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📝 概要
戦後の紅茶行政において、農林省(現・農林水産省)はJAS制度や輸出振興、品質管理の指針をめぐって数多くの通達・通告を出してきました。これらは法律ではなく行政指導でありながら、現場の生産・流通・販売に大きな影響を与えました。特に輸出振興と国内紅茶の品質保持をめぐる通達は、紅茶行政の根幹を成していました。
🏛 1. 戦後紅茶政策と農林省の役割
1940年代末から1950年代にかけて、紅茶は「輸出による外貨獲得」のための戦略作物とされ、農林省の管理下で産地整備・加工施設の整備が行われました。このとき農林省は、戦時中の茶業統制に代わる新たな体制づくりの一環として、さまざまな通達を通じて紅茶行政を主導しました。
📄 2. 通達の具体例と影響
- 昭和26年通達:「紅茶の等級別表示に関する指導」では、インド式の茶葉等級を基礎に日本国内でも等級表示の整備が進められました。
- 昭和30年代通達:「紅茶輸出振興のための加工・流通体制整備」では、品質の均一化・等級管理・衛生指導が中心となりました。
- JAS制度関係の通達:JAS(日本農林規格)紅茶規格が制度化される過程で、実施細則や格付け方法に関する通達が複数出され、流通現場の指針となりました。
📊 3. 通達による行政統制とその限界
農林省通達は法的拘束力をもたない行政指導に留まりましたが、当時の産地や流通業者にとっては“事実上の規制”でした。そのため、通達に基づく生産調整・出荷調整は紅茶の多様性を制限する側面も持っていました。
☕ 4. 通達とJAS制度の連動
紅茶の品質を保証する手段としてJAS認証制度が導入された際、農林省の通達は規格の周知と導入推進に重要な役割を果たしました。とくに等級区分や検査基準は、当初は通達ベースで運用され、のちに制度として整備されていきました。
📌 まとめ
農林省通達は、紅茶の行政的な枠組みを形成する「見えざる指針」でした。戦後の混乱期から紅茶制度の確立期に至るまで、行政は通達という柔軟かつ実質的な方法で現場を動かし、日本の紅茶文化の制度的基盤を築いたのです。
🔗 関連項目
- 📦 JAS法と紅茶
- 🏷 紅茶の輸入制限解除
- 🛠 紅茶の再制度化
- 🇯🇵 戦後政策と日本ブランド復活