進駐軍放出品

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🔸 概要

進駐軍放出品とは、第二次世界大戦後の占領期(1945〜1952年)において、アメリカ軍を中心とした連合国軍(GHQ)が、不要または余剰と判断した物資を日本国内に放出・払い下げした品物群を指します。

これらは主にPX(Post Exchange:軍専用売店)からの横流し品や、公的な放出・払い下げルートを経由して民間に流通した商品を含み、物資不足に悩む戦後日本社会において、生活必需品から嗜好品まで幅広く影響を与えました。

🔸 紅茶との関係

進駐軍放出品の中には、欧米製の紅茶(特にイギリス・アメリカブランド)が多く含まれていました。これらは日本の一般市場では流通しておらず、以下のような経路で“幻の紅茶”として特権的に存在していたのです。

  • PXからの横流し(兵士や現地雇用者による)
  • 物資統制解除後の払い下げ(GHQが公的に売却)
  • 外交・民間ルートによる「非公式な持ち帰り」

Lipton、Brooke Bond、Tetley、Twiningsといった当時の西洋紅茶ブランドがこの流れで市場に出回り、一部の喫茶店や闇市、商家、資産家層が手に入れることができました。

🔸 放出品の特徴と紅茶文化への影響

  • 高級感・海外文化の象徴として消費された
  • 英語パッケージ・缶入りの美しい外装が人気を博した
  • ティーバッグの登場により、「紅茶=面倒な淹れ物」という固定観念が崩されるきっかけになった
  • 日本人の紅茶に対する印象が「貴重品からモダンな飲み物へ」と転換する第一歩となった

さらに、一部の物品は「紅茶缶」として再利用され、のちの昭和家庭文化や民芸生活誌にも痕跡を残すほど、日常に定着しました。

🔸 関連制度・用語

  • PX(Post Exchange)
  • 闇市と紅茶(black-market-tea-japan
  • 嗜好品統制(luxury-control-japan
  • 進駐軍と茶文化(occupation-tea-culture
  • ティーバッグの日本導入史
  • 軍用物資の転用文化