Contents📜歴史的背景
🪶19〜20世紀の大移動
⚡ポグロム(Pogrom)
ポグロムはロシア語で「破滅させる、暴力的に破壊する」という意味の言葉で、19世紀後半にロシア帝国や東欧で発生したユダヤ人迫害事件の総称です。これと経済的困窮を背景に、多くのユダヤ人が西ヨーロッパ、特に英国へ移民しました。
その結果、1900年代初頭のロンドン・イーストエンドのユダヤ人コミュニティが拡大しました。イーストエンドはロンドンの労働者階級の街で、多数のユダヤ移民が居住していました。当時紅茶は英国での日常的飲料として普及しており、ユダヤ人コミュニティにも浸透しました。
☕ユダヤ風ティールーム
その中で「ユダヤ風ティールーム(tea room)」文化が生まれ、英国の紅茶文化と融合しました。東欧ユダヤ人の英国移民がもたらした食文化が、英国の紅茶文化と結びついていったのです。こうして生まれたユダヤ風ティールームは、宗教的禁忌を尊重したコーシャー食材を使い、英国の「アフタヌーンティー」スタイルも取り入れた独自の文化を形成していました。
さらにユダヤ教の戒律に則ったコーシャー対応のティールームやベーカリーが発展し、紅茶文化と融合した独自のコミュニティが誕生しました。ユダヤ人移民は伝統的な宗教・食文化を守りつつ、新天地の社会に適応していきました。
ユダヤ風ティールームは単なる飲食店ではなく、移民同士の交流や情報交換の場でもありました。また、安息日の前後や祝祭日における精神的支柱としての役割も担っていたのです。
🍽ユダヤ教の食文化と安息日(サボス)
🥛ユダヤ教の食文化(コーシャー)
ユダヤ教には食事に関する厳格な規則「コーシャー(Kosher)」があり、食材や調理方法が細かく定められています。
例えば、豚肉や海産物の一部は禁忌です。
また乳製品と肉類は分けて調理・摂取しなければならない、とされています。たとえばミルクを入れた紅茶を飲む場合、肉料理の後に飲むのは避けなければいけません。肉料理の後に紅茶を飲むならミルクなしで飲むことが義務付けられています。このように肉と乳製品は絶対に一緒にしないのです。
他には、魚料理の後はレモン入りの紅茶が好まれることもあります。魚料理の臭み消しとしてレモンが使われ、紅茶にレモンを入れる文化がここから来ているとも言われています。これらの戒律はユダヤ教徒の生活の中心にあり、食事は単なる栄養摂取以上に宗教的な意味を持っているのです。
🕍サボスと紅茶の象徴性
ろうそくの灯りで始まる夕食
金曜の夕暮れに、妻や母親などの女性がろうそくに火を灯し「サボス(安息日)」の開始を告げます。
サボスとは金曜日没から土曜日没までの24時間、労働を避け神聖な休息を守ることを指していて、家族やコミュニティで礼拝や祈り、特別な食事を行います。
家族が集まり祈りを唱えた後、パン(チャラ)とワイン、そして紅茶が供されます。紅茶は日常の潤いであると同時に、ユダヤ教の安息日を祝う団らんの象徴として重要視されました。特に、家族が集うサボスのティータイムは、信仰と生活の融合点となっていました。そこでは、紅茶は単なる飲み物ではなく、ユダヤ教徒にとって安息日の神聖な時間を彩る重要な役割を果たしているのです。
🕎サボスティーの淹れ方や伝統的なレシピ
🫖サボスティーの特徴
通常の紅茶よりも穏やかで飲みやすい味わいが好まれる傾向があります。ハーブやスパイスを加えたり、ミルクやレモンは安息日の規則によって異なります。
☕伝統的な淹れ方例
水を沸騰させたらティーバッグや茶葉を入れ、数分蒸らします(3〜5分程度)。
砂糖を入れることが多いですが、自然な甘みを楽しむ場合も多いです。
ハーブティーの場合はカモミールやミントがよく用いられます。
ミルクは「冷たいものは加えない」「温めてから加える」など諸説あります。
その他のサボスティーの具体的なレシピを紹介します。
☕レシピ1 伝統的なサボスティー
【材料】
紅茶の茶葉またはティーバッグ(アッサムやダージリンなど)
熱湯
砂糖または蜂蜜(好みで)
ミルク(許される場合)
レモン(使用は慎重に)
【作り方】
沸騰したお湯を茶葉に注ぎ、3〜5分蒸らす。
好みによって砂糖や蜂蜜で甘みを調整。
ミルクを加える場合は、温めてから注ぐ(安息日ルールによる)。
レモンは基本的に避けるが、魚料理の後などは許可される場合あり。
☕レシピ2 ハーブ入りサボスティー(カモミールなど)
【材料】
カモミールやミントなどのハーブティー
熱湯
蜂蜜(オプション)
【作り方】
熱湯をハーブに注ぎ、5分程度蒸らす。
蜂蜜で甘みを加えることもある。
体を温め、リラックス効果も高い。
🍂ユダヤ教における紅茶の意味
単なる飲み物である以上に、精神的な安息と家族の絆の象徴としての役割が大きいとされています。ティールームや家庭の食卓で紅茶を囲むことは、宗教的戒律の中でも安らぎと喜びをもたらす行為とされています。
🇮🇱現代のイスラエルと紅茶
🫖イスラエルの紅茶文化の特徴
☕多様な民族・宗教背景による飲み物の多様性
イスラエルはユダヤ人、アラブ人、ドゥルーズ、ベドウィンなど多様な民族・宗教が共存しています。紅茶だけでなく、アラブ文化圏では「ミントティー」、ユダヤ系コミュニティでは「チャイ(香辛料入りのミルクティー)」などが親しまれています。
☕ユダヤ教徒の飲み物としての紅茶
安息日や祝祭日、家庭の団欒で紅茶やハーブティーがよく飲まれています。伝統的には砂糖を多めに入れて甘くし、体を温める飲み物として親しまれています。
☕アラブ系住民の紅茶文化
アラブ系コミュニティでは、砂糖とミントをたっぷり入れた甘い紅茶がとても人気です。社交や接待の際の定番ドリンクであり、客人をもてなす文化の中心でもあります。
☕モダンなカフェ文化との融合
テルアビブなどの都市部では、欧米風のカフェが増え、紅茶も高品質なリーフティーやハーブティーが楽しめるようになっています。こうしたカフェ文化は若者や外国人観光客の間で人気が高まっています。
☕紅茶産地との関係
イスラエルは紅茶の産地ではないため、主にスリランカやインドから輸入しています。一部の高級ホテルやカフェでは厳選されたブランド紅茶が提供されているそうです。