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🪴肥料
🌱肥料一般について
肥料と言うとすぐに有機肥料か、化学肥料かという話になりがちですが、ここではそういうくくりではなく「肥料そのもの」について見ていきたいと思います。
そもそも特定の肥料を施肥すると、農作物にダイレクトに影響するという発送が間違いであることを最初に理解する必要があります。たとえば、肥料にイカや魚を使ったら生臭いお茶ができるとか、肥料として肥溜めを使ってた時代は、あらゆる農作物が大小便臭の香りだった事になってしまいます。でも実際は決してそのようなことはありません。今でも有機肥料として鶏糞や牛糞を使いますが、作物が牛糞臭い、などという騒ぎになったことはありません。
これとまったく同じ理由で有機肥料か化成肥料かを機械的に論じるのは間違っているのです。私たちが口から食べ物を直接摂って、消化して、吸収して、分解したり合成したりしながら身体に必要なものを得るのと同様で、植物も根から養分を吸収して、光合成などをすることで植物に必要な栄養素を得ているわけですから、当たり前といえば当たり前です。たとえば、フライドポテトを毎日食べたら、その人の体臭がフライドポテトになることがないのと同じです。もっともシャンクフードばかり食べていたら身体を壊しやすいのと同じで植物もどのような肥料を与えるかで変化があるのも事実です。なので、化成肥料批判するとしたら「それが化成肥料だから」とか「天然のものでないから」などの発想で批判することはナンセンスなのです。
🌳チャノキに必要な栄養素
チャノキは永年作物ですが、葉を収穫することで化学成分が失われるので、肥料を与えないと長期に栽培するのは無理です。
チャノキの生育に必要な主な肥料成分は、窒素、リン酸、カリウム、石灰、マグネシウム、カルシウムや硫黄です。特に窒素、リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウムは下記のような働きがあるといわれていますが、消耗や流出が激しいために肥料として必要に応じて補給する必要があります。チャノキは肥料要求性が高く、肥料、特に窒素肥料を多く施用するほど旨みがのるといわれます。ところが、チャノキが吸収できる肥料分には限度があるため、肥料を必要以上に多く施用すると吸収利用率は大きく低下します。
海外の紅茶産地では伝統的に肥料を入れ過ぎると青草い香りが強まり、風味が落ちるという概念が定着してます。その為、施肥量は日本の緑茶よりもずっと少ない傾向があります。チャノキの旨味というのは日本茶の高級品にみられる海苔の香りがするようなもので、紅茶としては好まれません。紅茶はさっぱりした苦味にコクのある深い味わいと、芳醇な香りを持っている物が高級品とされるからです。
以下に主な栄養素についてまとめます。
🍃 主な肥料の種類と役割
- 窒素(N)
効果:新芽の生長を促進し、葉の収量を増やす。葉緑素の骨格をつくる。お茶の旨み成分を増す。
特性:最も重要な要素です。特に収穫頻度が高いプランテーションでは頻繁に補給が必要です。
注意:紅茶の場合、与えすぎに注意しないと品質(香り・味)が落ちることがあります。 - リン酸(P)
効果:根の生育を助け、茶樹全体の健全な成長を支えます。細胞分裂を促します。
施用:新植や若木の時期に特に重視されます。 - カリウム(K)
効果:病害抵抗性の向上、香気成分の形成を助けます。細胞液の浸透圧の維持や炭水化物代謝などに働きます。耐寒性を増すともいわれています。特徴:品質向上と耐寒性・耐病性に貢献。 - マグネシウム(Mg)
効果:葉緑素の合成に関与。光合成を促進。 - カルシウム(Ca)、硫黄(S)などの微量要素
効果:長期的な土壌のバランス維持、根の発育など。
🧪 有機肥料と無機肥料
有機肥料(例:堆肥、油かす、魚粉など)
土壌の保水性・通気性を改善します。持続的に効果を発揮するので、持続可能性・環境負荷の低減にも寄与します。
無機(化学)肥料
即効性があり、収量アップには効果的ですが、過剰施肥による土壌劣化のリスクがあるため注意が必要です。
📅 施肥の一般的なタイミング
紅茶の主要産地(インド、スリランカ、日本など)では、気候に合わせて数回に分けて施肥します。
春先(新芽の前)
収穫後(回復と次期の生育促進)
モンスーン期(雨季)には控えめに
有機肥料は秋に施すことも多い
🌱 特殊な施肥技術
フォリアフィーディング(葉面散布):鉄・亜鉛など微量元素を葉から吸収させる技術です。イメージとしては観葉植物の葉水に近いです。
滴下施肥:水に肥料を溶かし、滴定的に根に与える。水分管理も同時にできる。
🧭 補足 土壌pHの重要性
チャノキは pH 4.5〜5.5 の弱酸性土壌 を好みます。肥料成分の吸収効率はpHに大きく左右されるため、pH調整(硫黄や石灰の施用)が必要なこともあります。