聞く紅茶教室

講義時間:約5分

第1講 神農と、最初の一杯

紅茶のはじまりより、
もっとずっと昔のお話から始めましょう。

まだ、

「紅茶」

という言葉もありません。

急須もありません。

山の斜面にひらけた木立のあいだから、
細く、湯気が立ち上っています。

火を囲みながら、
薬草を煮ている人がいます。

中国古代の伝説の王、

神農です。

くまは、ときどき想像します。

風に揺れる湯気の向こうで、
神農が、そっと湯を口に含む姿を。

そこへ、
一枚の葉が落ちる。

苦み。

渋み。

そして、
かすかな香り。

その葉の力が、
身体の奥へ、静かに広がっていく。

もしかすると、
人が初めて「茶」に触れた瞬間とは、
そういう時間だったのかもしれません。

その場にいた人たちは、

「おいしい」

より先に、

「これは良い」

と、
身体で感じたのではないでしょうか。

もちろん、
これは伝説です。

本当に、その通りだったかは分かりません。

けれど古い伝説には、
人が長い時間をかけて残してきた、

「感覚の核」

が宿ることがあります。

茶の始まりが、

だったこと。

そして、

香り

醒める感覚

が、
人に歓迎されたこと。

ここには、
歴史の芯に近いものが、
たしかに残っています。


くまのひとこと

神農は、
くまの好きな存在のひとつです。

厳密には、
伝説上の人物とされています。

けれど、
くまは、

「神農は、本当にいた」

と信じたいのです。

その方が、
少し夢がある。

そんな気がするからです。