岩茶

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概要

福建省武夷山を中心とする茶区で生産される烏龍茶の総称です。花崗岩質の土壌と山間の気候が香味に鉱物的な余韻を与え、多段焙煎によって火香(ひこう)と花香(かこう)を重ねる焙煎工程によって複層的な香りと深い後味が形成されます。香味・命名・等級などに明確な地域性をもち、武夷茶文化の核心をなす茶です。


詳解

岩茶は、武夷山の断崖や谷間に点在する茶畑で作られます。いわゆる「岩場の土壌」に由来するミネラル感 が特徴で、他地域の烏龍茶とはっきり区別されます。花崗岩質の痩せた土と昼夜の寒暖差が、香りの濃縮と葉内成分の蓄積を促します。

製法は主に半発酵(部分酸化)→揺青→殺青→揉捻→烘焙(多段焙煎) という烏龍茶の典型的工程に基づきますが、岩茶の場合は火入れ(焙煎)を特に重視します。

この焙煎によって生まれる火香(ひこう)が、花香(かこう)・果香(かこう)と重なり、余韻岩韻(がんいん)が立ち上がります。

明清期には、岩茶の多くは「散茶」形態で広州に回送され、輸出の前段階で等級選別・再焙煎・パッキングが行われました。つまり岩茶は「内陸の名茶」ではなく「外洋に出た烏龍茶」という歴史をもちます。

近代には「大紅袍(だいこうほう)」など名樹によるブランド化が進み、今日では「武夷岩茶」という地理的表示・文化ラベルとして確立しています。一方で「岩韻」という味覚語彙は、武夷山以外の烏龍茶には原則として用いられません。岩茶が「固有性をもつ茶」であることの証です。


歴史的役割・茶との接点

  • 半発酵茶の代表格として「焙煎文化」を確立
  • 散茶輸出ルートに接続し、外洋向け烏龍茶の起点に
  • 「岩韻」という産地特異語彙を生み、テロワール概念を強化
  • 大紅袍など「名樹」ブランドの発祥点

🫖 紅茶文脈での使い方(英和例文)

英文: Yancha from Wuyi is prized for deep roasting notes and a lingering rock-mineral finish.

和訳: 武夷岩茶は深い焙煎香と岩ミネラル感の余韻で珍重されます。