聞く紅茶教室
講義時間:約4分
第67講 紅茶とデザイン様式(4)
アール・ヌーヴォーと「女性の紅茶」
19世紀の終わり頃、
ヨーロッパでは、
アール・ヌーヴォーという新しい美術様式が広がります。
特徴は、
曲線でした。
花が伸びるような線。
つる草が絡むような形。
波のように流れる髪。
そこには、
「自然の美を生活へ取り戻したい」
という願いがありました。
この美意識は、
紅茶文化にも強く入り込んでいきます。
ティーカップには植物模様。
ティーポットには、
柔らかな曲線。
広告には、
長い髪の女性たち。
紅茶はこの頃から、
「女性的で洗練された文化」
として描かれるようになります。
もちろん、
実際には男性も飲んでいましたし、
労働者階級も飲んでいました。
けれど、
人々のイメージは、
視覚によって作られていきます。
そしてアール・ヌーヴォーは、
紅茶に、
「優雅で美しい時間」
という印象を与えていったのです。
くまのひとりごと
花の形。
つる草の曲線。
風に流れる髪。
人間は昔から、
「自然の線」を、
美しいものとして見てきました。
そして紅茶の世界もまた、
そうした「自然の線」に包まれていった時代があります。
くまは、
アール・ヌーヴォーを見るたびに、
「人間は、
自然を部屋の中へ連れて帰りたかったのかもしれない」
と、
そんなことを思うのです。