ジェリード・イールズ(Jellied Eels)
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🐍概要🧊
ジェリード・イールズ(Jellied Eels/ゼリー寄せウナギ)はロンドン東部の伝統料理です。これは、ウナギを香味入りの煮汁煮て煮汁ごとゼリー状に冷やした保存食です。冷菜として供され、モルトビネガーやチリビネガー、白胡椒をふって食べるのが定番。パセリソース(liquor)のパイ&マッシュと一緒に売られることが多いです(liquor は酒ではなく「煮汁」の意)。現代では珍味・郷土食扱いになっています。
📜歴史
18~19世紀のテムズ川には大量のウナギが生息していました。なので、ウナギが極めて安価に手に入ったので普及しました。当時の貧困層や港湾労働者向けの高タンパク保存食です。ロンドンの下町地域イーストエンドの「コックニー文化」に根ざす庶民のソウルフードです。パイ&マッシュ店で温かい stewed eels(煮ウナギ)や冷たい jellied eelsが提供されました。現在は店の数が減りつつも、ロンドンと周辺(エセックスなど)に伝統店が残る。
🍳食感など
味・見た目のポイント
ゼリーは半透明~淡い灰緑色で、身は白く繊維質。口当たりはぷるん+ほろり、味は酢と香辛料の効いた淡白な魚介。視覚的ハードルは高いが、「冷前菜」として成立する塩梅にまとまっている。
どこで食べられる?
ロンドンのパイ&マッシュ店や一部のデリ/スーパーで入手可。パセリソースのliquorは本来はウナギの煮汁を基にしたが、今はチキン/魚の出汁で代用する店も増えた。卓上にはモルトビネガーとチリビネガーが常備される。
現代の位置づけとサステナビリティ
ヨーロッパウナギはIUCNで「深刻な絶滅危惧(CR)」。CITES附属書II掲載で国際取引は許可制、違法取引も課題となっています。伝統は尊重されつつ、資源状況に配慮して提供や原料の入手を見直す動きもあります。食文化の「郷愁」と保全の折り合いが問われる料理ともいえます。
関連料理
- Stewed eels(温かい煮ウナギ)
- Eel pie(ウナギのパイ)+Pie & mash with liquor(挽肉パイ+マッシュ+パセリソース)
🫖紅茶との関係
食事中に紅茶を飲むよりも、食後に紅茶で口直しという話が多いです。ウナギの濃厚さを流すには、アッサム/ケニアCTCの濃いミルクティー(ビルダーズティー)は、脂と酢のキレを両立して好相性。
🧸くまの一言
これ、正直に言って、どう見てもくまにはおいしそうに見えないのです。半透明のゼリーの中に、うねったウナギの切り身が浮かんでいるところからして食欲を刺激しません。さらに視覚的に「生きてるように見える」ことすらあります。
白身魚的な見た目ではなく、煮たことでくすんだ灰色〜緑がかったトーン、これはもう「ゼリーの中のなにか」にしか見えないのです。
現代の若いイギリス人に聞いてみたところ「子どもの頃以来食べてないよ」とか「祖父母の家に行くとこれ出されたけど、正直苦手」というような人が多数派を占めました。とはいえ、一定数のファンがいるのも事実です。(※世代感はくまの聞き取りベースです)