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この記事を書くに当たって共栄製茶株式会社様に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
MINTONについて
陶磁器メーカー
Queen Victoria (ヴィクトリア女王)に『世界で最も美しいボーンチャイナ』と称されたMINTON (ミントン)は、1793年に腕の良い銅版彫刻師であったThomas Minton (トーマス・ミントン)が創業し、その後180年にわたって家族経営が続けられました。

1820年、新しく考案したボーンチャイナの茶器装飾のためにThomas Mintonが雇い入れていた絵付師は50人でした。1840年にQueen Victoriaが Prince Albert of Saxe-Coburg and Gotha(アルバート公)とご成婚されました。その折に朝食用茶器セットをMINTONよりご購入になりました。
1870年になる頃にはMINTONの従業員数は1,500人にまで増加しました。 MINTONの顧客リストには、Queen Victoriaのほか、ヨーロッパの王室、日本の皇室、インドのマハラジャ、各国大使らが名を連ねました。
1948年にJohn Wadsworth (ジョン・ワズワース)によるデザインのHaddon Hall (ハドンホール)が発表されます。


1973年にRoyal Doulton (ロイヤルドルトン)の傘下に加わり、MINTONの名でテーブルウェアや装飾陶磁器製品を作り続けていましたが、2009年に日本から撤退、2015年Royal Doultonがロイヤルコペンハーゲンを所有するフィンランド企業、Fiskars (フィスカース)に買収され、WWRDグループホールディングスの一員となり、その時にMINTONブランドは廃止されました。このようにしてMINTONは消えていったのです。
※陶磁器メーカーとしてのMINTONについて語り始めるとくまは際限が無くなるのと、ここでの趣旨からはかなり離れてしまうのでできるだけ簡単にまとめました。
MINTONの紅茶
MINTON Teaの終了
MINTON Teaはこの陶磁器メーカーによって作られたティーブランドです。ただ、MINTON自体が無くなってしまったので資料が乏しく、MINTONの紅茶の最初期の詳しいことはよくわかりません。
ただ、MINTON Teaの缶のデザインがHaddon Hallだったことから、どんなに早くても1950年以降なのはまちがいありませんし、直後ということはまずないと思います。はっきり言えるのは陶磁器メーカーとしてのMINTONが無くなるのと共に陶磁器メーカーのMINTONが直接関わっている紅茶も無くなってしまいました。
MINTON Tea made in NIPPON
しかし、1996年からMINTON Teaを開発販売していた日本の老舗製茶会社である共栄製茶株式会社様 (以下「共栄製茶」とさせて頂きます)がティーバッグを中心にライセンスブランドとして現在も販売しています。
共栄製茶は、1836年京都・宇治創業の老舗製茶ブランドです。1940年に森半製茶所と松本軒茶舗が共同で共栄製茶株式会社を設立し、緑茶商品(煎茶や抹茶など)を中心に、紅茶、コーヒー商品も発売しています。
共栄製茶のMINTON Teaの茶葉は今でも輸入茶を使ってブレンドされているとのことです。ちなみに家にあるMINTON Teaのリーフティーの缶には製造年が2000年と表記されているし、当時の製造者は共栄製茶となっています。
さて、更に調べたところ「MINTONの紅茶の販売は1996年から開始」ということがわかりました。と、いうことは、そもそもMINTON Tea自体が最初から共栄製茶で作られていたと言うことなのではないでしょうか。事実、共栄製茶のHPにはその沿革の所に「1996年(平成8年)9月ミントンティーを開発、販売」とあります。1996年といえば、MINTONがまだRoyal Doulton傘下の時期です。そしてMINTON自体が紅茶のブレンドをしたりという紅茶事業に乗り出したということはまず考えられません。
また、Minton Teaの日本での展開において最初は片岡物産が代理店だった事がわかっています。しかし片岡物産はメーカーではありません。どこかに外注していなければおかしいことになります。そうなると国内の信頼のおける製茶メーカーに頼るであろうことは想像に固くありません。しかし、日本の製茶メーカーが海外の紅茶を色々な産地からいきなり輸入する業務ができるとも思えません。その部分は片岡物産が担っていたのではないでしょうか。
と、いうことは、片岡物産を間に入れながら結果的にMINTONが紅茶に進出するに当たってパートナーとして共栄製茶を選んだということになったと考えるのが自然です。そうであれば、片岡物産から共栄製茶への移行もスムーズに行われたはずです。もちろん、海外茶葉のルートもその時に移行したのでしょう。これなら話が繋がります。だとすれば、MINTON自体は無くなってしまいましたが、MINTON Teaはオリジナルが今も生きているということになります。
MINTON Teaはオリジナルといえるのか
そこで共栄製茶に確認をしたところ、残念ながら明確なお返事は頂けませんでした。ですが「MINITON」ブランドも時代とともに変遷を経ており、折々に商品内容の変更、展開・集約などを行っていらっしゃるとのこと。そしてその為、開発当初と現行品との間には若干差異があるとのことでした。
しかし、どんなものでも改良が加えられていくのは当たり前のことで、どんなものでもより完成形を目指していくことは当然だといえます。何十年か続いてきたものの中にはたしかに変わってはいけないものもあります。しかし、最初のレシピから一切変えないことが果して誠実だと言い切れるでしょうか。ましてやMINTONは陶磁器メーカーであり、その作品であるティーセット等にふさわしい紅茶を、という思いから作られたものであるはずです。ならば、紅茶のレシピに改良が加えられていくということは何よりも紅茶に対して誠実な態度であり、愛飲家にとってもありがたいことだと断言できます。と、いうことは現行品のMINTON Teaは発売初期の頃のレシピと仮に多少の差異があったとしても(実際あると思います)、それは製品としての誠実さであり、MINTON Teaが今も生きているということの証左でもあるといえます。ですから現行品として入手できるMINTON Teaは、まぎれもなくオリジナルのMINTON Teaである、と言えるのだとくまは思います。
くま家にあるMINTON
Original Blend
インドのDarjeeling地方とAssam地方の茶葉のブレンド。香りの良いダージリンと、しっかりした甘みとコクが感じられるアッサムの茶葉のオリジナルブレンドです。どちらかというとアッサムの方が強い印象です。水色は上手に淹れると濃いめで美しい琥珀色になります。多少渋みが残る感じがしますが、そこまで気になるほどではありません。かなり飲みやすい紅茶だと思います。
落ちついて飲むのに適した味と風味なので、Afternoon TeaやAfter-dinner teaに向いているとくまは思います。もちろん、ブランデーの香りを加えたNight Teaにも向いていると思います。
(紅茶の時間について詳しくは『紅茶の歴史(1)ヨーロッパと紅茶 イギリスのお茶の時間』を参照してください)

