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概要
ティンクチャー(tincture)は、食品用アルコールで香源を浸出して得る液体香料です。ようは香りの元になる花などをアルコールに漬けて香りを抜き出したものです。
紅茶ブレンドに微量添加→馴染ませて香りを付与するという手順で使います。
・同義/別表記:アルコール浸出液/アルコール抽出フレーバー
関連規格/典拠
原料は食品グレード(エタノール/香源)。表示は原材料「香料」等(各国法規に従う)。
・可燃物の保管・換気・火気厳禁に留意(法令順守)。
目的/機能
精油単体より角が立ちにくく、素材の陰影を素直に引き出すことができます。トップの立ちと後残りの調整に向いています。
典型原料
柑橘ピール(ベルガモット/オレンジ/レモン)、ハーブ(葉・花)、スパイス(バニラ/カルダモン/シナモン)、カカオニブ等。
溶媒と度数
エタノール40–95% vol。ハーブ類は強めの度数で雑味を抑えやすい。日本では食添用エタノールの使用が実務的です。
歴史的背景/周辺史
強い酒(例:ウォッカ)でハーブを浸ける伝統がヨーロッパ各地にあり、薬酒の文化と重なります。近代以前の伝承では「薬酒」として扱えば魔女狩りなどで不当な疑いを避けやすかったという文脈もあります(民間伝承)。現代日本では食品用途・法令に則って食添エタノールを使用するのが一般的です。
作り方
現場流儀・追補版
- 粉砕:香源を薬研(やげん)やすり鉢で粗~中粉に。ピールは薄く、ハーブ葉は繊維を潰し過ぎない。
- 浸液:清潔な瓶に入れ、「ひたひた」にアルコールを注いで密封(過剰に泳がせないのがコツ)。
- 熟成:暗所・涼所で最低3週間、大体1か月以上。ときどき瓶を軽く振って様子を見る。
- 濾過:粗濾し→紙フィルタで澄ませる。必要に応じ数日~数週間のエージング。
- 使用:完成茶葉に対し0.1–0.5% w/wからベンチテスト。
噴霧→撹拌→開放で揮散(アルコール臭を飛ばす)→再密封→数日馴染ませ。 - 長期熟成:素材次第で年単位(10年~)の熟成も可です。丸み・奥行きが増す一方で色や沈澱も出るため、定期デカントと光遮断が前提。*30年ものの事例も。
相性・ブレンドの考え方
- 柑橘系:精油だけだと鋭い時はピールのティンクチャー併用で丸みを与えます。
- バニラ:ティンクチャー主体+少量オイルで厚みと尾を両立します。
- ハーブ:上掛け量は控えめに。ベース茶の個性(渋味・水色)と拮抗しない比率を探ります。
安全/運用の注意
- 食用グレードのみ使用。火気厳禁・換気・遮光保管。
- アレルゲン原料(ナッツ・柑橘等)は表示・交差管理を徹底。
- 完成茶の残留アルコールはエージングで極小化(嗅覚確認をルーチンに)。
🫖紅茶文脈での使い方(英語短文)
英文:We macerated herbs under just enough food-grade ethanol for three weeks in the dark, then filtered and dosed the blend at 0.2%.
和訳:食添エタノールで“ひたひた”に3週間暗所浸漬→濾過→0.2%添加しました。
英文:Tinctures made from citrus peel lend a softer, more natural top note than straight essential oils.
和訳:柑橘ピールのティンクチャーは精油単体より柔らかく自然なトップになります。
英文:Long-aged tinctures (even 10+ years) can add depth, but require strict light control and periodic decanting.
和訳:10年以上の長期熟成ティンクチャーは深みを与えますが、遮光管理と定期デカントが必要です。