紅茶と香料(3)

目次

紅茶と着香

香料による着香方法

果物や花などから香りを抽出した精油(エッセンシャルオイルのようなもの。もちろん食用のもので、一般的に目にするものではありません)や香料を紅茶に吹き付けたり、混ぜたりする方法です。

ここでいう香料はフレーバーとよく呼ばれているものとまったく同じものです。香料の原料になるのは天然香料と合成香料です。 天然香料と合成香料を混ぜ合わせてフレーバーベースという香料の完成形ができます。

さまざまな香料を調合してフレーバーベースができます

紅茶に着香されるタイミングは各社、製造上のオリジナリティーがあるようですが、香りを長持ちさせるためにはできるだけ最後にした方がよいので、一般的には製造工程の最後に着香されることが多いようです。

最近では天然香料だけで着香した紅茶も出回っているようですが、価格が高い上に、香りが季節によって変化します。もちろんこれを楽しむというのも紅茶の楽しみ方なのですが、有名な紅茶メーカーなどでは、一年中同じ香りを求められるという事情があります。そこで香りの微調整ができる合成香料が大活躍をするのです。こうした香料による直香方法には大きく次の3種類があります。

1.直接茶葉に香料を混ぜる

極小量の茶葉ならば、茶葉に対して極々微量の香料を直接混ぜるという方法です。ただ、数十キロ単位になると難しいので、他の方法と組み合わせた方法(これをハイブリッド方式といいます)を使うのがほとんどです。

香料を直接混ぜる

2.有機溶剤に香料を溶かして茶葉に噴霧

食品への使用認可が下りている有機溶媒 (エタノールなど)に香料を溶かして希釈したものを茶葉に噴霧して、よくかき混ぜて香りを馴染ませます。そして、1日以上清潔な環境下で有機溶媒を揮発させるという方法です。代表的な物に「アールグレイ」や「アップルティー」があります。

香料を噴霧

3.香料カプセルを混ぜる

これはかなり化学的な方法で、ゼラチンや寒天といった親水性のゲル化剤を材料にした極小のカプセル (マイクロカプセル) に香料を染み込ませたり、閉じ込めたりしたものを茶葉に混ぜる方法です。直接茶葉に香料をつけるわけではないので、香料の香り成分が飛んでしまったり、酸化したりということを相当防ぐことができます。

富士フイルムHP マイクロカプセルの説明を参考にくま製作

香料以外の着香方法

茶葉が周りの香りを吸いやすいという性質を利用した方法もあります。

1.Scented Tea

香りが強いものを茶葉の側に置いておいて、その香りを移すという方法です。代表的なものにジャスミンティー(もちろん、本来の、であって安いジャスミンティーは香料の場合が多いです)があります。また、グレイ伯爵が最初にであったというEarl Greyの元となった中国茶もおそらくこの方法で茶葉に着香したものだと思われます。この場合「香料」という原材料表記はありません。こうした紅茶もフレーバーティーと呼ばれることが多いですが、香料を使っていないという意味でScented Tea (センテッドティー)と区別した呼び方をすることもあります。

jasmine tea

2.Blended Tea

茶葉に香りのするものを直接混ぜる方法もあります。たとえばドライフルーツのリンゴや苺などを直接茶葉に混ぜこんで、香りと同時に味も楽しめるようにした紅茶です。これも分類としてはフレーバーティーになりますが、これにも「香料」という原材料表記はありません。また、香料を使っていないという意味で区別した言い方としてBlended Tea (ブレンデットティー)とも呼ばれます。

Blended Tea

香料が嫌だけれど香りも楽しみたい

表題の通りで、こうした気持ちを持たれる人も紅茶好きの人には少なからずいらっしゃると思います。もちろん、Scented TeaやBlended Teaを選んで買うというのも1つの大きな選択肢です。その他に、ちょっと手間はかかりますが次のような方法はいかがでしょうか?

1.自分で調合する

自分の好みのスタンダードな紅茶を買ってきます。この場合あまり個性が強いもの(間違ってもラプサンスーチョンなどはだめです!)を選ぶのがコツです。

そこにバラの花びらや、ラベンダーなどの乾燥花やドライフルーツ(細かく刻んでください)などを自分で好みの量混ぜこんで、密閉できる入れ物(空いた紅茶の缶などで大丈夫です)に入れて光を避けて(これものすごく重要です)保管しておきます。しばらくすると花の香りが茶葉に移りますから、オリジナルのScented TeaやBlended Teaが出来上がります。

2.グレイ伯爵と同じ紅茶を飲もう!

友人が自分でEarl Greyを作った方法を教えてもらいました。

1°ダイダイ(無農薬、ワックス不使用)を買ってきて、皮ごと水洗いして、よく水気を拭き取る。
2°丸ごとスライスする。この時、できる限り薄くすることがコツ。彼は大きめのスライサーを使ったらしいですが、彼の母上は「そのくらい包丁でやりなさい」と仰ったとのこと。
3°梅干しを作るシーズンに手に入れた梅干し用のザルにペーパータオルを敷いて、ダイダイを並べ屋外の風通しの良い所で1日陰干し。
4°次に屋内の湿気のないところで2日間陰干し(全部屋外でも大丈夫だったとのことですが、外を1日にした方が香りは良いとのことでした) 。
5°出来上がったダイダイのドライフルーツをキッチンバサミなどで細かく切る。
6°出来上がったダイダイを紅茶に混ぜて、数日寝かせれば完成。

特に彼の主張では「本来グレイ伯爵が感動したお茶はベルガモットではなく、ダイダイだったはず」ということで、グレイ伯爵と同じ紅茶を飲みたかったのだそうです。なので、ベースにした紅茶はキームンでした。

ちなみにご馳走になったら非常に良い香りでキームンの香りにもものすごくあっていました。飲んでいる最中に友人が「伯爵と呼んで良いからな」とうるさかったこと以外は大変満足できるものでした。