contents
前提知識について
今回は紅茶とpHについて色々とまとめてみようと思います。
一応前提知識として
・酸性とは、pH値が7未満
・中性とは、pH値が7
・アルカリ性とは、pH値が7より大きい
と、言うことだけわかっていて頂けば良いように話を進めていきます。
紅茶のpHとその影響
紅茶のpH値
そもそも紅茶は酸性の飲み物でしょうか?アルカリ性の飲み物でしょうか?
一般的に、紅茶のpHは 4.9〜5.5 の範囲にあり、やや酸性です。これは、タンニンや有機酸(シュウ酸、クエン酸など)の存在によるものです。
一部の研究では、ネパール産の紅茶が 7.7〜9.0 のpH(アルカリ性)を示すことが報告されていますが、これは使用された水のミネラル成分や抽出条件(温度、時間)によって影響を受けた可能性があります。
紅茶のpHは、種類や抽出条件、水の性質によって変動しますが、一般的には やや酸性(pH 4.9〜5.5) です。
ちなみに緑茶のpHは 5.4〜5.8程度で、紅茶よりやや中性に近い傾向があります。特に抹茶の場合、2.5%の水溶液で 5.58〜5.94 のpHが測定されています。
🦷 紅茶のpHと歯への影響
では、酸性の飲み物である紅茶は歯に悪いのでしょうか?
紅茶のpHは約 4.9 ですが、飲用後の歯の表面pHは最小で 5.45 までしか低下しません。その上、約2分で元のpHに戻ることが報告されています。 このことから、紅茶は他の酸性飲料(例:柑橘系ジュース)に比べて、歯のエナメル質への侵食リスクが低いので歯にやさしい飲み物だと言えます。
🫖紅茶をおいしく淹れるための「理想的な水のpH」
一般的に紅茶がおいしく淹いるとされている範囲は
pH 6.5〜7.5(中性〜やや弱アルカリ性)
と、言われています。この範囲の水は「軟水」であることが多く、紅茶の香りや旨味がバランスよく抽出されやすいとされているからです。
イギリスの紅茶専門家やティーブランド(Twinings, Whittardなど)でも、「ニュートラル(中性)で軟水(soft, neutral pH)」 を推奨しています。もっともイギリスは硬水が多く、ティースカムが浮きやすいので「ティースカムは害がありません」という広報に結構必死なところがあるようでおもしろいです。
🔬 科学的根拠と実験例
pHが5.5以下になると、紅茶の味は「過度に酸味が立つ」ことがあります。
pHが8以上になると、香り成分やポリフェノールの抽出が変化し、渋味・苦味が強くなる傾向があります。特に紅茶の風味と赤い水色の色素の theaflavin(テアフラビン) や thearubigin(テアルビジン) の生成に影響を与えます。
紅茶研究の中には、pH6.8〜7.2 の軟水がもっともバランスよく香味成分を引き出すという報告もあります(特にダージリン系で顕著)。
pHと香りの関係
pHが中性〜わずかにアルカリ寄りだと、揮発性の香気成分(リナロールやゲラニオールなど)の保持率が高い傾向があり、「香り高い紅茶」になりやすいです。ただし、ネパールのマスカテル香などは、若干酸性寄りのpH(6.0付近)でもしっかり出ることが多いです。

実用的な目安
紅茶を美味しく淹れるための水の推奨pHは6.5〜7.2(中性〜やや弱アルカリ性)ということになります。そしてこれは日本の水道水のpH値は、日本の水質基準において5.8以上8.6以下と定められています。これは、水道管の腐食防止や人体への影響を考慮して設定された数値です。実際には多くの地域の水道水は中性から弱アルカリ性(6.8~8.6)を示しています。『紅茶と水』で日本の水道水は硬度的に紅茶向きであることを書きましたが、pH的にも紅茶向きだということがわかりました。つまり日本の場合一般的に
「水道水で紅茶を淹れるのが一番おいしい」
ということが、これではっきりしたのです。