Apple
スリランカ、ケニア、インドの茶葉のブレンドにリンゴの香りを加えたものです。ティーバッグを開けるとかなり強く甘酸っぱい香りがします。
一口目で甘酸っぱいリンゴの香りが広がります。ただ、そんなに酸味が強いわけではなく、甘みを感じる、ホッとする感じのフレーバーティーです。リンゴの香りに最適な茶葉を厳選しているのだと思いますが、香りが強すぎず、弱すぎず、味ともしっかり調和していてフレーバーティーの本場のフランスのフレーバーティーと比べても遜色がないと思います。ただ、ちょっと味が薄い感じはあるので濃いめに出して頂く方が良いかもしれません。もちろん、ストレートで頂くべきです。

Uva Ceylon
スリランカのハイグロウンティーであるウバの茶葉です。
ウバ茶はスリランカで生産されるセイロンティーの中でも希少なもので、世界三大紅茶のひとつです。
実際に淹れてみると明るい水色で、くまが飲んだ感じではコクがしっかりありますが、渋み、苦みともにそんなになくメントールっぽい清涼感もあり、後味も爽やかでスッキリとした感じでした。香りは少し甘い香りがしました。断然ストレートで頂くのがお勧めですが、ミルクティーが好きな人は少量ミルクを入れてもいいと思います。この値段でこの味、この風味なら絶対にお買い得です。

Earl Grey
スリランカの茶葉にベルガモットの香りを加えたものです。
くまが頂いて最初に思ったのは「オーソドックスなEarl Greyだな」ということです。香りもしっかりとしていますし、セイロンティーらしいコクもあります。渋みはほとんどありませんが、若干苦みを感じました。もっとも、ティーバッグの状態での香りと淹れたあとの香りがちょっと違っている感じがして、そこが少し残念でした。
ストレートティーで頂くのが一番この紅茶の味と香りを楽しめると思いますが、アイスティーにしても美味しかったです。甘みが欲しい場合は砂糖よりもハチミツの方があうと思います(くまは甘くしませんが、甘くした人のを味見させてもらいました)。

Royal Milk Tea Blend
コクのあるインドのアッサムとコクや甘みがあり香りが強いセイロンのローグロウンティーのブレンドのようです。アッサムがメインになっていると思われます。香りはアッサムのコクのある深い香りで、味も同様です。ただ、セイロンティーが加わっているのでまろやかな感じがします。
実際に頂いてみると、強いコクと芳醇な香りのアッサムに、爽やかな香りを感じるセイロンなどが組み合わされている感じで、しっかりとした奥深い香りがあります。ただ、普通に淹れたらそこまで強い香りではないので、ミルクティーにする場合は濃いめに出した方が良いと思います。濃いめに出した場合なら臭みのある日本の牛乳にも負けない紅茶だと言えると思いました。基本的に外国でブレンドされたものは、ごく一部の例外を除いては低温殺菌で牛乳の臭みが出ない牛乳を前提にブレンドされているので、日本の高温殺菌中心の臭みのある牛乳を入れると香りや風味が負けてしまうのです。その点、この紅茶は濃く出せば、その弱点をクリアしていて美味しく頂けると思います。

Darjeeling
インドのダージリン地方のOrange Valley Tea Estate (オレンジバレー茶園)の茶葉にこだわっている紅茶です。
Orange Valley Tea Estateは1865年に設立され、その茶畑は、オレンジの木々に囲まれている自然豊かな茶園です。イギリス人プランターによって始められた茶園で、元来この “Valley(谷)” で採られていた“Orange(オレンジ)”が名前の由来です。
そんなに香りが強くはないのですが、ほのかに花のような香りがあって、非常にDarjeelingらしくて素晴らしいです。渋みが控えめなので紅茶を飲み慣れていない人でも美味しく頂くことが出来る紅茶だと思います。ただ、もうちょっと味が強ければ良いのに、と個人的に凄くもったいない気がしました。くまはこれもAfternoon TeaやAfter-dinner teaあるいはNight Tea (出来ればブランデーの香りをくわえて)といったタイミングで頂くのが良いと思います。あとは食後のいっぱいにも向いていると思います。

この他にMINTON Teaには共栄製茶の独自開発による「MINTON 和紅茶シリーズ」があります。これも美味しいのですが、これについてはまた別項で日本の紅茶をきちんと扱いたいのでその時にあらためてご紹介したいと思います。
