紅茶と肥料 (3)

有機JAS

contents

実際の肥料製品名やスケジュール表、土壌分析の解釈例を、スリランカを例にとって解説します。

🌱肥料製品名(スリランカにおける例)

スリランカでは、以下のような肥料製品が一般的に使用されています。

肥料製品名(スリランカにおける例)
肥料製品名(スリランカにおける例)

📅施肥スケジュール表(年次計画の例)

施肥スケジュール表(年次計画例) スリランカ高地栽培(ハイグロウン)の例
施肥スケジュール表(年次計画例) スリランカ高地栽培(ハイグロウン)の例

🌞天候による補正モデル(シンプルな考え方)

天候による補正モデル(シンプルな考え方)
天候による補正モデル(シンプルな考え方)

📅スリランカにおける肥料計画の例

スリランカにおける肥料計画の例
スリランカにおける肥料計画の例

🌿有機JAS認証に対応した肥料管理例

有機JAS認証に対応した肥料管理例
有機JAS認証に対応した肥料管理例

以下で『有機JAS認証に対応した肥料管理例』の図の解説をします。

📅年間サイクルと主要作業

図の上部には年間の作業サイクルが表示されており、以下のようなタイミングで施肥や土壌改良が行われています。

年間サイクルと主要作業
年間サイクルと主要作業

🌱肥料の種類と使い方

図の中央には、有機JASで使用が許可されている代表的な資材とその用途が分類されています。

肥料の種類と使い方
肥料の種類と使い方

🌱土壌管理とモニタリング

図の下部には、土壌分析結果の読み方とpH調整の流れが図示されています:

理想的なpH範囲:4.5〜5.5(茶樹に適した弱酸性)
EC値(電気伝導度):施肥過剰を避ける目安(1.0以下が推奨)
補正方法:
酸性が強すぎる → 有機石灰(牡蠣殻粉など)を施す
栄養バランスの偏り → 作物の吸収傾向を元に追肥を調整

🌿JAS認証基準との関連

・右側には有機JASの規定を簡潔にまとめています:
・化学合成農薬・肥料の使用は禁止
・動植物由来の肥料のみ使用可能
・使用資材は「資材リスト」で認可されたもの
・作業記録・施肥計画の作成が必須

有機JAS
有機JAS

🕷️ハダニについて

最後に肥料とは関係ありませんが、スリランカの茶園で問題になるハダニ(mites)の主な種類と、発生時期の傾向について詳しく説明します。これは今後日本でも国産の紅茶が普及していく中で重要な参考になると思います。

スリランカで茶に被害を与える 主要なハダニの種類
スリランカで茶に被害を与える 主要なハダニの種類

📅発生時期と気候との関係(スリランカの標高帯によって違いあり)

スリランカの紅茶ダニ発生状況
スリランカの紅茶ダニ発生状況
発生時期と気候との関係(スリランカの標高帯によって違いあり)
発生時期と気候との関係(スリランカの標高帯によって違いあり)

🕷️ 主なハダニの種類(Mite Species in Tea Gardens)

  1. 赤ダニ(Red Spider Mite, Oligonychus coffeae)
    • 最も被害が大きい種。葉の裏側に寄生し、クロロフィルを吸汁。
    • 葉の黄変、早期落葉、収量の減少を招く。
  2. 茶黄ダニ(Tea Yellow Mite, Polyphagotarsonemus latus)
    • 茶葉の新芽に寄生し、歪みや萎縮を引き起こす。
    • 特に乾季に多発する傾向がある。
  3. ブリスター・マイト(Blister Mite, Brevipalpus spp.)
    • 葉の表面に水泡状の損傷を与える。見た目の品質低下

📅 発生ピークの年間サイクル(Annual Infestation Pattern)

  • 1~3月、7~9月:乾燥期に入り、赤ダニが特に多発する。
  • 4~6月、10~12月:湿度が高まり、ブリスター・マイトと茶黄ダニのリスクが増加
  • 高地(High Grown)では発生がやや抑えられ、低地(Low Grown)で深刻化

🌿 有機的・物理的対策(Organic & Physical Controls)

  • ネム油(Neem Oil)スプレー:卵や幼虫に対する天然殺虫効果。
  • 水洗い(Sprinkler Washing):乾燥を防ぎつつ、物理的にダニを洗い流す。
  • 防風林とシェードツリーの導入:乾燥防止によるハダニ忌避。

🔍 監視・早期発見のポイント(Monitoring & Early Detection)

  • ルーペや顕微鏡での葉裏観察
  • 週1回の定期的スカウティング(scouting)
  • 新芽に異常があれば即対応

🌾 持続可能な管理戦略(Sustainable IPM Approach)

  • 耐性品種の導入(スリランカでは TRFK 1, TRI 2023 など)。
  • 化学農薬のローテーション使用(有機農法では不使用)。
  • 天敵利用(例:捕食性ダニ)の試験的導入。