によって何度も発生する霧と直射日光が特徴的な甘い香りと上質な味を生みます。

7〜8月は、モンスーンが山の斜面にかかっている霧を晴らして一気に茶葉を乾燥させ、「ウバフレーバー」と呼ばれるメンソールのような爽やかな香りと花のような香りとフルーティーで甘さがある香りが混ざった甘く、刺激的な香味の茶葉が作られます。また強めの渋味をもっている個性の強い紅茶です。

水色は明るい紅真色からオレンジ色で濃く、特に上質なものは、カップに注いだ時、茶液の淵がカップの白さと重なって金色の輪を形成しているように見えるゴールデンリング (Sri Lankaでは「イエローリング」と呼ぶようです)が見られます。

主な茶園
・Aislaby Tea Estate (アイスラビー茶園)
・Bombagalla Tea Garden (ボンバガラ茶園)
・Dickwella Estate (ディックウェラ茶園)
・Highlands Tea Estate (ハイランズ茶園)
・Shawlands Estate (シャウランズ茶園)
・St. James Estat (セントジェームス茶園)

Uva Halpewatte tea estate by adobe
Uva Halpewatte tea estate by adobe

Uda Pussellawa

Uda Pussellawa (ウダプセラワ) はSri Lanka中央山岳地帯の東側の自然保護区の原生林に囲まれたエリアになります。かつてはUvaの一部とされていましたが、Uda Pussellawaとして一部が独立して誕生した小さなエリアです。一部の地域では、Uvaよりも標高が高い所もあります。多くの地域でUvaと同じように7〜9月に乾季を迎え、この時期にQuality Seasonを迎えます。

一年を通して収穫されますがQuality Seasonはモンスーンの影響で2回訪れます。Nuwara Eliyaに隣接する場所では1〜2月、Uvaに隣接する場所では7〜8月がQuality Seasonになります。

爽やかで締まった渋味としっかりといた味わいで、バラや微かなメントール香を含むフルボディーの紅茶が生産されています。水色は淡い褐色から赤褐色です。

主な茶園は以下のような所があります。

・Alma Tea Factory (アルマ茶園)
・Dilmah Tea Estate (ディルマー茶園)
・Kirklees Estate (カークリース茶園)
・Luckyland Tea Estate (ラッキーランド茶園)
・Liddesdale Tea Factory (リデスデイル茶園)

Uda Pussellawa by AllTrails
Uda Pussellawa by AllTrails

Dimbula

Dimbula (ディンブラ)はSri Lanka中央山脈の西側斜面に位置するエリアで、Uvaの反対側となる高地です。高地でありながら、日中は30℃近くまで気温が上がり、モンスーンの影響もほとんど受けないので、年間通じて安定した品質の茶葉が生産されています。

一応、ここではHigh Grown Teaの項で解説していますが、一部はMedium Grown Teaに分類される起伏に富んだエリアです。

Sri Lankaで最も栽培面積が広く、生産量も最大の産地で、1870年代にSri Lankaで最初に茶の木が植えられたのはDimbulaのMedium Grown Teaに分類される場所だったと言われています。Quality Seasonはモンスーンが吹く1~2月です。

Dimbulaの紅茶は強い個性がないことが特徴で、爽やかな渋み、コク、優雅な香りと甘みを持っていて紅茶らしい香味のバランスに優れた紅茶です。マイルドな味わいで大変飲みやすい紅茶です。特にクオリティーシーズンの茶葉は、バラを思わせるような香りと 「brisk (ブリスク)」 と表現される紅茶らしい「しっかりしたボディを備えつつ、生き生きとした強い渋味」をもちます。

Dimbulaには80近い茶園があります。主な茶園には以下のようなところがあります。

・Bearwell Estate (ベアウェル茶園)
・Brunswickブランズウィック茶園
・Kotiyagalla Estate (コッティヤガラ茶園)
・Laxapana Tea Estate (ラクサパナ茶園)
・Logie Estate (ロジー茶園)
・Loinorn Estate (ロイノルン茶園)
・Somerset Tea Estate (サマセット茶園)
・Stockholm Estate (ストックホルム茶園)

Nuwara Eliya

Nuwara Eliya (ヌワラエリヤ)は、19世紀後半にその土地で紅茶栽培を始めたイギリス人によって開発された避暑地で、Scotlandの街を彷彿とさせる建物が多く残され、Little Englandとも呼ばれています。美しい庭園やチューダー様式の木造ホテルや重厚な石造りのバンガロー、アジア最古のゴルフ場や植物園、さらにメインストリートにはコロニアル様式の建物が数多く見られます。町の中心近くに残るピンクの郵便局は1828年製で一番古いものです。

UvaとDimbulaに挟まれたSri Lanka中央山脈の最も高い所、つまりSri Lankaで一番標高が高い所に位置しています。年間平均気温が16℃前後のエリアですが、朝夕と日中の気温差が大きい為に霧が多く発生するので、霧に包まれた高原地帯といえます。他のHigh Grownと比べて、茶園数が非常に少なく、生産量はSri Lanka全体の1.5%しかありません。Little Englandと呼ばれるほど、イギリス文化が移植され、避暑地として発展した土地と考えれば茶園が少ないのも納得は出来ます。なのでこうした物理的な事情で希少なものとされています。

