どうして女性は紅茶を選ぶのか?

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1.誰が紅茶を飲んでいるのか?

カフェの注文カウンターに立つと、不思議な偏りに気づくことがあります。
コーヒーを頼む人たちの列に混じって、決まって「紅茶をお願いします」と口にするのは、どこか品のある若い女性、体調を気にしている妊婦さん、あるいは読書をしながら過ごすご年配の女性だったりします。

それは偶然なのでしょうか。それとも、身体が自然と「そうしたくなる」理由があるのでしょうか。

この問いを出発点として、私たちは「紅茶と女性」という組み合わせの奥にある、生理・文化・香りの連関を探ってみることにします。


2.冷え性という日常感覚

多くの女性が「冷え」に悩んでいます。
気温はそれほど低くないのに、足先が氷のように冷たかったり、腰まわりだけがじんわりと寒かったり。
体温計では「平熱」なのに、自覚としては「寒い」と感じる――そんな経験はありませんか?

これは決して気のせいではありません。
女性の身体は、筋肉量が少なく熱を生産しにくい構造になっており、また月経周期によってホルモンバランスが変化することで、血行が不安定になる傾向があります。

そのため、男性に比べて「冷えやすく、温まりにくい」のです。
だからこそ、身体はいつも「温かいもの」を求めています。
そして、その選択肢のひとつとして、紅茶はじつに理にかなった存在なのです。


3.漢方と紅茶 温性・涼性という視点

東洋医学、なかでも漢方では、食べ物や飲み物には「性質」があると考えます。
体を温めるものは「温性」、冷やすものは「涼性」または「寒性」と分類されます。

では、紅茶はどう分類されるでしょう?

答えは、明確に「温性」です。
その理由のひとつが、発酵(酸化)という工程。
茶葉をしっかりと発酵させることで、体を内側から温める性質が生まれると考えられています。

比較してみましょう。

茶の種類発酵(酸化)度性質(漢方的)
緑茶非発酵涼性・寒性
烏龍茶半発酵中庸(平性)
紅茶完全発酵温性
お茶の発酵度と性質

茶の種類ごとの発酵度と漢方的性質について

1.緑茶(りょくちゃ)

緑茶は発酵していない、非発酵のお茶です。漢方では、体を冷やす性質があるとされ、「涼性(りょうせい)」または「寒性(かんせい)」に分類されます。

2.烏龍茶

烏龍茶は、半分だけ発酵させた半発酵のお茶です。漢方では「平性(へいせい)」と呼ばれ、体を温めも冷やしもしない中間的な性質とされています。

3.紅茶

紅茶は、しっかりと発酵させた完全発酵のお茶です。漢方では、体を内側から温める「温性(おんせい)」の性質があるとされています。

🧩補足解説

茶葉の発酵度合いが高くなるほど、体を温める性質が強くなるというのが、漢方における基本的な見方です。
緑茶は体を冷やす。烏龍茶はその中間。紅茶は体を温める。
そうしたイメージで、日々の飲み物を選ぶのも、身体へのやさしさなのかもしれません。


4.科学的裏づけ 香りと体温、そして心

さらに、紅茶の「香り」に注目してみましょう。

紅茶にはさまざまな香気成分が含まれています。代表的なのはリモネン、シトラール、ピネンなどです。
これらは果皮系・花香系の香り成分であり、アロマセラピーの分野では副交感神経を活性化させることで、リラックス・血流促進などの効果があるとされています。

つまり、紅茶を飲むとき、「香りによって心が落ち着き、同時に体温もじんわりと上がる」というメカニズムが自然に起きているのです。

加えて、紅茶に含まれるテアフラビンやカフェインも、適度な覚醒と代謝促進に関与しており、冷えた体を内側からゆっくり温めてくれるのです。また、チャイなどのようにスパイスが加わった紅茶などはより体を温めてくれます。


5.文化としての紅茶と「癒やし」

では、なぜ紅茶はここまで「女性の飲み物」として受け入れられてきたのでしょうか?

ひとつは文化的な側面です。
イギリスのアフタヌーンティーが「女性の社交の場」として発展した歴史。
日本でも、喫茶文化が昭和から平成にかけて「女子力」「おしゃれ」「癒やし」といった価値観とともに紅茶を取り上げるようになっていきました。

もちろん、男性が飲んでもいいのです。
しかし、社会的なマーケティングやイメージ戦略によって、「紅茶=女性らしさ」「やさしさ」「気づかい」といった印象が作られてきたのも事実です。

そして、何よりも、「紅茶を飲む」という行為には、ひと呼吸おく、やさしくなる、癒やされるという時間の余白があるイメージが作られています。それが忙しい日常のなかで、女性たちの心と体にそっと寄り添ってきたのかもしれません。


6.結論 体が選んでいた温かさ

紅茶を飲む理由に、明確な理屈はなかったかもしれません。
でも、「なんとなく紅茶が飲みたくなる」瞬間には、体の声が反映されていたのです。

冷えやすい体、緊張しがちな心、日々の役割のなかで気づかないうちに疲れている自分。そんな自分が、無意識のうちに紅茶という「温かさ」を選んでいたということでもあるのです。

それは、「体が知っていた温かさ」といえるでしょう。科学でも、漢方でも、文化でも説明できますが、最後にそれを選んだのは、身体そのものだったのかもしれません。