contents
- 🫖ISO 3720📐―紅茶を“定義”するということ
- 🧸「紅茶って、なんだろう?」
- 🫖規格の声を聞いてみる
- 🧸たしかに、それはとても大事なことだ。
- 🧸「香り」は、どこにある?
- 🧸数値では語れない「紅茶」
- 🧸数字の向こう側
くまは今、毎日少しずつですが紅茶用語辞典を書いています。そんな中で、思わぬ紅茶用語に思い入れをしてしまうことがあります。せっかくなので、そういう「思わぬ用語」たちと語りながら紹介したいと思います。
🫖ISO 3720📐―紅茶を“定義”するということ
🫖ISO 3720📐
全然おいしそうじゃないですよね。
でも国際的な紅茶の定義なのです。今回はこのISO 3720に登場してもらいましょう。
🧸「紅茶って、なんだろう?」
そんなことを思ったのは、たぶん、はじめて紅茶に『ISO規格』という言葉がくっついているのを見たときでした。
🫖ISO 3720📐
水分8%未満。水分エキス32%以上。pHは1.0〜3.0……
どうやらこれは、紅茶の“品質”を数値で定義する、国際的な規格らしい。そんなわけで、本人(?)と話をしてみようと思いました。
🫖規格の声を聞いてみる
🫖ISO 3720📐:私は「紅茶とは何か」を定義するために生まれた。輸出入の場で、最低限の品質を保証するための共通言語として存在している。
ISO 3720
乾燥していない紅茶はカビる。可溶成分が少ない茶葉は味も香りも薄い。繊維が多すぎると、抽出液に不快な収斂味が出る。それらを防ぐために、私は生まれた。
🧸たしかに、それはとても大事なことだ。
紅茶の品質を最低限担保する。
ISO 3720は、国際取引において “紅茶”という名を名乗るためのチケットみたいなものだね。
でも、ひとつだけ聞いてみたいことがあるんだ。
🧸「香り」は、どこにある?
ねえ、ISO 3720さん。
あなたの規格には、“香り”の基準はないんですね?
🫖ISO 3720📐:……ああ、それは、私の守備範囲ではない。
ISO 3720
味や香りは、あまりに主観的すぎて、測定が難しい。
だから私(ISO)は、あえてそこには踏み込まない。
🧸数値では語れない「紅茶」
でも、私は思うんだよ。
ネパールの春摘みの紅茶を飲んだとき、
あるいは、ダージリンのセカンドフラッシュの“あの一瞬のマスカテルフレーバー”に出会ったとき、それを“紅茶じゃない”なんて、誰にも言わせたくないんだよ。たとえ、それがISO 3720さんの規格に少しでも外れていたとしても、ね。
それにね、ISO 3720さんのpH値は「1.0〜3.0」で良いというけれど、それだけで“舌触りの柔らかさ”や“渋みの収まり”は説明できるのかな?
さっきもちょっと例に出したネパールの高地茶や、香りが花のように立ち上がる茶葉は、時にこの規格を外れるというよ。
🫖ISO 3720📐:……繰り返しになりますが、それは私の守備範囲ではないのです。
ISO 3720
🧸数字の向こう側
ISO 3720は、絶対に必要なものです。
それは「紅茶を守るための最初の門番」だからです。
🫖ISO 3720📐:そう❣️私は「紅茶と認めて良いかどうか?」のジャッジをするために生まれました❣️それ以上でもそれ以下でもないのです📐
ISO 3720
この言葉が語るように規格は最低ラインを示しているにすぎません。
それはとても大切なことです。
いわば「紅茶のインフラ」なのですから。
だからこれがなかったら「紅茶」自体が成り立たないのです。
けれど、私たちは体験的に知っています。
数字、それだけではたどり着けない“紅茶の奥行き”が、確実にある事を。
pHでは測れない渋みの丸さ、
エキス分では語れない香気の立ち上がり、
繊維率では定義できない、摘まれた葉の美しさ。
紅茶を語るのに最低限の数字は大切です。
でも紅茶は「規格」だけでは語れないのもまた事実です。
でもどうでしょう?
これでこのお話の最初のときよりISO 3720を身近に感じてもらえるようになっていませんか?
もし、そう感じてもらえたら、くまとしてはとても嬉しいです。
毎日くまは紅茶用語の声に耳を傾けています。
その言葉の意味とそれが示すものを正確にくみ取るのです。
一つ一つの言葉に思いを込めて綴り直す作業を繰り返しています。
血の通った、その背後にその言葉を生み出した人が見えるようなそんな用語辞典になってくれることを祈りつつ。
それは紅茶用語の“語りなおし”を、始めていることになるのかもしれません。