ビーフティー

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概要

ビーフティー(beef tea)は牛肉の薄いだし(清澄スープ)のことです。名前に “tea” とあるが茶ではありません。病人食・回復食として19–20世紀に広く用いられました。


説明・背景

細かく刻んだ牛肉を弱火で長く抽出し、塩で整えます。消化に負担がある固形脂を除くのが基本です。

かつては子どもや高齢者に与える軽い栄養飲料の位置づけでした。現代では一般家庭での頻度は高くなくなっています。


21世紀になぜすたれた?

1.栄養学の進歩で“弱さ”が露呈

伝統的なビーフティーは赤身を長時間そっと抽出する清澄スープです。うま味(可溶性成分)は出ますが、タンパク質・脂質・カロリーはごく少ない=回復食としては栄養密度が低いのです。病院食は経口栄養補助(ONS)や完全食に近い回復食へ移行しました。

2.医療・介護現場の標準化

20世紀後半〜21世紀、病院の「クリア液体食」は電解質・糖質を設計したゼリー/飲料や、市販ブロスで代替されていきました。手間がかかる自家製ビーフティーは外れがちになったのです。

3.代替品の充実と嗜好変化

コンソメ、即席ブイヨン、アジア系の澄ましスープなど便利で風味の強い選択肢が増加してきたことも挙げられます。家庭の夕食文化も変化し、「子どもにビーフティー」が生活実感から後退していったのです。

4.名称の時代感&用語ずれ

“beef tea” は古風な言い方です。現代は broth / clear soup と呼ぶのが普通です。さらに最近はボーンブロス(骨・コラーゲン主体)が流行し、赤身抽出のビーフティーは影が薄くなってきているのです。

5.(副次要因)食の価値観のシフト

これはあくまでも副次的な要因ですが、動物性を控える傾向やサステナビリティ志向も、日常飲用の肉系清澄スープを後押ししづらいというのもありそうです。

💠似たものの比較

単語解説
ビーフティー(beef tea)赤身中心・澄んだ抽出。うま味は出るが栄養薄め
ビーフブロス(beef broth)肉+香味野菜で軽いスープ。ビーフティーより汎用的です。
ボーンブロス(bone broth)骨・すじ主体で長時間煮込みます。コラーゲン・ゼラチンが多めで、風味・栄養とも濃いです。

🫖紅茶文脈での使い方(英語短文)

英文: Victorian cookbooks include instructions for making beef tea for invalids.

和訳: ヴィクトリア時代の料理書には病人用のビーフティーの作り方が載っています。

英文: It is a restorative broth rather than a tea.

和訳: ビーフティーはお茶ではなく、回復のための「澄んだスープ(だし)」です。

英文: Beef tea fell out of favor as modern nutrition favored balanced therapeutic diets and convenient broths over a low-calorie, lightly extracted beef infusion.

和訳: 現代栄養学では、低カロリーで軽い抽出にとどまるビーフティーより、バランスの取れた回復食や便利なブロスが好まれるようになり、ビーフティーは廃れていきました。

💠ブロス

「ブロス(broth)」は文脈で少し幅がありますが、あえて和訳するなら「(薄い)スープ / だし汁」になりるす。料理用語寄りに訳すとすれば、ブイヨン(仏語由来)/清湯(チンタン)(中華の澄んだスープ)などが近いものになります。

💠似たものを指す単語の整理

単語訳と解説
stock骨・筋メインの下ごしらえ用だし(無塩が基本)=「ストック/フォン」
broth肉や野菜を煮出したそのまま飲める軽いスープ(薄く塩味可)=「(薄い)スープ/だし汁/ブイヨン」です。だから beef broth は「牛肉の(澄んだ)スープ/牛のだし」が自然です。
bouillon仏語の「ブイヨン」。日本語でもそのまま使うこと多い。
consommé澄まし仕立てで清澄したスープ=「コンソメ」

🧸くまの一言

ビーフティーはちょっと時代遅れのものになっています。それでも19~20世紀ではポピュラーなもので今でも年配の人が懐かしさを含めて口にすることがあります。英語を学んでいる人が”tea”に食事の意味があることを学ぶ意味では大事な言葉かもしれません。紅茶ことば辞典の「tea」もぜひ参照してみてください。