聞く紅茶教室
講義時間:約5分
第66講 紅茶とデザイン様式(3)
芸術工芸運動と「暮らしの美」
19世紀後半、
イギリスでは、
産業化が急速に進みます。
工場で大量の製品が作られ、
人々の暮らしは便利になっていきました。
けれどその一方で、
「生活から美しさが失われている」
と感じる人々も現れます。
その代表が、
ウィリアム・モリスでした。
モリスは、
「役に立たないものや、
美しいと思わないものを、
家に置いてはならない」
という有名な言葉を残しています。
これは、
単なる装飾の話ではありません。
「暮らしそのものを美しくする」
という思想でした。
この考え方は、
紅茶文化にも大きな影響を与えます。
ティーテーブルは、
単なる作業台ではなく、
部屋の美学を支える存在へ変わっていきます。
壁紙。
布。
家具。
器。
それらが、
ひとつの世界観として調和する。
こうした運動が芸術工芸運動と呼ばれます。
そしてその中心に、
紅茶の時間が置かれていきました。
紅茶は、
「日々を整えるための儀式」
として、
改めて見直されるようになったのです。
くまのワンポイント
芸術工芸運動は、
19世紀後半のイギリスで始まった、
美術。
工芸。
建築にわたる、
社会改革的な芸術運動です。
産業革命による機械的、
大量生産的な物づくりへの反発として、
手工芸の尊重、
美と実用の調和、
生活の中の芸術の回復を主張しました。
くまのひとりごと
部屋の壁紙。
椅子の形。
ティーカップの模様。
そういうものは、
「なくても生きていけるもの」
なのかもしれません。
けれど人間は、
昔から、
そういう「役に立たない美」を、
暮らしの中に置き続けてきました。
それはたぶん、
人間が、
ただ生きるだけでは満足できない生き物だからなのだと、
くまは思います。