Contents1.暑い国に「熱いお茶」?
インドは暑い。
それなのに人々は、朝も昼も夜もチャイを飲む。
ミルクを煮立て、スパイスを加え、甘く仕上げた、あの熱々の飲みものを。
「なぜ、そんなに温めるの?」
日本の感覚で見ると、ふと不思議に思うことがあります。
けれど、それには身体と気候の対話という、深い理由があるのです。
モンスーンの国で育まれた温性文化
インドは「モンスーン(雨季)」という、独特の季節を持つ国です。
5月から9月にかけて、暑さと湿気が一気に高まり、気圧や気温が乱れるこの時期、人々は体調を崩しやすくなります。
モンスーンとは「季節風」の意味で、海から大量の水分を運び、スコールのような雨をもたらします。
そして、室内外の気温差や湿度の変化が、消化力(アグニ)や免疫力(オージャス)を弱めると、アーユルヴェーダでは考えられています。
だからこそ、身体の内側を温めて、整える必要があるのです。
そして、この季節に欠かせないのが「チャイ」でした。
チャイという「薬膳飲料」
チャイは単なる甘いミルクティーではありません。それは、スパイスを使った家庭の薬膳なのです。
特に使われるのは、以下のものです。
- 🫚 ジンジャー(ショウガ) – 冷えと湿気を取り除く
- 🌿 カルダモン – 消化を助け、爽やかな香りで気を整える
- 🧂 クローブ、シナモン、ブラックペッパー – 血行を促し、身体を芯から温める
アーユルヴェーダではこれらを「温性(ushna)」の力を持つ食材とし、バランスを崩しがちな雨季や寒い朝にすすめています。
暑いから冷やすのではなく、暑い時ほど「冷え」に注意する。
それが、インドの身体観なのです。
日本ではあまり語られないもうひとつの温性素材「はちみつ」
アーユルヴェーダでは、「熟成された純粋な蜂蜜」は
「乾性で温性(ruksha + ushna)」
とされ、体内の湿気を減らし、呼吸器や消化器に良いとされています。
ただし加熱には注意が必要で、過度に加熱された蜂蜜は毒性を持つとも言われています。尚、1歳になっていない子供に与えることも厳禁です。
インドでは、チャイに加えるタイミングを工夫して、蜂蜜を「温かく、でも煮詰めすぎず」加える家庭もあるそうです。
ジャムウという再発見
実は、チャイと同じように「煮出す・温める・薬草・スパイス」を軸にした文化が、東南アジアにもあります。それが、インドネシアの「ジャムウ “Jamu” 」です。
- アーユルヴェーダの影響を受けながら、
- ジャワやバリの風土と交わり、
- 独自に発展した、身体と共に生きる知恵の飲みもの
90年代には日本でも一部紹介されましたが、定着しなかった背景もあります。しかしいま、私たちの生活が「自然との再接続」を模索しはじめた中で、再び「身体文化」としての価値が見直されつつあるのです。