デカフェ

コーヒー豆

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🍃 紅茶のデカフェ技術史

☕ 序章 眠るための紅茶?

紅茶といえばカフェイン。朝の目覚めや午後のひと息にぴったりの飲み物です。しかし、「夜にも紅茶を楽しみたい」「妊娠中でも安心して飲みたい」と思った人々がいました。そのニーズから生まれたのが、「デカフェ紅茶」です。

この静かな革命は、20世紀半ばから徐々に紅茶の世界に浸透してきました。

🧪 技術のはじまり コーヒーから紅茶へ

「デカフェ」の技術は、もともとコーヒーの世界で始まりました。

1906年、ドイツのルートヴィヒ・ロゼリウスが開発した「カフェ・ハーグ」は世界初の商業的デカフェコーヒーでした。彼は偶然にも、海上輸送中に傷んだ豆からカフェインが抜けていたことにヒントを得たのです。

この技術は徐々に改良され、やがて紅茶にも応用されていきます。

🧬 デカフェ処理の主な方式

紅茶のカフェイン除去には、いくつかの方式があります。それぞれに長所と短所があり、風味や安全性に大きく関わってきます。

方法概要風味への影響特徴
溶媒抽出法有機溶媒(ジクロロメタンなど)でカフェインを除去やや風味が損なわれる初期技術。安価だが、薬剤残留の懸念も。
二酸化炭素法(CO₂方)高圧CO₂を使って選択的にカフェインを抽出風味保持に優れる欧州では高級デカフェ茶に採用。
水抽出法(SWISS WATER法)水のみでカフェインを除去(主にコーヒー)味が穏やかになる傾向化学薬品を使わない。安全重視。
デカフェ技術

📈 紅茶市場での受容

デカフェ紅茶は最初、健康目的(高血圧・不眠・妊婦など)での需要が中心でしたが、近年は「ナイトティー」「ウェルネス志向」など新しい価値観の中で見直されています。

また、カフェインに敏感な人にとっては、デカフェは「紅茶を愛する自由」を取り戻す鍵でもあるのです。

🌙 デカフェの文化的意味 静けさの味

デカフェ紅茶は、ただの技術製品ではありません。
それは「眠りの前に、静かに自分と向き合う時間」を支える存在でもあります。

騒がしい一日の終わりに、
カフェインのない紅茶を手にして、
深呼吸をして、
眠りへと移る。

そんな時間のために、技術は進化し、文化も変わってきたのです。


🧪 CO₂法とは何か?

紅茶のカフェインをそっと抜く科学の魔法

🔬 超臨界状態 気体と液体のあいだ

二酸化炭素(CO₂)は、温度31.1°C以上・圧力7.38MPa以上で「超臨界流体(Supercritical Fluid)」という特別な状態になります。

この状態では、CO₂は液体のように物質を溶かし、気体のように拡散します。

☁️ 水でも油でもない、でもしっかり染み込んでいく。そんな“流体”です。

🍃 茶葉の中へとしみ込むCO₂

デカフェ処理では、まず紅茶の茶葉を高圧容器に入れます。
そして、超臨界状態にしたCO₂を加えると──

  •  CO₂分子が茶葉の隙間にしみ込む
  •  カフェイン分子とだけ結びつく
  •  香り成分はほとんど触らずにおく

このようにして、カフェインだけを選択的に抽出することができるのです。

♻️ カフェインを抜いたあとのCO₂は?

CO₂はカフェインを回収したあと、

  • 分離装置で分離・再利用されるか
  • 圧力を下げて大気中に無害放出されます

つまり、薬品のように残留することがないのです。

🎯 どうしてカフェインだけを選べるの?

これは分子レベルでの「親和性」がカギです。

  • カフェインはCO₂に対して溶けやすい性質を持っています。
  • 一方、テアフラビンやフラボノイドなどの風味成分は溶けにくいのです。

そのため、余計な風味を失わずに、カフェインだけを除くことができるのです。