聞く紅茶教室

講義時間:約7分

第17講 海が茶を変えた

海運仕様としての茶

茶が海を渡るためには、

乗り越えなければならない問題がありました。

湿気。

腐敗。

そして体積です。

これは、
現代でも非常に重要な問題です。

特に紅茶は、

湿気にとても弱い。

香りを吸いやすく。

同時に、
湿気も吸いやすい。

つまり保存状態によって、

品質が大きく変わってしまうのです。

くまは、
ここが紅茶の面白いところだと思っています。

紅茶は、

「作って終わり」

ではありません。

運ばれる途中でも、
変化し続ける。

だから物流そのものが、

品質の一部

なのです。

実際、
現在でも、

北欧など湿度の低い地域のTea Brandは、

湿気への感覚が、
かなり薄いことがあります。

そのため、
日本へ輸入される途中で、

湿気を吸い。

場合によっては、
カビが発生してしまうこともあります。

つまり紅茶は今でも、

「海と湿度の問題」

を抱え続けているのです。

そして昔の人々も、
当然これに苦しみました。

だから茶には、

「輸送へ耐える形」

が必要になります。

陸路中心の北方では、

茶葉を固めて体積を減らす、

団茶

が発達しました。

一方、
海運中心の南方では、

別の方向へ進みます。

葉を燻し。

水分を減らし。

長い航海へ耐えられるようにする。

そうして生まれたのが、

正山小種。

後に、

ラプサン・スーチョン

と呼ばれる紅茶です。

くまは、
ここがとても重要だと思っています。

この時代、
茶はまず、

「美味しさ」

のために変化したわけではありません。

先にあったのは、

保存。

輸送。

海運。

つまり、

「海を越えられるか」

という現実の問題でした。

そしてその結果として、

燻香。

深い香り。

乾いた質感。

長距離輸送へ耐える茶。

そうした特徴が、
少しずつ形になっていったのです。

つまり紅茶は、

海運の歴史が生み出した茶

でもありました。

山で生まれた葉が、

海の都合に合わせて変化していく。

くまは、
ここに紅茶の宿命のようなものを感じます。

紅茶とは、

土地だけで完成する飲みものではなく、

物流と一緒に育った飲みもの

なのです。


くまのひとこと

くまは、

「物流」

って、
実はかなりロマンがあると思うのです。

普通は、

運ぶだけ。

届くだけ。

そう思われがちです。

でも本当は、

運ばれる途中で、
物は変わっていく。

そしてその変化が、
文化になることもある。

紅茶って、
実はかなり

「旅の飲みもの」

なのかもしれません。