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- Orwellの紅茶11カ条
- 1.インドかセイロンのお茶を使うべきである。
- 2.紅茶はティーポットで淹れるべきである。
- 3.ティーポットは事前に温めておく必要がある。
- 4.お茶は濃くなければならない。
- 5.茶葉はポットに直接入れるべきである。
- 6.ティーポットをケトルに近づけるべきであり、その逆ではいけない。
- 7.紅茶を淹れた後は、かき混ぜるか、ポットをよく振って、その後茶葉を落ち着かせる。
- 8.良質のブレックファストカップ (日本のマグカップのイメージ)、つまり平らで浅いカップではなく、円筒形のカップで飲むべきである。
- 9.紅茶に入れる前に牛乳のクリームを取り除いてください。
- 10.カップにはまず紅茶を注ぐべきです。
- 11.ロシア風に飲むのでなければ、紅茶には砂糖を入れずに飲むべきです。
英国王立化学会による『完璧な一杯の紅茶の淹れ方』でも触れられていたGeorge Orwell (ジョージ・オーウェル)による有名なエッセイ”A Nice Cup of Tea (一杯のおいしい紅茶)”を取り上げておきたいと思います。
原文は著作権が切れているので『The Orwell Foundation』の”A Nice Cup of Tea”で読むことができます。
Orwellの紅茶11カ条
Orwellは「完璧な一杯の紅茶」を淹れるために独自の11のルールを上げています。そしてOrwellはこのうちの2つは多くの人に同意を得られるだろうが、少なくとも他の4つについては激しい議論となるだろうと述べています。しかしOrwellにとってこの11のルールはどれ一つとっても欠かせないものだと言っています。以下そのルールと理由をまとめました。
🧸がついているのはくまによる解説などです。
1.インドかセイロンのお茶を使うべきである。
中国茶には、軽視できない利点はあるけれど、刺激的な味がないとしています。「おいしい紅茶を一杯」という心地よい言葉を使う人は、例外なくインド紅茶のことを指しています。
🧸実際にはインド、セイロン、中国のどれにも良さがあり、好みは別として優劣は付けられないとくまは思います。ただ、Orwellがこれを書いた時代は紅茶が配給制であり、中国産の紅茶は安物で品質が今一つのものが多かったようなので、このようなルールを1番に持ってきたのだと思います。
2.紅茶はティーポットで淹れるべきである。
ティーポットは陶磁器で作られたものであるべきです。
🧸これには基本的には賛成ですが、抽出用にガラス製のポットを使うのも良いと思います。実際くまは、抽出用のガラス製の丸いポットと出来上がった紅茶を入れるための磁器のティーポットの2つを用意して使っています。
3.ティーポットは事前に温めておく必要がある。
お湯でゆすぐよりも、コンロの上に置いて温める方が効果的です。
🧸予め温めておくことについてはまったく異論はありません。でも、コンロの火で直接ポットを温めるのは熱くなりすぎてしまい、危険だし、ポットの寿命を縮めてしまう気がします。なので、くまはOrwellが否定している「ポットにお湯を入れて温める方法」を一貫して採用していますし、人にもそれをお勧めしています。
4.お茶は濃くなければならない。
1クォート(約1.2リットル)のポットに、ティースプーンで山盛り6杯くらいがちょうど良いでしょう。薄いお茶を20杯飲むより、濃いお茶を1杯飲む方が良いです。
🧸ティースプーンで山盛り6杯というと約30gになります。これは200㎖の普通のカップ1杯分につき、5gという計算になります。かなり濃いです😅
一般的には200㎖に対して2~3gと言われています。くまも濃いのが好きなのですが、それでも3gくらいです。Orwellはイギリスの硬水で紅茶を淹れていたはずなので「かなり真っ黒で油膜のようなスカムが大量に浮いていたもの」を飲んでいたのではないかと思われます。
5.茶葉はポットに直接入れるべきである。
ストレーナーやモスリンの袋などの茶葉を閉じ込める器具は使わないでください。国によっては茶葉が有害だと考えていますが、実際には、かなりの量の茶葉を飲み込んでも害はありません。また、お茶がポットの中で緩んでいないと、きちんと抽出されません。
🧸茶葉を直接ポットに入れるべきだというのにはくまも賛成です。ちなみにここでOrwellが指摘している「モスリンの袋」というのはおそらくフランス式の布製のフィルターのことをさしているのだと思います。ポットの中で茶葉が自由に動けなければおいしく淹れる事はできないというのはその通りだと思います。
また、茶葉を飲んでしまってもまったく害がないということは抹茶文化を持っている私たち日本人からすれば当たり前のことです。しかし、紅茶の茶葉がカップに入ってくるのは正直邪魔だと思います。なので紅茶を淹れたらストレーナー(茶漉)を使うのがよいとくまは思います。
