聞く紅茶教室

第91講 砂漠の茶

もてなしと祈りのあいだ

こんにちは。

森のくまです。

前回は、中国の茶礼と日本の茶道についてお話ししました。

お茶は礼となり、

お茶は道となる。

そんな文化の姿を見てきました。

今回はさらに西へ向かいます。

中東。

そして中央アジアです。

そこでは、お茶は少し違う意味を持っています。

それは、

「もてなし」

です。

砂漠を旅したことがある人は少ないかもしれません。

しかし想像してみてください。

乾いた大地。

遠くまで続く地平線。

強い日差し。

そんな世界では、水そのものが貴重です。

だから旅人を迎えることは、とても大切な行為でした。

そして、その歓迎のしるしとして差し出されたのが一杯のお茶だったのです。

モロッコではミントティーが有名です。

熱い緑茶にたっぷりのミントと砂糖を加えます。

高い位置から注ぎ、泡を立てるのも特徴です。

初めて見ると驚きます。

なぜそんなに高いところから注ぐのだろう、と。

しかしそこには理由があります。

香りを引き立てるためであり、

客人への敬意を示すためでもあります。

一杯のお茶が歓迎の言葉になるのです。

トルコではチャイが親しまれています。

小さなガラスの器に注がれた濃い紅茶です。

街角の店でも、

家庭でも、

人が集まれば自然にチャイが現れます。

お茶を飲みながら話をする。

その時間そのものが大切なのです。

くまは以前、ある中東の人がこう話していたのを聞いたことがあります。

「客人をもてなすことは、自分自身を大切にすることでもある」

と。

とても印象に残っています。

なぜなら、

お茶を差し出すという行為は、

相手を受け入れるという意思表示だからです。

それは単なる飲み物ではありません。

信頼のしるしなのです。

イスラーム文化圏では、

もてなしは重要な徳の一つとされています。

見知らぬ旅人であっても歓迎する。

困っている人に手を差し伸べる。

その精神が、お茶の文化にも表れているのです。

だから砂漠の国々では、

お茶はしばしば「命の水」と呼ばれることがあります。

喉を潤すだけではありません。

人と人を結びつける水でもあるのです。

そしてくまは時々思います。

世界中の茶文化を見ていると、

お茶には共通する役割があるのではないかと。

イギリスでは時間を整える。

中国では敬意を表す。

日本では心を整える。

そして中東では人を迎える。

形は違います。

けれど、その根底にあるのは同じです。

相手を大切に思う気持ちです。

一杯のお茶を差し出す。

それは世界中で行われている、とても小さな平和の行為なのかもしれません。

次回はロシアと中央ユーラシアへ向かいます。

サモワールの火。

そして家族の記憶。

お茶が家庭の中心となった文化を訪ねてみましょう。

それでは、また次回お会いしましょう。