一年を通して収穫されますが、モンスーンの影響を受ける1〜2月、6〜7月がQuality Seasonです。

Nuwara Eliyaの紅茶は一言で言えば緑茶に近いです。なので日本人には飲み慣れた感じがすることが多いと思います。Quality Seasonの茶葉はDarjeeling (ダージリン)に似た香りを持つので「Ceylon teaのシャンパン」と呼ばれることもあります。水色は明るく赤みがかったオレンジやゴールドに近い色になります。

Nuwara Eliyaの主な茶園としては以下の所が有名です。

・Concordia Estate Tea Factory (コンコルディア茶園)
・Court Lodge Estate (コートロッジ茶園)
・Inverness Tea Estate (インバネス茶園)
・Kenmare Tea Estate (ケンマヤ茶園)
・Lovers Leap Tea Estate (ラバーズリープ茶園)
・Mahagastotte Tea Garden (マハガストッテ茶園)
・Pedro Tea Estate (ペドロ茶園)

Medium Grown Tea

Kandy

Kandy (キャンディ)はJames Taylorが紅茶の栽培を始めて、Sri Lanka最初の茶園を作った地です。文字通り「Ceylon tea発祥の地」なのです。Assam種のチャノキを栽培したのが最初だったので、Kandyでは今でもAssam種がメインで栽培されています。

標高がRuhunaの次に低いので、温暖でモンスーンの影響を受けにくい気候です。その結果、1年を通して生産量と品質が安定しています。逆に言えばQuality Seasonがないということになります。

そう考えるとTaylorはおそらく偶然と周りの環境で決めたのでしょうが、最初にチャノキの栽培に挑戦するのには最適な場所を選んでいたことになります。Taylorは「紅茶と結婚した」と言われるほど紅茶を愛していましたが、紅茶の方もTaylorのことを愛していたのかもしれないと、こうした巡り合わせなどを知るに連れてくまは思うようになりました。

そしてくまはそれと同時にだんだんと熱狂的な「Taylor信者」になっていくのでした。(なんてチョロいくまなのでしょう……)

インドのAssamが重い渋みがある紅茶なのに対して、Kandyの紅茶は同じAssam種でも渋みが少なく、香りも控えめです。その為、ストレートでも、ミルクティーでも、レモンティーでもあいます。もっと言えばさまざまなアレンジティーのベースとするのに適しているといえます。くまはフルーツティーなどもKandyのお茶が一番あうのではないかと思っています。

あと、渋みが少ないということは紅茶に含まれるタンニンが少ないということでもあります。タンニンが少ないと紅茶を冷やしたときに起こる白い濁り (cream down / クリームダウン、ミルクダウンとも言います)が出来にくいのです。ここから「Kandyの紅茶はアイスティーに向く」と言わてれます。cream downが起こる仕組みなどもしっかりお話するととても面白いのですが、ここでは非常に残念ですが趣旨から離れすぎてしまうので後の機会にすることにします。タンニンの化学反応とか面白いんですよ、と化学の好きなくまは思いを巡らすのでした。

The Loolecondera estate was the first tea plantation estate in Sri Lanka (Ceylon)
started in 1867 by Scotsman James Taylor, it is situated in Kandy, Sri Lanka.
テイラーが初めてチャノキを植えて成功したルーラコンデラ農園

Kandyの主な茶園

Craighead Tea Estate (クレイグヘッド茶園)
Dartry Valley Tea Factory (ダートリーバレー茶園)
Doombagastalawa Estate (ドゥーンバガスタラーワ茶園)
Harrow Tea Estates (ハロー茶園)
Kenilworth Tea Estate (ケニルワーズ茶園)
Rothschild Tea Estate (ロスチャイルド茶園)
Windsor Forest estate (ウィンドソーフォレスト茶園)

Low Grown tea

Ruhuna (ルフナ)とSabaragamuwa (サバラガムワ)は標高の低い地域で、低地で栽培された紅茶を生産しています。どちらも風味が豊かで、濃いオレンジや赤の水色で、エリアによって異なりますが、蜂蜜、チョコレート、キャラメル等の香りがします。

この地域で栽培された紅茶はほとんどがOP (Orange Pekoe / オレンジペコー)やFOP (Flowery Orange Pekoe / フラワリーオレンジペコー)として加工されます。

Ruhuna

Ruhuna (ルフナ)はSri Lanka南部の熱帯雨林にあり、広いエリアに茶園が点在するようにあります。エリアが広いだけに収穫量も多く、Sri Lanka全体の生産量の半分以上がRuhunaの紅茶です。

今までご紹介してきた産地が全てそのエリアの土地の名前だったのに対して、Ruhunaは地名ではありません。紀元前にSri Lanka南部を治めていた古い王国の名前だとよく出ています。ただ、くまは王国の名前はアヌラーダプラ王国で、その暫定的 (58年くらい)な首都の名前がRuhunaだったのではないかと思っています。この辺はもう少し調べてみて、新しいことがわかったら修正していきたいと思っています。また、RuhunaはSri Lankaの公用語のシンハラ語で「南」という意味を持っています。