6.ティーポットをケトルに近づけるべきであり、その逆ではいけない。
ティーポットに注ぐ瞬間にお湯が沸騰している必要があります。沸騰したてのお湯だけを使うべきだと言う人もいますが、私はその違いを感じたことがありません。
🧸テーポットをケトルに近づけるというのは、くまもその通りだと思います。その方がよりお湯が冷めないのでおいしく紅茶を淹れる事ができるからです。
ただ、Orwellは新鮮なお湯でなくてもかまわないという意味のことを言っていますが、これは明確な間違いです。沸かし直したお湯や汲み置きした水を沸かした場合、お湯の中の空気が少なくなるか、最悪無くなってしまうので、紅茶の味を間違いなく落します。
7.紅茶を淹れた後は、かき混ぜるか、ポットをよく振って、その後茶葉を落ち着かせる。
🧸これには特にOrwellの説明はありません。ただ、茶葉の入ったポットに熱いお湯を勢いよく注いだら、そのまま循環するのにまかせる方が良い(これを日本では「ジャンピング」と呼んでいます)と今はわかっています。
またシャーロックホームズはティーポットに紅茶の茶葉とお湯を入れたら、そのポットを持って室内を3分ほど歩き回るシーンがありますが、これも必要はありません。しかし、学生時代ホームズを熱心に読んでいたくまは、紅茶の入ったポットを持って、室内をグルグル回っていた時期がありました。
8.良質のブレックファストカップ (日本のマグカップのイメージ)、つまり平らで浅いカップではなく、円筒形のカップで飲むべきである。
ブレックファストカップは容量が多く、浅いカップだと、飲み始める前にお茶が冷めてしまうことがよくあります。
🧸これは賛否が分かれるところでしょう。何かをしながら飲んだりするにはマグカップで飲むのが都合がよい場合が多いかもしれません。しかし、浅い紅茶専用のティーカップの方が香りもより楽しめるし、Orwellが否定的に語っている「冷めやすい」という特徴も「飲みやすい温度になる」という捉え方もできるからです。くまは断固として「磁器のティーカップで飲みたい派」です。
9.紅茶に入れる前に牛乳のクリームを取り除いてください。
牛乳がクリーム状になりすぎると、紅茶がどうしても甘ったるく、むかつく味になってしまいます。
🧸低温殺菌の牛乳だと表面にクリーム状の固まりが浮いていたりすることがあります。これを取り除かないと甘ったるくなってしまうという主張なのです。しかし、日本では95%以上がウルトラ高温殺菌なので、牛乳がすでに熱変成を起こしてしまっている状態で売っているので、この「クリーム状のものが浮く」という牛乳本来の姿を見ることはほとんどありません。なので、この項目は日本ではほぼ意味がありません。牛乳の問題についてはぜひ『完璧な一杯の紅茶の淹れ方 (2)』の「牛乳の質の問題」を御覧ください。
10.カップにはまず紅茶を注ぐべきです。
これは最も議論の多い点の一つでしょう。ミルクを先に注ぐ派はかなり説得力のある論拠を展開しますが、私の主張に反論の余地などないでしょう。つまり、紅茶を先に注ぎ、後からミルク注ぐことで、ミルクの量を正確に調整できるのに対し、逆ではミルクを入れすぎてしまう可能性があるのです。
🧸くまも「後から入れる派」です。ちなみにイギリス人は「ミルクが先か後か」という問題を150年以上議論してきていますが、これは議論のための議論で、実際アンケートをとると80%以上のイギリス人がミルクを後から入れていると応えています。
この10番目のルールこそが英国王立化学会による『完璧な一杯の紅茶の淹れ方』の元ネタになっているのです。
11.ロシア風に飲むのでなければ、紅茶には砂糖を入れずに飲むべきです。
私が少数派であることは重々承知しているが、砂糖を入れて紅茶の風味を損ねて「真の紅茶愛好家」と言えるでしょうか?(中略)紅茶そのものが好きなわけでなく、温まって元気を出すためだけに飲むのだから苦みをごまかすために砂糖が必要だ、という者もいるだろう。こうした見当違いを犯している人にはこう言いたい。二週間ほど砂糖無しで紅茶を飲んでみるといい。砂糖で紅茶を台無しにしようとは二度と思わなくなるだろう。
🧸この当時のイギリス人は紅茶にミルクと砂糖を入れて飲む人が多数派を占めていたそうです。今現在は健康志向もあいまって、ミルクは入れても砂糖は入れない人がかなり増えているそうです。
でも、ここからはOrwellがストレートティーを愛しているのが伝わってきます。たしかに砂糖は紅茶の渋みを和らげます。なので、取り方によっては「砂糖は紅茶らしさを奪う」とも言えます。Orwellはそれが許せなかったのでしょう。
Orwellには日本の軟水で淹れたおいしい紅茶をご馳走したかったとこの最後のルールを読みながらしみじみ思いました。
以上がGeorge Orwell の”A Nice Cup of Tea”に書かれているOrwellのルールと解説でした。