ISO 3720(紅茶―定義と基本的な要件)

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正式名称

ISO 3720:2011 Black tea — Definition and basic requirements(紅茶―定義と基本的な要件)


🐻ISO 3720 の要約(森のくま要約)

1. 目的と適用範囲

  • 定義:Camellia sinensis の完全発酵・乾燥された葉や芽・茎を素材とし、飲用として適する紅茶の基本定義を規定。
  • 化学的品質要件:水分、抽出液、灰分などの項目を定め、良好な製造慣行がなされた紅茶かどうか判断可能にする。
  • パッケージや表示要求:容器詰めおよび容器への表示(マーキング)に関する最低基準も含む。
  • 適用対象外:香り付けや脱カフェイン(デカフェ)された紅茶は範囲外。

2. 定義と品質基準

  • 製法要件:枯死(withering)、葉の破砕(maceration)、酸化(aeration:いわゆる発酵)、乾燥という工程を必須とする。
  • 抽出液(liquor)の品質:澄んだ色味と特有の香味があり、官能評価に耐える状態であること。
  • 衛生・異物基準:植物以外の異物混入や異臭・カビ臭がないこと

3. 分析的基準値(重量比%)

指標基準値
水分< 8.0 %
水溶性抽出物 32.0 %
灰分(総量)4.0–8.0 %
灰分中の水溶性割合 43.0 %
酸不溶性灰分< 1.0 %
水溶性灰分のpH1.0–3.0
繊維素含有率< 16.5 %

4. 意義と活用場面

  • 「紅茶として存在できる」最低ライン:高級茶や特色ある紅茶とは評価基準が異なるが、市場や貿易で「紅茶」として認められる共通基礎を保証。
  • 国際取引・輸出入での品質保証:輸出入文書や取引条件において「ISO 3720準拠」があることで信頼性の高い製品と見なされる。
  • 日本での実務:法的拘束力はないが、日本の輸入業者や小売が自社基準に取り入れるケースがある。

5. 限定と課題

  • 等級や香り評価には未対応:紅茶の等級(FOP・BOP等)や官能評価は対象外。
  • 特殊加工茶やフレーバードティーも対象外:香味添加や脱カフェイン茶には適用されない 。
  • 土台ではあるが文化的多様性は反映されない:地域や文化性に伴う品質評価は別枠の扱い 。

6. 背景・起源

  • 1986年初版、2011年最新版(2025年7月時・最新版確認時点) 。
  • FAOや貿易関係者間での議論を通じ、世界共通の「紅茶定義」として合意形成された 。

(要約終わり)


🐻注意点(ISO 3720の非公式まとめとして)

  • ISO 3720は「これが正真正銘の紅茶です」という最低限の国際共通基準を定めるものです。これは輸出入・貿易・流通の信頼性を支える重要な枠組みです。しかしその一方で、品質の深い評価や哲学的な違い(テロワール、発送技術等)は含みません。つまり、文化的価値とは一線を引いているのです。
  • 和訳は森のくまによる参考訳であり、正式な定義はISO本体の英文版に従う必要があります。
  • 各国の法律や規格等と完全に一致するわけではないため、注意が必要です。

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