現在の行政区で表すと、Sri Lanka南端部のKalutara (カルタラ)、Galle (ゴール / ガルとも)、Matara (マータラ)の各県がRuhunaにあたる場所です。茶園が存在するエリアは沿岸の平地にある茶園から南端のSinharaja Forest Reserve (シンハラジャ森林保護区)の近くの熱帯雨林地帯までの広範囲に及びます。

どこも高温多湿の環境なので、茶葉の成長が早く、だいたい1週間ごとの収穫が可能で、年に14~15回の収穫が行われます。これもこのエリアの生産量の多さの理由です。Quality Seasonは特にありませんが、4~5月と10~11月の雨季は生産量が増えます。

日本ではHigh Grown TeaやMedium Grown Teaが好まれる傾向があって(単に知らないだけという説もありますが……)、Ruhunaの紅茶はあまりなじみがありませんが、中近東等ではRuhuna紅茶の需要が高いです。お香に使う樹脂等を入れて飲む飲み方などまである地域ではRuhuna紅茶はアレンジしやすい紅茶なのかもしれません。

水色はかなり濃い赤褐色で、とても強い香りを持ちます。渋みは少なめで、若干の甘みを感じます。深いコクとスモーキーフレーバーが特徴です。砂糖やさまざまなハーブと共に淹れるアラブ式の紅茶の飲み方などには、そうしたほかの香りや味に負けない、Ruhunaの紅茶は人気なのです。

Kelani Tea Estate (ケラニ茶園)
Kiruwanaganga Estate (キルワーナガンガ茶園)
Lumbini Estate Tea (ルンビニ茶園)
Pothotuwa Tea Estate (ポツトワ茶園)
Queensberry Estate (クイーンズベリー茶園)
Gunawardena Estate (グナワルデナ茶園)

Sabaragamuwa

Sabaragamuwa (サバラガムワ)は元々はRuhunaの一部で、元々はRuhuna紅茶として出荷されていました。2000年代になってからこのエリアの茶葉の生産量が大きく増えてきたことと、味の違いからRuhuna北部と南部に便宜上分けていたのですが、その北部が独立する形で一つの産地となったのがSabaragamuwaです。新しいので認知度はまだ低いですが、元々がRuhuna紅茶だったエリアなので、中東等では人気が高く、同地域に多くが輸出されています。

日差しの強い熱帯雨林気候で、周辺にジャングルが広がっているエリアに茶園が広がっています。Ruhunaと同じで1年中安定して質量共に収穫できるので特にQuality Seasonはありません。

くまは飲んだことがないので調べた話になってしまって恐縮なのですが、深いコクとキャラメルや蜂蜜のような甘い香りが特徴なのだそうです。濃厚でしっかりした味わいとほろ苦さが感じられるそうですが、これはたぶん、Ruhuna紅茶の特徴を更に強めた感じなのかな、と想像しています。水色は写真で見た感じでは濃くて深い真紅色でした。

Ruhuna紅茶がミルクティー向きなので、Sabaragamuwa紅茶も同じだと思います。ただ、話によると、Ruhunaよりスモーキーさが少ないとのことなので、ストレートでもそれなりに美味しいのではないかと想像しています。

Sabaragamuwaの有名な茶園は以下の所のようです。

Sithaka Tea Factory (シタカ茶園)
Suduwelipothahena Super Estate (スドゥウェリポタヘナスーパー茶園)
New Vithanakande Tea Estate (ニュービターナカンダ茶園)
Nelunwatte Estate (ネルンワッタ茶園)

以上長々とお付き合いいただきありがとうございました。本当はもっと写真などを入れたかったのですが、版権の問題であまり入れられませんでした。今後、版権交渉などをしながら、修正したり、加えたりという感じで充実させたいと思います。

参考サイト

以下のサイトを参考にさせていただきました。
Ceylon Tea Museum:全体像をつかんだりイメージをたしかにしていくのに役立ちました。調べていく上での指針になるサイトです。
Lankapura – Historic Images of Sri Lanka:貴重な歴史的な写真が多く参考になります。ただし、歴史や地理などの全体像を大雑把で良いので身につけてからでないと真価は発揮してくれないかもしれません。
History of Ceylon Tea:特に茶園のデータは本当にお世話になりました。このサイトの「Tea Estate」は極めて貴重なデータです。
【ディルマ公式】紅茶通販サイト|ルイボス・緑茶・ハーブティー:このサイトは通販サイトですが、ここから「ディルマについて」のところを読むとスリランカと紅茶のつながりが具体的にイメージしやすくなります。英文サイトの方がより詳しいですが、日本語サイトでもイメージをつかませてくれると思います。

その他色々なサイト様を参考にさせていただきました。いずれ、分類してリンク集が作れたら良いな、という無謀なことをちょっと考えています。
ありがとうございました。